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金貨一枚の恋慕

「これを一ついただいても?」
 私は顔を上げた。フードに遮られた視界の上方から、その人の顔が見える。指さしている品物に一瞬目を遣り、視線をまた相手に戻す。無言の催促。相手はきょとんとした表情で二、三度瞬きをした後、はたと気づいてポーチの中から小さな袋を取り出した。ひもを緩めると、硬貨を一枚取り出す。この場所では珍しい、黄金の硬貨。
「・・・・銀貨二枚でいいわ。」
「すみません、今銀貨の持ち合わせがあまりないのです。」
 彼女は少し困ったように眉を寄せて言った。私は知っている。彼女が自分の富を見せびらかしたいわけではないことも。ここで金貨を見せることがどういう意味を持つのか、理解していないことも。
 私は傍らのいびつな缶箱に手をやり、少し大げさにじゃらじゃらと音を立てながら銀貨を七枚拾い上げた。それから銅貨を十枚。片手に掴んでじゃらじゃらと音を鳴らしながら、相手に差し出す。彼女はまたも面喰ったようで、一瞬考えてから持っていた袋の口を両手で大きく広げた。私は彼女の顔を一瞥してから、硬貨を握りしめた手をゆっくり傾ける。じゃりじゃりと音がして、それらは彼女の袋に飲みこまれていった。その様をたっぷり眺めてから、私は彼女が指し示した品物をそっと摘み上げ、彼女に差し出した。
「・・・・ありがとう。」
「どうも。」
 彼女は少し嬉しそうに笑って、私の前でひときわ美しく光るガラス細工を受け取った。目の高さまで持ち上げると、太陽に透かして顔をほころばせている。しばらくそうしていびつな輝きを噛み締めてから、それを首にかけてからこちらに向き直った。
「似合いますか?」
 私は黙って、少し微笑んだ。彼女は今日一番の笑顔を咲かせてから、少し頬を赤らめた。
「あの・・・・また来ます。」
 それだけ告げて、彼女は足早に去って行った。この場に似合わぬきらびやかな装いに、道行く誰もが振り返る。あるものは好奇の目で。あるものは羨望の目で。あるものは憎悪の目で。
 私は知っている。その中で、憎悪の色が圧倒的に多いことも。彼女が毎朝崖上の道から私の姿を眺めていたことも。それが恋慕と呼ばれる感情による行動だったことも。
 彼女は知らない。彼女の存在を疎ましく思っている人間が、貧富を問わずこの世界には存外多いことも。今この瞬間、彼女の命に狙いを定めた私の仲間が、あのガラス細工の独特の光を照準越しに追いかけていることも。私が、ずっと彼女の視線を盗んで見つめ返していたことも。
 受け取った金貨を愛おしげに見つめてから、私はそれにそっと口づけた。まもなく銃声が鳴る。この糞食らえな世界は変わり、彼女は永久に私のものになる。

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