ジャンル:イナズマイレブンGO お題:反逆の魚 制限時間:30分 読者:653 人 文字数:1597字 お気に入り:1人

反逆の魚




きっとそこは地獄だったのだろう。

頭上を光の差し込む水が覆うこの場所でひたすら上を眺めていれば、なんだか自分がいる場所が信じられなくなってきた。
いつもは下に見ている水に見下されるこの感覚は、少し異常だった。
自分は対外自由に生きていたと思っていたが、やはり、先入観にはかなわなかった。

空気があって、水があって、光がある。
それは地球でも同じだというのに、順番が違うだけでこんなに滅入るなんて。

このガラスのようなものを破ってしまえばきっとこの星の人間たちは何ともないのだろう。死んでしまうとしたら、今ここにいる俺たちだけか。
そもそも今は買出しに来ていて、それ以外の船にいる奴らは無事なのだろう。買出しに来ている、俺と、キャプテンだけが、水に押しつぶされるんだ。

「いっそ割ってしまおうか」
「ちょっとちょっと、黙ってみてればなんてこと言い出すのよ。」

ふときいたことのある声がした。
振り返ってみれば、そこにいたのは先日たたかったこの星のキャプテンの女だ。
ほほを膨らましこちらに歩いてくる姿を一瞥して俺はまた水に目を向ける。この薄い一枚がなくなれば、俺は、海の藻屑だ。

「そりゃそんな弱そうな体じゃ仕方ないわよ。ポワイたちは全然平気だけど、君や、あの綺麗な子は潰れてオシマイよ。」
「勝手に俺と会話するな。」

だってほっといたら何するかわからないんだもん!!と耳障りな声で叫ぶこの女は、俺の苦手な人種(と、いう表現でいいのだろうか)だ。
めんどくさくなりため息をつけばまた何かキーキー言っている。この考えも読まれているのなら、もうつくろう必要もないだろう。めんどくさい。

沈んでしまえれば、どんなに楽だろう。

彼も巻き込んでこの海の、こんな知らない星の海の底で眠ることができるんだ。
そう、ここを墓場にしよう。すべてから逃げて、きれいな水の底で死ぬんだ。

「人の星で物騒なことやめてよねー。」
「お前まだいたのか。」
「キミ、さっきから自分のことばっかり考えてるね。」

それがどうした、と横目で女を見てみれば、女は驚くほどまっすぐ俺の目を見ていた。
低い位置にある眼を見て、その眼の色を見て、全部見透かされているのは分かっていたが居心地の悪さを感じる。
この女の目は、好きじゃない。

「ポワイも自分大好きだけど、キミは自分が嫌いなの?」
「知るかよ、そう見えるならそうなんじゃねーの。」
「で、あの綺麗なアズルの子のことが好きなのね。」

あの子の思いなんて、無視してしまうくらいに。

ぶわ、と俺の中の何かが噴き出すのを感じた。
横にいた女が小さい悲鳴を上げたのが聞こえ、きっとこれはアズルとかいうものなのだろう。

「さっきからうるせーんだよ、全部俺の勝手だろ?実行する気がなければそれはすべて自由で、勝手な妄想に過ぎない。それをとやかく言われる筋合いはねーし、これ以上踏み込むってんなら、俺だってそれ相応の対応をしなくちゃならなくなる。見るのは勝手だ。口に出すな、不快だ。」
「う、っわ~、やっぱキミのアズル規格外すぎるよ・・・。」

もうポワイ知らない!と女は俺に背を向けて走り出した。

言われなくても、わかっている。
俺の頭の中は俺の都合のいいように作られているから、俺は毎度自分の都合に彼を巻き込んではその思いをしまい込むのだ。

もう一度海を見る。水面が見えないほどの深海、しかし、ここは明るい。

「瞬木、お待たせ!」

そういって彼が笑う。俺は、彼を見て、海を見て、もう一度だけ声にせずにつぶやく。

( 割ってしまいたい )

海に沈む彼は、きっと綺麗だろう。
その傍らに沈み込む自分はさながら深海魚。

ああ、もうこの星を出る時間が迫っている。
また、死に損ねてしまった。



反逆の魚
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ナニコレ

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