ジャンル:イナズマイレブンGO お題:冷たい傑作 制限時間:1時間 読者:664 人 文字数:2696字 お気に入り:0人

記憶の代償

※ガンマとレイルクねつ造話
ただの妄想にすぎない


ある日棚の整理をしていたら何冊かの分厚い本が出てきた。
「アルバム……?」
本の裏には年月が刻まれており、見たところ数年前のものと思われる。
数年前の記憶など、僕にはあまり残されていない。
むしろ思い出したくない事かも知れない。
中身など見ない、そう思っていたが好奇心はやはりあるもので、その中の一番古いアルバムを手に取った。
恐る恐る表紙をめくると、そこには僕が写っていた。
「これって……」
どう考えてもこれは僕だ。
昔の忌々しい記憶が脳裏へと駆け巡った。
親に見捨てられ何日も一人で知らない場所を彷徨い、全てがボロボロになった時僕は保護された。
でも……一体誰が僕の世話をしたのだろう。
ページをいくつかめくってもあるのは僕単体の写真のみ。
2冊目も3冊目もそうだった。
これはアルバムではなく、ただの僕の成長過程にすぎない記録帳だ。
そう思いながら最後のアルバムに手を伸ばす。
予想通りだ。
やはり僕しか写っていない。
たまにルジクやアルファなど今の仲間と一緒に写っているが、それ以外は全て僕だった。
何のためにこんなものを取っといてあるのか。
理解ができないよ。
そうつぶやきながらアルバムを元あった場所に戻そうとした時。
「ん?」
先ほどのアルバムに違和感を感じ、もう一度一冊目から見直してみる。
すると、2冊目以降から所々写真が歯抜け状態になって抜けている。
明らかにこのアルバムは、何かを隠している。
どうしても気になり更に棚の奥を調べてみた。
すると薄いビニールに入った封筒が埃と一緒に発見された。
中身を見てみると、そこには何枚かの写真が。
そこに写っていたのは僕と……
「!!」
思い出した。
僕の世話をしてくれた人は……
写真を持って廊下を小走りで駆ける。
とある部屋に行き、充電ポッドの前に立つ。
しかし、生憎留守みたいだ。
今日もパトロールに行っているのか……
諦めて自室へ戻ろうとした時、背後から声がした。
「そこで何をしている。」
「レイ……」
抑揚の無い声、無機質な表情、そして冷たく鋭い視線。
今の僕を驚かすのには丁度いいスパイスってところだろうか。
「何をしていたかと聞いている、答えられないのか?」
レイが僕に歩み寄ってくる、それと同時に反射的に僕も後ろに下がった。
彼がこうなったのは多分数か月前。
僕以外の人物にはいつもと変わらず接していたのに、ある日突然何の前触れもなく僕にだけ冷たくなった。
何度レイを点検してもらっても異常はない。
もしかしたらレイは、自分で僕のデータだけを誰も治せない深い深いパーツの中へと完全にしまい込んだのだろうか。
「何故、逃げる?」
「逃げてはいないさ、つい反射的にね。」
そう言い終えると同時に充電ポッドへとぶつかる。
これ以上はもう下がれない。
都合がいいじゃないか。
丁度用事のある人物が目の前にいるんだ。
もしかしたら僕から出向いても、取り合ってくれる保証などない。
だって彼は僕にだけ異様に冷たいのだから。
僕の事が本当に嫌いなのか、それかわざとなのか……
しかしこいつに限って演技なんて事はない。
多分本当に嫌っているのだろう。
「さっきから何も言わず、下がっているだけじゃないか、何か言えない事でもここでしていたのか。」
その声は抑揚が無いのは変わりないが、さっきよりもキツイ感じに聞こえた。
「そんな事ないよ、僕は君に用事があって来たんだ。」
「私に用事だと?」
「うん、この写真……アルバムから抜き取られていたんだ、しかもご丁寧に君と僕が一緒に写っているものだけ。」
持っていた写真を見せる。
表情は変わらないが、何か言いたげだった。
「君でしょ、僕の部屋に勝手に入って取り出したのは。」
「…………。」
その目線は写真でもなく僕でもなく、何処を向いているのか判断出来ない。
勿論一切の瞬きも無しに、ずっと一点を見つめている。
少し、不気味に感じた。
たった数秒の沈黙なのに、凄く長く感じる。
この空気が嫌だったので少し挑発しようと口を開いた時。
「怖かったんだ。」
空気を引き裂くように、感情が籠った声で返事が来た。
「怖い……?何が怖いの?僕は、これに関しては決して怒っていないけど。」
「違う。」
「……分かんないよ、じゃあ何?」
すると、目の前にレイの拳が迫っていた。
必死の思いで体を座らせる。
その拳は彼の充電ポッドへと。
鈍い音を立て、充電ポッドには軽くヒビが入っている。
元々僕を狙ったつもりではないらしいな……
「……暴力?こんな君初めてみたよ。」
「私もだ、今、何故私は…私は、」
「レイ?落ち着いて。」
「私は、何処かではきっと……君に冷たくしたくないと思っているのだろう、でももうこれは仕方ない事。」
冷たくしたくない?
仕方ない?
ブツブツとそれを繰り返す彼は故障しているのだろうか。
「ガンマ、私は初めて人間のお世話をあの時したんだ、小さい君の心の傷は多分ずっと癒えない、私は人間ではないから君を癒すことなど不可能……」
……違うよ。
いつもならこう反論していただろう。
しかし、先ほどの脳裏に駆け巡った記憶は今思い出しても、嫌な記憶でしかない。
小さい頃の記憶がなかなか思い出せなかったのも、僕がそれを必死に封印していたから。
「だから私は写真を抜き取った、何回も燃やそうと考えた……でも私にはそれは出来ない、そういう非道な事はプログラミングされていない、せめてバレないように奥に隠しておいたがムダだったみたいだな。」
……レイ。
「写真だけでなく、いずれ私といるときっと全ての記憶を思い出すだろう、そう思い私は君に関する事をなるべく忘れ、君に対してだけ冷たく接するように暗示をかけた、その暗示は嘘のように効いているんだ、今だって本当はこの場を去りたい……気分が悪い。」
レイが、僕に冷たくする理由、ようやく分かった。
これはお互いにとって、残酷な事だけど一番いい選択なのかもしれない。
レイは僕の為を思って……
「もし僕が、君に世話にならなかったらまた変わっていた?」
「それは私にも分からない、そろそろこの部屋から出て行ってくれないか……そして今後なるべく関わりを持ちたくない。」
「ああ、言われなくともそうするつもりだったよ、……じゃあね。」

僕は君に全てを形成され、君の傑作となった。
そしてその代償に、君は僕に対しての愛情を全て放棄した。
……残酷だね。

僕は君の冷たい傑作でしかない。


END.

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