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あなたの幸せは望んでいない(八浄)

 正直なところ、悟浄という男には感謝以上の言葉がみつからない。お人好しなところは呆れはしても、自分に持っていないものだからちゃんと尊敬しているし、世渡りというものもよく知っている。たぶん、世の中の常識というものを分かっているのもあっちのほうだ。
 だてに周知の事実で親友をやっているわけではない。言葉にはだしていないが、本当に、心底、純粋なる気持ちをもって、悟浄に対しては感謝をしている。全く言葉にだしていないが。自分をあの雨のなか拾ったことについてはひとつも恨んでいない。言葉にはだしていないが。
 だから、本気で、彼に腹を立てたり、むかついたり、嫌悪を。
 抱いたことなんてなかったのだけれど。
「——悟浄……僕、あなたのこと嫌いになりそう」
 言った瞬間後悔した。
 だってこれは、おそらく悟浄にとって、ものすごく——とてつもなく、効果的な言葉だ。
 悟浄はいつも通りに、笑う。驚いた顔でもすればいいのに。泣きそうな顔を浮かべればいいのに。しかし、間髪もいれずそこには、あまりにもいつも通りの顔が浮かんでいた。
「へぇ〜? なれないくせに、よく言う」
 悟浄は僕のことをよく知っている。だからこの言葉で、僕が後悔しているのもたぶんよく知っている。だからこんな風に、彼のいちばん得意な薄い笑いを浮かべるのだ。酷薄な。なんの感情もともなっていない。
「——ごめんなさい」
「謝んのかよ」
「ごめんなさい。今の聞かなかったことにしてください」
「言った言葉には責任持ちましょうってお前習わなかったの」
「すみません——…」
「……お前ほんと、情緒不安定よね……」
 分かったから早く入れよ。背中を叩かれて、僕はようやく、部屋に入った。ここは宿だった。深夜、雨のなか、僕は、なぜか外にでた。意味もなく傘もささずに外に出た。帰ってきたら、悟浄は部屋で待っていた。それだけのことだった。部屋のドアを開けられて、あーもーお前ってほんとバカ。そう言われた瞬間、なんだか僕は妙にムカついたのだった。キレやすい若者でもそんなことで怒らないだろう。だけど僕は、当たり前を装って、普通の優しさで僕を受けいれるこの普通の男に、一瞬だけ苛立ちを覚えてしまったのだった。
 だから、いちばん、この男を分かりやすく傷つけるであろう言葉を選んで、僕は。
 ——嫌いになりそう。
 ああ、さっきの自分を殴り殺しにいきたい。
 悟浄は煙草に火をつけている。いつも通りの夜。いつも通りの匂い。

 ——そして僕は最低なことに、彼の赤い目のなかに、傷ついた色が浮かんでいないかを、ずっと探していた。

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