ジャンル:デュラララ‼ イザシズ お題:賢い傑作 制限時間:2時間 読者:731 人 文字数:3027字 お気に入り:0人

もしもデュラララ!!が探偵小説だったなら

 人間は想像以上の事は出来ない。事実は小説より奇なり。
 矛盾に聞こえるこの言葉は、矛盾をはらみながらも両立するのだとシズちゃんは示している。
 シズちゃんは相手に標識をぶん投げようと思っているから出来る。普通は標識がぶん投げられるなんて小説の中の出来事だ。
 ここから導き出されるのは、平和島静雄は小説の中の生き物だと言う事だ。
 得意げに語る折原臨也は常軌を逸して見える。少なくとも波江には。小説の中の人物が可愛い誠二を痛めつけたとでも言うのかと思う。
 「貴方はどうなのよ?こんなに邪悪な人間が、小説以外に居るものかしら?」
 「ははは、波江さんだってさ。何処のエロゲ?」
 「下世話ね。キャラメイクとしては俗っぽいわ。それで、例えば平和島静雄が小説の中の人物だとして、あなたどうする気なの?買って読んでみるつもり?彼が居た世界の話を」
 「そうだねぇ。あいつが居るに相応しい世界って言うのは、きっと暴力が言語なんだ。つまりは、バトル漫画か社会性に満ちた物か」
 臨也はそう言いながらキュッと黒のマジックで候補を上げていく。
 「小さい頃、探偵になりたかったっていうんだから、ひとまず奴は探偵の世界から来たと考えようか」
 探偵に、きゅっと丸を付けてそれから、探偵役ではないと付け加える。
 「あの脳筋が探偵役なわけはないからね。勘は鋭い、体力はある。サイドキック(相棒役)にはうってつけかもね」
 ワトソン、と書き込まれた横に波江はキュッと矢印を引いて付け足す。
 「どうかしら?警部かも知れないわよ?貴方達を見ているとね。執念深く追いかけていく所なんかは似ているんじゃない?」
 それに、臨也は出来ればコソ泥を追いかけて欲しいなと言いながら、更に矢印を付け足していく。
 「ああ。頭が良くなくても犯人や手下って言う可能性はあるね。あんまり頭が良くないけど、突飛な殺人を実に下らない理由で行うのさ。それで探偵が混乱する」
 犯人か手下、と加えると、メモ用紙はいっぱいになってしまった。
 「さぁ。どれの立ち位置が相応しいだろうって思ったけれど。はは、人間豹でもあるまいし、あんな化け物は探偵物には相応しくないね」
 結局、波江を突き合わせた思考のお遊びだったのだろう、臨也はメモを丸めて屑籠へ投げ入れた。それから、彼の世界には探偵がかけているねと言った。
 「そうね。彼を導いて正解にしてくれる存在がいないわね。あなた、そんな物になりたいの?」
 「いいや。俺は御免だよ。人と遊ぶって言う意味じゃ、探偵も情報屋も変わらないかもしれないけどさ。俺は永遠に犯人を逮捕したりしないよ。そいつの悔しがる顔は見たいかもしれないから解いても、警察に入れて次の可能性を潰したりなんかしない」
 臨也は不敵に笑って見せるので、ああ、もしかすると探偵物にはあまり詳しくないのかも知れないと波江は頬を緩ませる。
 「貴方は、明智小五郎を知らないの?彼は正義なんかには興味がないのよ。気に入れば逃がしてしまう事もあるわ。あなた、さっき人間豹と言ったけど、案外貴方達は似てるのかもよ?あなたがもし、小説の主人公だったら…」
 モリアーティにホームズ、明智小五郎に黒蜥蜴と二十面相、ルパンにガニマール、くるくる。
 波江は役柄に丸をしようとして手を止める。
 「貴方はヒーローには向かないわ。場を盛り上げるロマンスがない」
 ハートを適当に描いて、器用に集中線を書いて波江は分割していく。
 「ロマンスのない話なんかいっぱいあるだろ?それに、最近のハーレム物は恋には全く気付かないやれやれ系だって聞いたけど?」
 「そうね。メンヘラっぽい女の子にしか愛されそうにないっていうのは言えるかも知れないわね。でも、致命的なのは誰も共感を得られない主人公って事かしら」
 「共感を?」
 「そうよ。可愛い女の子を助けるかもしれない、大抵の女の子は可愛い女の子を助けて好かれたいと思っている。だから、そこまではいいわ。でも、その後の貴方の地の文に誰が感銘を受けるのかしら?この子を利用したい?泣き顔がみたい?主体性をなくすまで追い詰めたい?スタンガンを持った自爆テロの少女兵に仕立て上げようか?そうね。好かれたいというのも、セックスがしたいという本音があるならばゲスに見られてしまうから、そこから目を背けて硬派である事や鈍感である事で下心から目を逸らさせているのだとすれば、貴方は正直だと言う事になるわね。でも、正直だからこそ見たくないと思わせるのよ。それに、それがただの下世話な下心だったならいいわ。分かってあげる。その直視を素直だと賛美する動きもあるでしょう。でも、人間が好きなんて言う訳のわからない理由なの。サディストという訳でもない。それによって快楽など得ていない。気持ちよくなんてないのよ、人間は、貴方なんか見ても。空っぽなんだから」
 だから、ヒーローではないわ。なれてダークヒーローでしょうね。でも、貴方を殺せばスッとするから貴方は被害者が似合うんじゃないかしら?
 そして、波江は死体と書く。
 「ああ、貴方の死体は謎を呼ぶでしょうね。100で収まれば御の字と言う容疑者が居るわ。推理のし甲斐があるというモノ。アリバイを全員から聞くだけで大長編よ?お願いだから、少しでも容疑者を減らす為に陸の孤島なんかで死んで頂戴」
 そして、一人さびしくと付け加えた波江に、俺を殺すなんて、真っ先にシズちゃんが上がるから、そんなの後は証拠集めだけだろうと苦笑いして、平和島静雄に犯人と丸をして線で結ぶ。
 「状況証拠ではなく、動機を大切にするタイプの探偵っていう事は、火曜サスペンスかしらね」
 「そうだね。だったら、最後位温泉に浸かりたいもんだよ」
 秋田県の温泉と書き足す。 血煙温泉ぶらり首、若女将、番頭、OL三人組と、探偵役がその横に連なっていく。
 「じゃぁ、まるで人間には出来ない殺人方法で殺された場合は凄くお粗末になるわね。誰が折原臨也をバナナの様にどうやって剥いたのか?その方法をどんなに検討しても、野生のゴリラか恐竜でも現れたんじゃないかとしか考えられないわ」
 「ああ。しかも、それが本当にシズちゃんの仕業なら、俺が折角温泉を堪能しようとした所を鉢合わせた事になる。一体どんな状況何だか」
 「あら?案外と一緒に来たのかも知れないわよ。男二人で、同室で」
 「ありえないね。それこそ、小説の中にしかない様な話だ」
 「あら、じゃぁ平和島静雄は小説の中の人物じゃないっていう事になるわね?貴方を殺す男は平和島静雄で、平和島静雄はあなたと温泉には行かないんだもの」
 「…些か強引だな。飽きたね波江さん。温泉で鉢合わせた可能性で再試行を試みる事は?」
 「あなたも言ったでしょ?それはどんな状況何だかって。貴方の想像も出来ない事を私は思考してられるほど暇じゃないの。飽きるくらいには」
 終わった仕事が入っているのだろうUSBメモリーを置いて、波江は立ちあがる。
 そうね、今度離島にでもある温泉のチケットを二人に押し付けてやるのはいいかもしれない。出来れば嵐になる前日がいい。
 完全犯罪の可能性に、波江は頬を緩める。
 
 「人間は想像以上の事は出来ない。事実は小説より奇なり」
 
 きっと、面白い事だけは分かる。それは、小説にすれば何冊分だろうか?
 
 

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