逢魔が時[怪しい本] ※未完
「わしが帰るまで部屋で待っていろ」
そう言われて夏侯惇は調練のあと曹操の部屋に足をはこび、のんびりとあぐらをかいてついてくつろいでいた。
外はもう夕暮れである。太陽が寝床に身を横たえようとするこの時分、ふしぎと外から聞こえる人の声も昼よりとおくに聞こえてくる。
この時間帯、「逢魔が時」というそうだ。人がふいと姿を消す、いわゆる神かくしといわれる現象も今が一番多いという。
うすぼんやりとしたこの明るさ。ひとりで物思いにふけるとどこまでも落ちていきそうな現実味のなさ。
物事にあまりひねくれた意識をもたない夏侯惇も、いつものまっすぐさを保つのが少々難しくなるおかしな時分だった。
ふと、曹操の机の上に見慣れない書物があるのにきづいた。
最近使われ始めた紙、というものを紐でしばったものだ。物珍しさもてつだって、夏侯惇はおもわずその書物を手にとった。
だがこれは曹操のもの。気にはなっても、中を見るわけにもいかない。
おかしな事に手にとったそれから、かすかに甘い匂いがする。
「……?」
紙というのはこういった匂いがするものなのだろうか。
落ち着かなくなった夏侯惇は書を机にもどした。だけれど、なぜかその中身をみたい、という誘惑にかられる。
きまじめで隠し事がきらいな夏侯惇にとって、めずらしいことだ。
──あとで、謝ろう……。
黙っていれば解らない、とは想わない夏侯惇だった。
心で曹操に誤りながら、ふいと開いたそれには。
「読んだか」
ふいにかけられた声に、夏侯惇は飛び上がらんばかりに驚いた。
「す、すまん孟徳」
いつのまにやら、政務を終えた曹操が優雅に足をくんで戸口に悠々とした様子でたっている。
「勝手にみたりして……、すまん。だが、この、これは」
顔を真っ赤に染め、目線を書物と曹操交互にうろつかせる夏侯惇に、曹操はわらった。
「おぬしへの恋文だ」
「おぬしへ何度か文を送ったが……」
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