ジャンル:デュラララ!! お題:やわらかい故郷 制限時間:1時間 読者:2188 人 文字数:2505字 お気に入り:2人

また、袋小路にいる【腐/臨正】

これは、過去だ。昔の自分が、将軍時代の自分が折原臨也に甘えていた時のものだろう。黄色いその布を掘り出してしまったのだ、この人のタンスの中から。
なんでこの人のタンスの中から黄色い布が出てくるんだろう。その布は随分草臥れていて、端が少しほつれたりしていた。でも目立つ黄色の色は変わらなくて、なんとなく匂いを嗅ぐといやに綺麗な匂いがした。


なんでこの人のタンスを漁っていたかというと、ただ単に洗濯物の仕事を任されたからだ。普段は大抵浪江さんがこのへんの仕事を受け持つのだが、浪江さんが休みだというのに洗っていない服の山ができてしまったからだ。バスタオルと汚れたシャツと数枚のパーカーを洗濯機にかけるのは面倒だったけど、なれてしまえばどうってことはない。
それから乾燥まで一気にしたのであとは畳んで詰めるだけ。そのついでにこのひとのぐしゃぐしゃになってきたタンスの中も整理していたのだ。そしたらでてきたのがアレだった。

臨也さんの部屋に入るときは毎回ドキドキする。それは単に興奮している状態からの効果の時もあるし、普通に入っても折原臨也の部屋、と思うと胸が鳴る、警戒の音も一緒に。そんな中で自分の印を見付けてしまった。
少し昔のことを思い出して頭の中が震える、怖くない、まだ怖くない。落ち着いてこれの詳細をあの人に聞くだけだ。


「臨也さん、これどういうこと」
「んー?…あ、それかあ」

臨也さんの前に黄色い布をぶら下げる。そうすれば臨也さんはにやっと笑って、君が病院に運ばれた時にツテを使って取っておいたのだと言う。

「わざわざそういうことを…」
「捨てられたほうがよかった?」
「………わからないっす」
「…中学生時代から、これずっと付けてたよね」
「そう、ですね」
「これに、君の反対側が全部詰まっていると思うとなんか興奮するよ」

またそういう吐き気のすることを言って、でも否定できないから余計嫌になってくる。
臨也さんは少し震える俺の手から布をひょいっと掴み取り、適当に手でまいてみたり弄ぶ。

「この布を巻いた君に沙樹ちゃんから話しかけて、それから君と出会って」
「っ、」
「君が俺の事務所に来て、それから俺の手の中に段々沈んでいって」
「………アンタに、壊された」
「全部が俺じゃないけどねえ」

もう少しは大人になったんだから、この人のからかいには慣れた。笑っている男に向かってそれなりに落ち着いて応対することも簡単で、全然平気で

「正臣くん、手痛くないの」
「あッ」
「まだどこかで虚勢をはってるね、前よりはマシだけど」

ぎゅうと爪を食い込ませていたららしい右手を、臨也さんの一回りくらい大きい手に包まれてより強く潰されて呻き声を出してしまう。もうこんなのはないと思っていたのに背中に汗を感じる、おかしい、この人にはまだ叶わないらしい。まだこの辺は中学生の時みたいで可愛いねえと言いながら、臨也さんは濡れている俺の背中をパーカーの上からなぞって、汗を染み込ませてくる。まるで自分を染み込ませて来ているようで春だというのに寒気がした、ああ嫌だ。

「きもちわるい、」
「大丈夫?」
「体調の方じゃねえから」
「ふうん。……いやあ、にしてもこの布は懐かしいなあ」

いつの間にか俺から離れていた手は、今度は両手で黄色い布を引っ張ったりしていた。ああ、まるでまだ自分の手の中に黄巾賊は入っていて好き勝手弄るぞ、そう言っているようで余計ムカつく。
もう話を終わらせようか、と思ったとき、この人はまたなにか思いついたのか俺に笑いかける。

「この布ってさあ、君の…まあ、大体半分くらいが詰まっているんだろ」
「そうなんじゃないですか」
「じゃあさ。………この布を、俺が燃やしてこの世から無くしたらどうなるんだろうね?」
「………な、に言って」

臨也さんはさっき俺の過去を話した時の笑顔のまま呟く。俺の黄色い布を片手で持って、ひらひらと紙みたいに不安定に持っている。

「この布をもし燃やしてしまったら、どうなるんだろう?君の数年分の思い出、君の第二の居場所であろう黄巾賊にいるための印、紀田正臣のもうひとつの故郷であった場所に居るための証を消したら…ねえ?」
「おま、臨也さ、返せ」

さっきより激しい寒気に襲われ、震えながら布を取ろうとするも簡単に避けられてしまう。臨也さんはそんな俺の片手を布と反対側の手ですっと掴む。恐ろしいことに身体は固まってしまって、布を取ることが出来なかった。

「そうしたら、今の君の精神力で居れる居場所は、もうひとつの居場所の折原臨也の所だけになるんだよ」

臨也さんはそうゆっくり呟く。
そんなことはないはずなのに、俺には沙樹だっているのに、沙樹は折原臨也の呪縛から殆ど取り除かれた筈なのに、頭の中に響くのはいつかの壊れた彼女の言う『臨也さんなら大丈夫だよ』だった。違う、違う、絶対違うのに、

「あ…あ、あ……………」

思考だけが昔と今の中間でごろごろと転がってだんだん麻痺していく。折原臨也の口車には乗っていけない、そう言ったのは自分なのに。折原臨也は布一つを使うだけでも、俺を弄べるなんて、さいあくだ、

「これくらいで俺に捕まるのに、自分が強くなったと思っているんじゃ、まだまだ馬鹿だね」

ゆるやかに、いつかみたいに床に痛みもなく転がされて、不安定にった視界が黄色で埋められる。それから急に頭が嫌に鮮やかになっていく。身体は痛くないのに、頭と心は自分の未熟さを攻めるようにぎゅうぎゅうと唸っていた。


「可哀想で可愛い、人間らしく少年らしく弱い紀田正臣くん、まだそれは燃やさないであげる。だって今燃やしたって燃やさなくたって、君の精神じゃあの場所にはまた行けなくなっているんだから。今だって、君の居場所は俺のところだけ、なんだよ」

色付いた頭が警報を鳴らすなかに、反響するように折原臨也の声が入り込む。頭が痛い。
自分の体の上にまたがるように立っているであろうこの男の影にかぶるように、黄色い布にじわりとまた染みが生まれていた。





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