ジャンル:封神演義 お題:男の瞳 制限時間:4時間 読者:384 人 文字数:2084字 お気に入り:0人

モブ天君前提似非母子モノ ※未完

 きっと、影ばかりを映しすぎたのだろう。彼の瞳は決してひかりを宿さない。そのことを、彼は他人のせいにしたがり、必死に加害者を求める。たまに傍らでそれを眺める機会にある彼女は、ただ痛々しいと感じ、退屈そうにあくびをするのだ。
「可哀相だなんて思ったこと、一度もなくってよ?」
「哀れみが、あの子を救うのかしら? 受け入れて欲しいだけなのよ、あるがままのあの子を……」

 久方ぶりにできた再会のチャンスだというのに、たずねた先に彼はおらず、今にも爆発してしまいそうに膨れ上がった愛おしさのやり場を探して、妲己は通信画面を叩く。残念ながら、音声は拾わない。そういう仕様でアクセスキーを作ってくれと彼に言いつけ、そのかわりに、なるべく鮮明な映像を映し出せるようにと、注文をしたのである。彼は妲己の言うとおりのキーを作って彼女に差し出した。彼は決して彼女に歯向かわない。歯向かうどころか、希んで彼女の手足のように動く。妲己が彼を愛おしく思うように、彼もまた、妲己を愛してやまないのだ。
 検索対象を王天君に指定して、映像の接続をこころみる。居場所を調べるつもりで、エンターキーを押すと、エラーメッセージが表示される。どうやら、検索を弾き返されているようだ。試しに、自分の名前を入力してみると、画面いっぱいに稀代の美女が映し出される。機器が故障しているわけではなさそうだ。金鰲のブレーンの大部分を今や王天君が担っているといって過言ではなく、純粋な戦闘力よりもその頭脳と宝貝の扱いによって十天君入りを果たした彼ならば、自分の居所を詮索されないようにシステムに干渉するのは容易であると妲己は知っている。
 ──秘密のニオイがする。
 本来は、彼と同じように金鰲に住まう仙人に向けての検索制限であるが、それを察したのは、彼以上の情報戦の担い手である妲己である。いくら彼でも妲己に隠し事は出来ない。精神的負担による否ではなく、彼女は他人の秘密や隠し事を簡単に暴いてしまうからだ。それは彼女の希む希まざるを選ばない。知りたいことも、知りたくないことも、重大なことも、些細なことも、一様にして彼女は掌におさめてしまう。だから、妲己は強いのだ。
「んもう、王天ちゃんったら。せっかく親子水入らずしようと思ったのに、わらわを放置して雲隠れなんて……。フフッ、爪が甘いわねん」
 マザーの管理パスならば、いくつか見当がある。
「どれくらい成長したのか、チェックしてあげる」


 相手のことを好ましいと思ったことは一度もない。寧ろ、欲求に従った行為に及ぶ場合、そういった感情論は不要だと王天君は思っている。理由が必要なら、運動不足だからだとでも、ストレス発散だとでも、答えておけばいい。どうせ彼も、その相手も、お互いを道具のようにしか捉えていない。そして、それ以上を希んでもいない。都合のよい夜に、都合のよいだけ要求しあう。ほどよい灯りも、装飾品のようなセリフも邪魔でしかない。息遣いだけでは素っ気ないのであれば、ベッドが軋む音をバックグラウンドミュージックにすれば事足りる。
「どうして、オレばかりがつまらない? すべてがどうでもいいはずなのに、好き勝手にされるとムカついて仕方ねえんだ」
「まるで、そこにはオレなんか必要ないって、言われてるみたいで……」

 腹中でうごめいていた熱が収束していくのがわかり、王天君は両足を使って相手の腰を引き寄せる。もう一回と、顔の前に人差し指を突き出して、相手の顎先から落ちる汗をすくい取る。最高だよ……と下卑た笑みを浮かべる相手に同じように笑みを返しながら、どうせ誰にでも同じことを言うくせにと頭の向こう側で悪態を吐く。生まれがヒトではない格下の道士に、王天君の思惑など汲めるはずもない。案の定、視線を交わすのもそこそこに、繋がったままの部分に粘液を塗りたくることに夢中になっている。
 夜ごとの相手など体温さえあれば誰でもよく、生まれや体格、性格や種族さえ選択肢にいれたことがなかった。どうせ、同じなのだ。誰に抱かれても、ぴたりと繋がっても、寄り添っても──一度だって、満たされたことなどなかった。満たされるどころか、殊更に、自分というものが解らなくなっていった。他者のぬくもりを求めて行為に耽っているのは、確かに自分の意志なのに、触れて離れてを繰り返すたびに、悲鳴をあげたくなるほどの感傷に襲われた。そして、もうこんな不毛なことはやめようと、太ももを伝う液体を眺めながら決意するのに、日が暮れれば他者の温度も求めずにはいられなかった。感傷など、いつかは擦り切れて、摩耗して、消え失せるのだろう。過去や、思い出と同じように──。
「もっと、もっと揺すって、そこ、そこっ……」
 制止の及ばぬ強い力で揺さぶられ、生理的な泪が王天君の眦に浮かぶ。呼吸が追いつかぬほどに穿たれ、かすれた声をあげて鳴く。苦しいのに、気持ちが良い。不毛なのに、あたたかい。満足感を得ることはないのに、止め時がわからない。泣き笑いを浮かべて、矛盾を噛み潰すように、爪に歯をたてる。

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