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別人

CMに流れたワンシーンを切り出したポスターを眺め、千明は別人の顔を眺めるようにその人を見た。
シンデレラガール、とか
はぁ?
尚子が飽きれたようにこちらを見た。
ああ、これ、いいんじゃない? 私っぽくないでしょ?
そりゃね
歩く人間凶器と呼ばれた尚子が、こんなお淑やかな、いかにも大和撫子な姿となってポスターにはあった。
人生に一度くらい、こういうのがあってもいいよね
千明より3歳年下の彼女は、長く生きた人のように言った。通常の日本の学校に通っていないせいか、口調が大人びていた。
人生に一度もない人の方が多いよ
こんなの、あってもなくてもいいじゃない
あったら面白いんじゃない?
さあ? その人次第でしょ
渋谷を歩いていて、名刺を貰ったという。尚子は千明の誕生日プレゼントを渡しながら言った。彼女は渋谷のサイン会に行っていたのだという。千明へのプレゼントは本で、サイン会というのは、その本の作者のサイン会だった。
年配の人ばっかりだったけど、結構並んでて。
本は歴史書で、かつ研究論文の集大成だったので、そのサイン待ちの列で年若い尚子はさぞかし目立ったことだろう。
ようやくサイン貰って帰ろうとしたら、女性が近づいてきたの。
モデルを探している、とその女性は言ったらしい。親御さんに許可もらったら、一度だけ事務所に来て。今、売り出し中の写真家が、あなたのような人を探しているの。お願いだから、事務所に来て。ここに電話をくれれば迎えに行くわ。
親に相談したところ、尚子の母は面白がって、尚子の父も記念にいーんじゃない、と言ったらしい。
そして写真家に撮影された尚子は、いつの間にかCMにまで出演し、こうしてポスターにもなっていた。
もうすぐお正月だしね。
白い息を吐きながら、振袖姿の自分の姿を、別人を眺めるように尚子は眺めていた。

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