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停滞【臨正】

正臣は冬でも暖かい臨也の事務所で、臨也に夕飯を作っていた。今日は何鍋にしよう。最近は臨也のリクエストで鍋物ばかりだ。昨日はトマト鍋、一昨日は豆乳鍋(これは想像より意外と美味しかった、また作ってやろう)、正臣だって鍋ばかりは飽きてしまう。今度はもういっそ闇鍋にでもしてやりたいが、これは自分が毒でも入れそうで断られてしまうのか、それとも人間を愛す折原臨也にとっては大好きな鍋での毒殺さえ考える俺ごと愛しいのだろうか?そうくだらないことを考えては打ち消して、野菜を切りながらその感情も切り刻んだ。

温まっていく鍋の炎を見ながら正臣は考える。今の自分は、なんなんだ?
自分は臨也のことを憎んでいるけど、結局今は臨也の所にいる。こうやって今日もいつものように夕飯の支度をしている。最近は沙樹もいっしょに仕事が来ることが多いから食事も3人でとる(波江は意外とすぐ帰ってしまう)。つっかかってくる臨也に憎まれ口を叩きながらもおかわりの具をすくったりする。そうして片付けをして事務所を出るときに「あったまったからって油断しないで、風邪ひかないようにね」と言われてうるさいですねといいつつもう一回りマフラーを回す。
臨也さんへの今の気持ちは、炎のように燃え上がったりしない。ずっと停滞している。中火のままどこで火を下げようかあげようか、でも止めたりなんかしてやらないと思っている。水なんかかけるやつがいたら許さないと思っていて、薪をくべるのをやめない。
きっかけがない。俺が臨也さんに向かって憎悪を向けるきっかけがずっと放置されていて、でもとどまっている現状は苦しいのに、いまの臨也さんとの関係にどこかで安心している自分がいたりする。

今の自分は、過去の綺麗な、臨也さんに酔っていた時の自分に炎を乗せてているのかもしれない。
こんな自分がいるのはきっと、過去の自分のあの時代を思い出してしまったからだ。記憶で考えてなくても身体が覚えているような。炎は折原臨也の甘さに遊ばれている。臨也さんは炎に向かってひゅうと口から風を吹かせるけど、別にその炎を消す気はないのだ。臨也さんはずるい。こんな炎早く消して欲しいのに。臨也はあくまで正臣の可愛らしい炎をとっておきたいだけなのだ。


過去の自分ごといっそ燃え尽きてしまえば、臨也さんもがっかりしてくれるだろうか。
鍋のお湯が煮立ち過ぎていることに気付いて慌てて止めた。

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