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FOE

…いつまでそうしていただろうか。
衛士である自分の手を浅い階層の泉に浸す。
樹海で無防備に背中を晒しているというのは、あまり褒められた話ではないが、そんなことは全く気にもならなかった。
こびりついていたのだ。手に。
だから、こうして水にくぐらす。
こする。両の手をこすり合わせる。ぼんやりと浮かぶ赤は、清廉な水の色にも、周りの美しい緑にも、ちらほらと咲く同系色であるはずの花とも合っていなかった。だから、消えるまで、手をこすり合わせる。一定のリズムでぬらり、ぬらりと。いつまでも。いつまでも。忘れるために。
三階には、決して個人では立ち入ってはいけない部屋がある。蟷螂が巣食う部屋だからだ。自分でも自分が不思議だった。
悲しげな、どこまでも悲しげな声が聞こえてきたから。そんな理由で扉を開いた自分。
そこにはーーー

通路に向けた背中に、砂利を踏む音は伝わらなかったようだ。

ーーー蟷螂のように両手に刃を構えた男が立っていた。その男は、とてもとても悲しげな声を上げながら、もう動くことはない、年若い冒険者に刃を突き立て、突き立て、突き立て突き立て突き立て突き立てーーーとてもとても嬉しそうに笑顔を浮かべていて、呟いたのだ。「どうしてすぐに壊れてしまうのか…もっと楽しみたいんだ。もっと聴きたいんだ」

男の笑顔を祈る手でかき消す。不可能だ。

衛士は最後まで気付けなかった
脳天に花がまた一輪、咲いた。

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