紙一重
例えば、あなたを抱きしめながら眠りにつくことが出来たならば。
目覚めを知らない死という名のそれであっても、しあわせだろうと思う。
無論、そこにあなたの意思はないわけで。
ついでに言わせてもらえば、自分に神や仏に願うような純粋な心もないようなので、天国なんてものがあるとも思えない。
それでも、どうでもいいと投げ出してしまえるような存在ではないのだ。
あなたはいつの間にか一人でふらりと存在を消してしまえるほどの魔法を手に入れてしまった。
引き換えにオレは何もかもを失って、ただのつまらない人間になってしまった。
遥かな時を超えて何故か息をしているだけの、ただの時代遅れの人に成り下がった。
けれど、この現実は別段悪くないとも思っている。
なぜかって。
そんなもん、オレのその大層つまらない「ただの人間」であることを、誰より何より喜ぶバカ勇者の所為だ。
何も出来ないからぐーたら寝て過ごせるのかと思えば、あなたは事あるごとにオレを戦士と呼んでは存在理由を与えようとする。
押し付けがましくもないから逆にイライラさせられるほど。
いつか本当に生きることに疲れても、あなたはオレをいつまでも戦士と呼んで求めてくれるのだろうか。
魔力で引き伸ばされた寿命を呪わずに、あなたは孤独を背負ってオレを見送るのか。
なんだかな、なんだかなあ。
それって、実はすごく贅沢なことなんじゃないだろうか。
生きている間中求められて、居場所をもらって、オレはとっとと寿命を終えて眠りについても。
あなたはきっと永遠に、その心の中に愛を巣食わせてくれるのだろう。
なるほどそれが天国か。
待ちぼうけの共に適当に手に取った堅表紙は魔術書じゃなく哲学書であった。
家庭教師用の教本の中に紛れていたらしい。
難しいことを考えていたら腹が減ってきた。あんみつ食いたい。勇者さんも欲しい。
当の待ち人は牢から魔界へ直行任務に行ったまま帰って来ていないときたもんだ。
まあ、なんにせよ。あれだよなあ。
「オレって勇者さん好きすぎるよなあ」
ぼんやりと呟いた言葉は寝そべったアルバの堅いベッドにバラバラと音を立て鎖の形状を伴って落ちた。
さて、今夜は遅くまで課外授業と行きましょうか。
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