ジャンル:ガッチャマンクラウズ お題:楽しい秀才 制限時間:1時間 読者:734 人 文字数:2554字 お気に入り:0人

【べるはじ・清はじ前提の累はじ】観察

GALAXの経過報告や諸々の件で何度もパイマンさん達の部屋に訪れているけど…。訪れる度にだんだんカッツェの態度が目に見えて非常に分かり易いものになっているのを眺めるのが此処最近の楽しみだ。
改めてガッチャマンの仲間入りを果した僕をはじめちゃんを筆頭に皆さんは快く向い入れてくれた。すごく嬉しかった。嬉しかったのと同時にとても緊張したものだ。一体何をすればいいかなんて変に空回りもしてしまった少し前を考えれば今の僕は結構余裕を持って嘗ての倒すべき相手を観察しているのではなかろうか。

「(まあ。皆さんの順応能力の高さに驚かされるというか…、僕もその一人だけど、…うん)」

勝手知った他人もとい仲間の住居。
ベランダを背にして壁に寄り掛れる場所が僕の定位置。丁度部屋全体を見渡せるし、テレビに向って突っ込みを入れながらお酒を嗜むパイマンさんと大体向い合う位置のお陰でアイコンタクトもし易い。ちょっと飲み過ぎなんじゃないかなって心の中で心配しつつ、僕の視線が横にスライドする。
如何いうわけか定かじゃないが実体化したベルク・カッツェがはじめちゃんの隣に座っている。というより陣取っている。律義に「この女から離れたくても離れられないんじゃボケ」なんて聞いてもいない理由付けまでして。
当のはじめちゃんといえばスマホで何やら検索をしているみたい。その所為で間近からの熱視線に全然気付いていない。もしかしたらワザとなのかも、…知れないけどそればっかりは彼女のみ知ることだ。
思えば前回お邪魔した時なんて文句垂れ流し、罵詈雑言の数々を吐き捨てている割には変だけど大人しくはじめちゃんにいいようにされていた。短くなった髪をお洒落にするとかでリボンやらゴムやら付けられては櫛で丁寧に髪を梳かれていたっけ。物凄い歪んだ口から呪詛染みたものが呟かれているから思わずこれは不味いんじゃないかって体を強張らさせたっけなあ。それから偶々来ていたO・Dさんに「あれ。いつもの事だから気にしないでいいわよ~」と言われて呆気にとられたなあ。いやー懐かしい。
その前なんかうたた寝しちゃったはじめちゃんに毛布を掛けてあげようと思って目を離した隙にカッツェがいつの間にか彼女の隣で添い寝していた現場なんて未だに信じられない。しかも顔がまた渋々と云った感じで。本当に素直じゃない。

「(僕だったら――)」

ふと物思いに耽っていれば何やら物事が動きそうな気配。
padから視線を上げればキッチンの方から清音くんの声が聞こえてきた。
「はじめー。ちょっと手伝ってくれー」
「はいッスー」
彼彼女達にとっては平平凡凡なやり取り。スマホをフローリングに置いてさっと立ち上がるはじめちゃんの視線は既にキッチンに向いている。だからこそ…、気付かずキッチンに向かおうとする彼女の服の裾に伸ばされる手を僕だけが目で追っていた。
伸ばされ見えていた赤い指先がはじめちゃんの服を掴み見えなくなる。急に動けなくなった事を疑問に思った彼女が後ろを振り返った。
「カッツェさん?」
「………」
奴は無言無視を決め込んでいる。
そんな間にも清音くんの声が再び彼女を呼ぶ。
「今いくッスー」
視線を清音くんの方に向けてから、裾を掴んで離さない相手をはじめちゃんが見下ろす。手、カッツェ、手と三回くらい往復した彼女の顔が優しく和らぎ、徐に伸ばされた彼女の手がカッツェの頭を撫でた。
そして優しい声色で小さく囁いた。
「すぐ戻るッスから。ね?」
「………」
驚いたことに奴は何も言わずはじめちゃんから手を離した。今の今までなら文句の一つや二つ、しかも理不尽極まりないヤツが飛んできてもおかしくなかった。なのにそれが無い。確実にカッツェははじめちゃんの術中というか彼女の雰囲気に絆され飲まれているのは見て分かる。
前方から視線を向けられているのに気付き僕は目を其方に向けた。パイマンさんが無言で腕を組み何度も頷いている。如何やら彼もはじめちゃんにやられたクチらしい。そういう僕もその一人だけれど…。
パイマンさんから意識をはじめちゃん達に戻す。何やら見ていなかった間に面白い展開運びになっていたみたいだ。
キッチンに居た筈の清音くんがはじめちゃん達の所に詰め寄り顔を顰めカッツェを睨みつけている。

「(清音くんも清音くんで分かり易い…)」

それでいて挟まれているはじめちゃんときたら殊更何の問題も無いような顔で首を傾げるんだから無自覚って本当に恐ろしい。
無言での睨み合いは無駄な争いに発展する前に解決に至る。だが、僕は見ていた。はじめちゃんは黙認しているのかもしれないけど足首にカッツェの菱形の尻尾がそっと絡みついている。清音くんだって気付かない筈がない。ならあえて気付かないように振舞っている、なんて考えた時点で僕は肺に溜まった息を吐き出した。
やり方は違えど二人とも何らかのアクションを取っている。それに比べて僕といったら――。

「(…遠くから眺めてるだけじゃないか)」

何の行動も起さず、ありもしない絵空事を思い浮かべては期待する。
馬鹿馬鹿しい。笑えない話だ。でも彼女に向けるこの気持ちを未だ後生大事にとっては捨てきれないでいる。
何時ときかのように縋りつけばきっと君は笑顔で手を差し伸べてくれる。だけどそれは僕が心から望んでいるものじゃない。
でも、それでも良いって思ってしまう自分がいるのも事実。特別な想いが秘められたものじゃなくたっていい。僕をたまに意識して微笑んでくれるだけでいい。一番なんてそんな大それたものは望めない。二番でも三番でも構わない。

「(君の傍にいさせてくれるだけで僕は満足なんだよ)」

隣同士に座って笑う自分、仲良くキッチンに立って料理する自分、他のどれを思い浮かべすり替えれば気が済むのだろうって自分でも思う。そして思いすり替えればすり替えるほど僕の心は小さな痛みを抱え凍るんだ。
臆病な僕自身。君なら容易に変えてくれるだろう。だけどこればっかりは僕自身で如何にかしなきゃいけない。
「X…」
『如何しました?』
「僕頑張るよ」
『応援しますよ、累』
一番の友達に励ましてもらい僕はまず一歩を踏み出すべくキッチンに足を向けた。

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