ジャンル:戦勇。 お題:たった一つの償い 制限時間:15分 読者:639 人 文字数:1235字 お気に入り:0人

名ばかり勇者の独白

 『勇者』ってなんだろう。多分、それの答えは人それぞれで、価値観によって違うんだろう。
 ただ、ボクに限って言うなら、『勇者』とはただひとり、『勇者クレアシオン』を指すものだった。

 『勇者の子孫』として城に呼ばれたときは驚いたし、喜んだ。飛び上がるくらいに。
 でも心のどこかで、そんなことはないはずだと思ってもいた。
 クレアシオン。千年前の勇者。今も尚魔王を封じているはずの、伝説の勇者。
 その子孫がいたのだったら、千年後に至ってもわかるような系譜があるのなら、それはもっと大々的に知られているはずで、だからつまり、自分が勇者の子孫じゃないことなんてわかっていたのだ。
 それでも『勇者』の二文字を背負えることには高揚したし、憧れに近づけたようで嬉しかった。

 No.45の勇者として王宮戦士とともに旅立って、自分の弱さに涙が出たり、自分付きの王宮戦士からの扱いに別の意味で涙が出たりもしたけれど、それでも概ね楽しい旅だったと思う。まさか魔王が小さな女の子だったり、あまつさえ旅の仲間になるなんて思わなかったけれど、それでも旅は楽しかった。

 楽しい旅なんて、おかしいと思わなかった、自分の愚かさに反吐が出そうになるけれど。


 魔族と出会った。目まぐるしく話は展開して、王宮戦士ロスは千年前の伝説の勇者になった。戻った、というべきなんだろう。
 ボクはただ弱いばかりで、足手まといになるばかりで、何も出来やしなかった。偽物の勇者の子孫は、どこまでだって役立たずだった。
 あいつは笑って、楽しかったぜ、なんて言って、そうして消えた。赤いスカーフだけ残して。

 そうして得た『平和な世界』を、どうしてゆるせるだろう。
 
「魔王はボクが復活させる」

 大言壮語もいいところだった。だけど周りの人たちは、どうしてかそれを許してくれた。協力さえしてくれた。
 なんだって利用するつもりだった。至る過程に良いも悪いも関係なく、ボクはロスが笑っている世界が欲しかった。

 大したことはできないまま、一年。多少は強くなったけれど、駄々をこねるばかりの弱いボクから脱することはできたけれど、やっぱりボクは役立たずで。
 偶然と奇跡とご都合主義的展開と。ロスは戻ってきた。クレアシオンの旅は終わった。ロスが笑ったから、ボクはなんだって良かった。

 だけど。

 ゆるされてはいけない。償わなくてはいけない。
 『勇者』を背負いながら、勇者にあるまじき目的で動いたボクは、償わないといけない。
 どこまでだって模範的な、大衆の望む『勇者』で在り続けなくてはいけない。

 だから今日もボクは牢屋の中、ひとり過ごす。
 こんなのが償いだなんてちゃんちゃらおかしいけれど、今ボクにできるのはこれくらいのものだから。
 そうしていつか、この身に余る力で世界を救える日が来たら。

 今度こそボクは、『勇者』にならないといけない。

 だってボクは、『勇者』なんだから。

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