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贈り物の話 ※未完

 例えば、なんてことない赤い髪飾りのリボンがここにあったとしよう。
 きっとそれはどんな女の子にも似合うもので、想い人に贈るものとしては悪くない選択肢だろう。女の子というものはそういう細やかな気遣いができる男に弱いものです――ああ、それはもう、雑誌やテレビの情報や得意げな表情をした愛宕から伝えられずとも嫌というほどわかっている。そういった浮かれた話に縁のなさそうな自分たちの上司は、これを買うどころかリボンが売られている店に入ることさえないに違いないが。彼からもらうことを期待するような無謀なことをする女の子はいない。自分しかり。だから今こうして頭を悩ませている様子を誤解されることは心外であり、事情を説明したくても内容が内容だけに本当のことは言いづらい。
「で、私が付き添いを頼まれる理由についての説明はその支離滅裂な語りで終わりですか?」
「…容赦ないなあ、霧島」
 「本当のこと」をある程度は話せる霧島になら、と思って付き添いを頼んだのは間違いだっただろうか、と今更ながら思えるほどに彼女は納得いかない様子だった。「買い物したいからついてきて」と、やけに挙動不審な姉から言われれば誰だって気になるだろうけど。
「大体、髪飾りくらい提督に頼めばいくらでも買ってくれるじゃないですか」
「それじゃダメなんだよ。センスとか……予算とか……センスとか」
「それには同意しますが、そもそも比叡お姉さまがそこまで髪飾りに興味を持っているとも思えないんですよね」
「…………」
「何か事情があるんですね?」
 さすが霧島と言うべきか。確かに、自分が着飾ろうとするときにはそれなりの理由がある。普段から女の子らしい髪飾りをそろえる趣味はないし、仮に偶然手に入れたとしても、自分でつけるよりむしろ姉妹にあげるだろう。
「ん、まあ、そこは聞かないでおいてくれるかな」
「わかりました。で、どういうものがいいんですか? 髪飾りなら種類とか色とか、あと予算もある程度決めていないと店めぐりで苦労しますよ」
「うーん、そのあたりのこと私全然わかんないから、霧島に任せちゃおうかなー、なんて…あはは」
「贈り物を自分で選ばないのは失礼だと思いますが」
「はは…まあそりゃそうだよね…ってなんで知ってるの!?」
「今の比叡お姉様を見ていれば誰だってわかります」
「そっか……」
 霧島ならいつかは気づくだろうとは予想していたものの、まさか頼みごとをして数分足らずで看破されるとは思っていなかったので、少しだけ落ち込んだ。自分の迂闊さというか、単純さに対して。
「それで、どういう髪飾りが似合うと思うんですか? その人」
「ううん…白とか……? 薄い桃色とか…紫でもいいかな」
 どこか儚くて、女の子らしい色。どんなものをあげても笑顔で受け取るんだろうな、と思うとどうにも決めかねる。それでもイメージははっきりしているのだ。自分が彼女に似合うと思うもの。綺麗で、落ち着きがあって、自然なもの。理想を押し付けているだけと言われればその通りで、なまじ長く一緒に過ごしてきたせいもあって、彼女のイメージは自分の過去と理想の中にあった。
「なるほど」
 ふう、と軽いため息を一つ。霧島はどういう答えをくれるのか、と多少緊張しながら待っていた比叡に、ただ一言。
「榛名は、比叡お姉様が選んだものなら何でも喜んで受け取ると思いますよ」
 妹の言葉を忠実に書き留めておこうと比叡が持っていたペンとメモが、床に呆気なく落とされた。

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