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世界のすべてを

 冷ややかでいて、つるりと無機質な感触が、彼の指先の上をすべる。
 きれいに整えられた爪が床にひっかかるようなこともなく、ただただ彼は、まるでその場所に世界のすべてが詰まっているかのような面持ちで、自身の足元を撫でた。それを木兎は、なんだか見てはいけないものを見ているような気持ちで、けれども決して目を離せない必然性にとらわれながら、なにを言うでもなく静かに見つめていた。

 きっとその場所には、彼の世界のすべてが詰まっているのだ。喩え話でもお伽話でもなく、ただの真実として。
 そうでなければ説明がつかなかった。ひんやりと冷たいだけの体育館の床を最愛のなにかを見るような目で見下ろす彼に、木兎はそう思った。胸がきゅうぅと締め付けられるように傷み、そして、なぜだか眼の奥が熱くなった。

「あかあし、こっち向いてよ」

 二人でしていた練習の合間に、十円で買ってきたスナック菓子を木兎が食べて、それの食べかすを赤葦が掃除して。ただそれだけだったのに、彼はもう、五分もその体勢から動かないでいる。
 そして、じっと床を見つめて、大切に慈しんできた指先で、それを撫でているのだ。愛しそうに、愛しそうに。そこに、赤葦の世界のすべてが詰まっているかのような面持ちで。

 それは木兎をたまらない気持ちにさせた。
 赤葦の世界のすべては、そんな冷たい床ではなく、自分でなければならないのに。

「赤葦、おねがい、こっち向いて」

 引き裂いたような声で懇願しても背を向け続ける彼は、いったいなにを考えているのだろう?
 木兎にはそれが分からない。その場所にいったい赤葦のなにがあるのか。それは木兎よりも優先されるべきことなのか?

 ようやく振り向いた彼は、ほんのりと笑ってから、ぽたりと、小さなしずくを床に落とした。

「ここには俺と木兎さんのすべてが詰まっているんですよ」



 ――俺は、明日、卒業する。
 赤葦のすべてをここに置いて。

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