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スクールカースト ※未完



僕はずっとコニー・スプリンガーとサシャ・ブラウスが羨ましかった。この狭いクラスの中にあるうっすらとした、目に見えない壁を軽々と飛び越えていく彼らが。
きっと誰もに見えているそれ、人当たりが良く誰にでも親切にするライナーにでさえ見えているそれの存在は、彼らには見えていない。そして「見えていない」ことは彼らの強みで、それゆえに彼らはクラスのみんなに愛されていた。
僕はそれがずっと、羨ましかった。

「ベルトルト、飯食うか」
高校生で16歳の僕らは誰かと一緒にいないと息が出来ない。食事のときも、休憩時間も、授業の時でさえも僕らは絶えず目配せをしながら過ごしていて、それは階段の上にいようが最下層にいようが同じだった。自分がいる場所に成績や運動能力は一切関係なくて、持っているもの、話題の種類、喋り方、性格、それが全てだった。僕は真ん中より少し下で、ライナーは頂上だ。昼食の時だけ、幼馴染の僕の為に彼は上から降りてきてくれる。長年ずっと僕らが仲が良いと知っている周りの人間は、僕らの関係だけを例外にして見ない振りをする。時々「よくライナーってフーバーと話題続くよな」という囁きが聞こえるけれど、僕はその時だけ耳をシャットダウンして別のことを考える。ライナーも何も言わない。クラスの空気が許してくれるのは彼が僕のところに降りてくるところまでだ。人望が厚く人気が高い彼でも、僕のいる場所を引き上げようとか、囁き声に怒鳴り声で返して僕らの間の高さを平らにならそうとかはできっこない。僕らはそんなとき息を潜めながら幼馴染として特別に作られたステージに座り、それとない会話を続ける。僕はそれでいいと思っているし、ライナーに全てをひっくり返す力が出来ないのも理解している。ライナーだけじゃない。きっとこのクラスの誰も、この階段を平坦にならすことなんてできない。下にいる僕がライナーのところまで上ることは出来ないから、ライナーが今までと同じように降りてきてくれることに感謝するしかない。そうやって僕は今日も、同じ高さにいるアルミンやマルコと、そしてライナーとランチボックスを開ける。

レオンハートはいつも最上段だった。僕は話したことなんか一度もなくて、ただ下からじっと見上げるばかりだった。レオンハートはクラスにつくられた彼女たちだけの為の玉座に座って退屈そうだったけれど、それでも僕を見下ろすことなんてしなかったし、いつも同じ段にいるヒッチやジャンや同じ段にいる生徒たちとばかりいた。上から降りてくることは出来る。でも下から昇っていくことはできない。僕とレオンハートは全然違う。皆違って皆いい、なんて嘘だ。僕はいつも、レオンハートたちのグループに出来ている壁を通り抜けてちょっかいをかけ、それでいて僕達にも話しかけてくるコニーとサシャの笑顔がたまらなく妬ましくなる。

「スクールカースト、ってやつだろ。うんざりするな」
まるで他人事みたいに言うユミルはクリスタといつも二人一緒で、二人だけで別の世界を作り上げているみたいにクラスからぽっかり浮き上がっていた。二人には階段の高さは関係なく、そこから遠く離れた場所で二人だけにしかわからない話をして笑い合っていた。クラスメイト達はそんな二人を気味悪がったりからかったりしていたけれど、僕はコニーとサシャの次に、二人を羨ましいと思う。きっと二人にはお互いがいればそれでいいのだ。クラスの冷たい視線も壁も関係ない。いつもそれを気にして、自分にだけ許された空間で喋ることができる僕とは大違いだ。
「めんどくせーよな、特にベルトルさんみたいな臆病なタイプにはよ」
歯に着せぬ物言いは僕をいつもぐらぐら揺らすけれど、僕はいつも曖昧に返事して笑うばかりだ。彼女もまた自分には全てを平坦にならす力がないと知っているし、そもそもそんなことめんどくさがってやりたがらないだろう。彼女にはクリスタさえいればいいのだから。だから彼女もまた僕とは図書委員の仕事を一緒にしているときしか話さないし、僕も自分の領域を出ない範囲で返事をする。
「あんたがアニと付き合おうなんて10年経っても出来そうにないわな」
「…別に付き合おうだなんて…僕もそれぐらいわきまえてるよ」
アニ、か。一度でいいからレオンハートのことをそう呼んでみたい。僕らの席は今たまたま前後だった。レオンハートと、僕。そんな奇跡が起こってもレオンハートはプリントを後ろに回すとき以外僕を見もしないし、僕はクラスに帰って来た時、彼女の友人が僕の席を占領してお喋りに興じているのを見ても声を掛けることさえ出来ない。現実はそんな甘くない。
「あんたのそういうとこが嫌いなんだよ。男ならびしっとやってみろ」
「そんなこと言われても、どうやって」
「……うーん」
ユミルは考え込む。暫く考えたあげく、「無理か」とため息をついて僕を見た。なんだよ、僕のせいじゃないだろ別に。…いや、僕のせいか。「下」にいる僕が悪いのか。
そのうち委員会の仕事は終わって、クリスタが笑顔で迎えにくる。金髪の天使は僕にちょっとだけ笑いかけて、「またね、ベルトルト」と言う。クリスタもきっと、クラスを隔てている壁は見えていないんだろうと思う。
ユミルはクリスタがいるからもう僕なんて必要ないのに「じゃあな、ベルトルさん」と言う。そんなところにふとした優しさを感じてしまって僕はどうしてもユミルもクリスタも嫌いになることが出来ない。



僕は立ち上がると、帰る支度を始める。今日はライナーも部活があるし、マルコは教室で勉強会だ。彼は僕のグループだけれど、人当たりも頭もいいから人望はある。彼のところには「上」から色々な生徒がおりてきて、マルコもまた彼らに堂々と接している。僕はマルコのことが、コニーとサシャとユミルとクリスタの次に羨ましい。
「もう終わり、」
そんな声が聞こえて僕は扉の方を向いた。それが誰かを認めた途端、ぐっと心臓が喉元までせり上がる。声も出ない。僕は首を縦に振った。レオンハートが「この本、返したいんだけど」と言って僕の方へ一冊の本を差し出す。
「督促状来て、今日中に返さないと駄目だって」
「……」
僕はか細い声で「僕が、返しておくよ」と言った。それ以上の言葉も、それ以下の言葉も出なかった。レオンハートはありがと、とだけ言ってこちらに近づいてくる。僕らの位置

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