ジャンル:アイドルマスターシンデレラガールズ お題:頭の中の任務 制限時間:2時間 読者:420 人 文字数:2025字 お気に入り:0人

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 一般道って、はやい。
 普段ならば高速道路の方が圧倒的に早いのですが、しかし今は年末年始。高速道路は帰省ラッシュの車達で溢れ返っていて、高速も全く意味を成していません。車が高速の道路というよりも、もはや車が道路を梗塞、といった具合です。
 プロデューサーさんも、そうなることを見越していたのでしょう。ひっくりするほど空いている一般道を泳ぐように走りながら、プロデューサーさんはラジオから流れてくる交通情報に耳を傾け、鮮やかなハンドル捌きで交差点を器用に曲がっています。プロデューサーさんが選んだルートはことごとく空いていて、まるで帰省ラッシュなんてどこにも存在していないように思えてきます。
 流石ボクのプロデューサーさん、老後はタクシードライバーとしてやっていけるんじゃないでしょうか。
 まあ、プロデューサーさんは十年後だろうと五十年後だろうと、いつまで経ってもボクのプロデューサーとして働く運命なんですけどね!
 そんなストレスレスな一般道を走る、プロデューサーさんが運転する車の助手席に座りながら、ボクはプロデューサーさんの横顔をなんとなく見つめてみます。ボクが見つめていることに気付いているのか気付いていないのか、プロデューサーさんは軽やかに鼻歌を歌いながらハンドルを握っています。――いや、こんなに凝視しているのに視線を感じていないということは、ボクが見つめていることに全く気付いていないようです。
 むむむむむ。
 全く、プロデューサーさんは鈍感ですね!
 確かに余所見運転は危険ですし、助手席に人気急上昇中のカワイイアイドルを乗せているのですから、事故を起こさないように運転に傾注してしまうのも無理はありません。
 けどけどけれども!
 このカワイイボクが見つめてあげているんですから、少しくらいは気付いてくれたっていいじゃないですか!
 フーンだ!
 ここまで気付いてもらえないからといってプロデューサーさんに呼び掛けるのも、それはそれで敗北感に打ちのめされそうなので、ボクは仕方なく窓の外の景色を眺めることにしました。
 とはいえ、窓の外にはこれといって面白いものはありません。まあ、東京から山梨への帰路なんてそんなものです。それはそれはありふれた景色しか広がっていません。無感動は心を乾かせてしまうので、なるべくいろんな事に関心を持つようにはしていますが、しかしここは一般道、普通の家々が立ち並ぶ普通の風景に関心を持てといわれても、流石のボクにもそれは難しかったりします。
 いやまあ、誰にも関心を持てなんて言われていませんけど。
 そんなことを、とりとめもなく考えていたときでした。
 不意に、忍者が現れました。
「…………えっ?」
 視界の中央、ありきたりな一戸建ての屋根の上。心なしか浜口さんに似ているその忍者は、車の走る速度に合わせて軽やかに屋根の上を飛び跳ねていきます。赤い屋根から蒼い屋根に、かと思えばアンテナの上にバランスよく立ち、次の瞬間には集合住宅の屋上に飛び降り、首に巻いたマフラーを翻しながら次々に屋根から屋根へと留まることなく移っていきます。
 けれど、そんな忍者はどこにもいませんでした。
「フフン……ボクは一人遊びも得意ですからね」
 そうです、これは、ボクの頭の中の忍者なのです。
 ミッションは、屋根の上だけを伝って、目的地の山梨へ辿りつくこと。流れていく景色に流されないように、頭の中で忍者をぴょんぴょんとジャンプさせて、上手く屋根の上を辿っていくのです。
 これが案外難しいもので、自分の想像上の遊びなのに、なかなか思い通りに動いてくれないのです。どう考えてもきちんと屋根の上に着地しているはずなのに、何故か着地に失敗して残機が1減ってしまう――このゲームのマスターはボク自身なのに!
 そんな風に忍者を自分の思い通りに動かすことに苦心していたからでしょうか、ボクは見事に意趣返しをされてしまいました。
 誰にって? ――プロデューサーさんに、です!
「やっと気付いたか、幸子」
「ぷぷぷぷぷプロデューサーさん、い、いつから、み、見てたんですか!?」
「少し前から」
 見つめていたのに気付いてもらえなかったからといって窓の外を眺めていたら、いつの間にか自分が見つめられていたことに気付いていなかったみたいです。
 一生の不覚!
「いやあ、面白かったぞ。路肩に車を止めても一切反応がないし、首がこう、上下にぴょこぴょこ動いてたし」
「きょ、許可なくボクのことを見つめるなんて、法律違反ですよ! 罰金です!」
「それじゃあ、違反切符を切られる前に出発するか」
 そう言って含み笑いをしながら、プロデューサーさんは車のアクセルを踏みました。
 見つめてくれていた嬉しさなんてどこへやら、ボクはもう悔しくて悔しくて、結局また、窓の外へと逃げ果すしかなかったのでした。

  ††
 

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