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きみをつくる ※未完

戦士ロスの元となるものは至極単純なもので、材料を集めるのに苦労しなかった。
こんな鉄きれと、簡単な呪文で彼は出来上がる。定められたレシピ通りに作り上げれば彼は再び今の世界で生きるための心臓を取り戻し、世界の重荷なんてものを背負うこと無い身体を手に入れるのだ。
祝詞を唱えるようにつぶやく。彼の死、新しい彼の生誕、それを心よりおめでたく想うべく感情が高ぶっている。こんなに息を荒げていては、自分がまるでバカみたいだ。
ロスのことを助けるにはこれしか無い。魔界とか、魔王とか、勇者である自分がそれを一番理解していなければいけないのに、これ以上知ってしまったら、いけないと思った。きっと戻りできないと思ってしまった。ロスが膨大な魔力を手にしていて、みずからの身を剣にして封印されていたとか、おとぎ話そのままの宿命を彼は、いままで隣に居た時でも考えていたのかもしれない。ルキのような非力な魔王相手では無く、もしかすると強敵になりうるかもしれない本物の魔王にずうっと対抗していたのだ。自分一人で抱え込んでいたのだ。それを一切話さず隠し通していたのだ。知ったボクが真っ先に思ったことは、恐怖だった。
どれだけ強いロスだろうと千年間、あれだけ十字架を背負う苦しみを味わわされて、どうして笑えるんだろう。ボクならきっと耐えられない。真っ白な世界に戻ってしまったロスは、きっと魔王を封印している。そこでまた眠り続ける。物語のクレアシオンのように、安らかな顔を浮かべているだろうか。ロスが笑っている顔を想像できないのは、諦めているからだ。現にボクは唱えている。この呪文を。すべて解決するための、運命すら決められていないまっさらなロスだ。ロスはロスでも、全てから解放された違うロスだ。いつものように笑って、ボクをけなして、幸せそうな顔をすることだろう。ああ、ボクはロスのことを救えるんだ。もうすぐ叶うんだ。呪文を唱え終わるのは、あとちょっとだった。歌をうたうようになだらかに、ゆっくり、奏でる。終わりの、始まり。ここからロスの人生は再スタートを決める。鉄の塊が動き出す。鉄人形は目をぱちくりとせわしなくまばたきさせた。鉄で出来たロスは、ボクを見る。ボクはささやかに笑った。あの時よまったく同じ笑顔で、ロスは、笑って、頬をゆるませて、言った。
「い」

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