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爽「肝試しだ!」 成香「こわいです…」

 夜の森というものは、私たちが考えている以上に暗い。
鬱蒼と茂った木々が月明かりを完全に遮り、いま私の視界は完全に暗闇で覆われていた。

「ちかちゃん。ちゃんといますか?」

 前方から、不安そうな声で成香が訊く。
まったく。しっかりと手を握っているのに、人が急にいなくなるなんてことがあるだろうか。本当に怖がりなんだから。
安心させるために、努めて和やかな声で私は成香の声に応えた。

「大丈夫だよ、なるか。ちゃんといるよ」

 ほっ、と安堵の息が漏れたような音が聞こえる。

「良かった……もしいつの間にかちかちゃんじゃなくて別の方の手を握っていたらどうしようかと……」
「別の方、って……」

 こんな森の奥深く、しかも時間は丑三つ時。
私たち以外に人がいるはずがない。もしいたら、それは――

「……おばけくらいしかあり得ないよね」
「や、やめてくださいっ! そんな、おばけなんて…!」
「あはは、ごめんごめん」
「……もうっ」

 ちかちゃんはいじわるです、と拗ねたような口調で言いながら、成香は私の手を引いて木々の間を進んでいく。
私も彼女の後を追い、足を――先ほど木の枝で深く切ってしまった、今なお鋭い痛みを神経に与え続ける足を――動かす。
成香も何だかんだ言いながら、私の怪我が心配らしく、時折足を止めて私の様子をうかがっているようだった。

「……ごめんね、なるか」
「? ……あっ。さっきのことならもう気にしてませんよ。おばけのことは……」
「違うの。そうじゃなくて」

 首を振って、ハンカチで止血された足をさする。

「……こんな怪我しちゃって。完全になるかの足手まといだよね」
「そんなこと……」
「なんだったら、私を置いて行って先に行ってくれてもいいから。ほら、後で助けに誰かを呼んできてくれれば大丈夫だよ。だから――」
「何言ってるんですか」

 心なしか、普段より強い口調で、成香は私の言葉を遮った。

「私がちかちゃんを置いていくわけないじゃないですか。……ほら」
「…!」

 暗闇の向こうから、成香が私に手を差し伸べた。そして、

「行きますよ、ちかちゃんっ」

 ――彼女の顔は見えなかったけども。
たぶん、その顔は私が大好きな……大好きな、あの微笑みをたたえていたのだと思う。
 ありがと、と小さく呟き、私は差し伸べられた成香の手を優しく握った。






 後日。
肝試しで遭難者二人を出してしまった有珠山高校麻雀部はこっぴどく叱られたとか。

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