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パラメータ



目が覚めると横で眠るアニの上に小さな数字がついていた。数値は28。

僕は頭を振って、夢でも見ているのかと思う。目を覚ますためベッドから起き上がり顔を洗って、眼鏡をかけて戻ってくると彼女の上に浮かんでいる数は無くなっているどころか増えていた。30、31、32…まるで時計の針みたいに数が増えていくそれを僕は呆気にとられて見つめる。35になったところでアニは少し身じろぎをし、38でもぞもぞと布団を蹴り飛ばす。40になったところでううん、と小さな声が聞こえた。僕は小さくアニ、と名前を呼んでみる。ぽんっと数字が跳ねあがり45にまで行きついた。この数字が100になったら彼女はどうなるのだろう。何となく僕は不安な気持ちで見守っていた。
「アニ、朝だよ」
数字が50になり、アニがうっすらと目を開ける。ベルトルト、と口の中でもごもご言う声はいつも通り眠たげで、とりあえず彼女が何か別の生き物、アンドロイドとかロボットとか宇宙人とかに変わっていないことに僕はほっとする。
「今日一限だろ、起きないと」
彼女の頭の上に数字が浮かんでいたからと言って僕はそれを指摘することはしなかった。僕はまだ夢を見ているような心地だったし、恐らく自分の目がおかしくなったのだと考えることしか出来なかったのだ。起き上って目を擦る彼女は何時もの様子で、特に変わったところは無い。今日あんたが朝ご飯当番だったよね、と言ってベッドを降りる。ぽん、数字が繰り上がり、52に。

その後一日彼女をとりあえず観察していたけれど、数字の法則はよくわからなかった。数字が大きくなったからと言って彼女は膝からがっくり崩れ落ちて「私はもう死ぬかもしれない」と涙ながらに僕に訴えたりはしなかったし、数字が小さくなったからと言ってめりめり背中から割れて「地球のカウントダウンもそろそろゼロだ、お前たち地球人はもう終わりだ」と高笑いしたりはしなかった。本当にいつも通りの、僕の小さな恋人は、時々数字を下げたりあげたりしながら、授業を受け、昼食を食べ、バイトに出かけて行った。

彼女が帰って来た時数字は一けたに落ちていた。今日一日、その数が一けたになることはなかったから僕は少しどきりとしてアニ、と言って立ち上がる。どうしたの。そう言う彼女は少し気だるげで疲労がたまった顔をしている。やっぱりこれは彼女の命のカウントダウンだったりするのだろうか。そう思うと何だか悲しくなってアニィ、と情けない声が出た。ぽん。数字が二けたに上がる。何でだよ。
「どうしたの、そんな顔して…私疲れてるからあんたに構う余裕ないよ」
「調子悪かったりしない?どっか心臓がばくばく打ち始めたり理由不明な頭痛に悩まされたりしてない?」
「はあ?何で…ちょっと疲れてるだけだよ」

そう言いながらアニはソファに座ると、僕にも座りなおす様に促す。僕が読書用にと片手に持っていたホットレモネードを奪うと、こくりと一口飲んだ。「美味しい」そう言って見せる弱弱しい笑みは数字の低さも相まっていつもより儚げに見え、僕は不安でたまらなくなる。死なないでほしい。僕の何もかもをあげるから。僕にも数字があるなら分けてあげたいぐらいだ。そう思って彼女がコップを持つ、その手を自分のそれで覆うと彼女はふと顔をあげた。「何、どうしたの。珍しい」そう言う彼女の上の数値がぽんぽんと上がっていく。数値が急にあがるとそれはそれで不安だ。不安で仕方ない。僕は何もわからないまま、それでもアニを失いたくなくて彼女の肩を抱いた。






私をその大きな腕で包んで、ぐっすりと眠るベルトルトの上の数値は80のまま揺らがない。幸せそうで笑えるなあと思いながら私はむき出しの腕を彼の頬に伸ばし、その輪郭線を指でなぞった。ん、と彼が身じろぎをする。ぽん、と数値が上がる。彼の数値はとても容易い。不安げに縋り付いてきたときの数値の低さには驚いたけれど、それでも首に手を回してあげて「どうしたの」と少し優しく囁いてみるとほうっとした安堵の息とともに数はいつものそれに戻った。体は大きいのに小動物みたい、と思う。堪らなく愚直で、そこが愛しい。本当に賢いのに、私のことになると簡単に取り乱して不安げな目をする。いつもは50で固まってほとんど動かない数が、低くなったり高くなったりする。
ベルトルト。名前をそっと呼んでみる。眠っていたと思っていたのに、彼はうっすらと目を開けた。なあに、アニ。彼の声は行為後の独特な気だるさに満ちていて、でもそこが好きだと思う。
「あんた、幸せそうだね」
「何、それ」
掠れた低い声。ぽん、と数が85まで上がる。
「私もきちんと幸せだから、大丈夫だよ」
ベルトルトはその言葉に少し驚いたように口を開けた後、少し笑って「そうみたいだね」と言った。また、数がぽんぽん、と上がった。


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