ジャンル:ハピネスチャージプリキュア! お題:強い秋 制限時間:1時間 読者:301 人 文字数:2011字 お気に入り:0人

【オレめぐ】尊い願い17

ヒトならざるオレスキーと、何ら変哲のない人のめぐみ。その⑰



在り来りな言葉でそれを運命と呼ぶ。

触れた箇所を黒い指先が撫で、緩慢な動きで目の前にいる娘を見下ろせば勝ち気に胸を張っていた。
「きさ、きさきさきさ貴様ァア!」
回転速度の上がる思考回路。沸き立つ激情に任せめぐみの華奢な肩を強く握り締めた。
「一体何をしでかしたのか分かっているのかあ!!」
「うん」
緊張感の無い一言が再び唇を塞ぎ離れてる際、鼻先を作為的にオレスキーの鼻先に押し当てる。
ちょんっと触れ合い笑うめぐみ。
猫同士の挨拶だよと軽いノリで言うのがオレスキーの怒りを爆発させた。唾が飛ぶ距離で憤怒し咆哮す。
「全然分かってはいないではないかあ!?」
「分かってるよ」
「いいや分かってない!どうせ後から≪ちょっとした悪ふざけでした≫って言うに決まっている!!」
腕を組み顔を思いっ切り逸らす。これ以上顔を合わせたくないと云わんばかり。
もし、此れ以上顔を見てしまったら、温もりとやわらかさを感じてしまったら、幻影みたいに手を伸ばしてしまう。そうオレスキーが危惧しているにも関わらず、めぐみの顔付きは穏やかなままだ。
頑なに視線を合せず、堅く腕を組む黒い手に自身の手を添える。
やっと、目を合せてくれた赤い瞳に桜色が咲き誇り言葉を紡ぐ。




少し前までいたのにもう懐かしさを感じる城内。
決まった席に着いためぐみは向い側に腰を下ろすオレスキーを見て一つ咳払いをした。
「じゃあ、ちゃんと今度は最後まで聞いてよね」
何てことない。先程の真意を知りたくば話を聞いて欲しい。ただそれだけだった。
賭け事に近かった願いが現実のものとなる。めぐみは内心ハラハラドキドキしていたが、それ以上にオレスキーの動悸は凄まじかった。抱き抱え跳んでいる時、相手に聞えてしまうではないかと懸念するぐらい鳴り響く鼓動。不幸中の幸いとして久方ぶりの流れる光景にめぐみが浸っていたお陰で特に問われやしなかった。
注意散漫なのを指摘されオレスキーの意識がめぐみに戻される。それを確認してから自身の胸に手を添え、息でもするような自然な声色でめぐみの舌に想いが乗せられる。
「わたし、オレスキーのこと好きになっちゃったみたい」
時間差ではにかみ笑い、そこからつらつら其処に至るまでの経緯を語り始めたものだからオレスキーの頭の中は真っ白になった。

初めの印象はとても自分大好きの周囲を下に見ている性格の持ち主なのだと思い
一緒にいる時間が長くなるに連れ分かり難い親切心にが見えてきて
多寡だが一瞬だけ垣間見た物悲しい眼差しに惹かれ
もっと知りたい もっと分かりたい
そんな想いが心に産れた

「もちろんさ、わたしだって本当はもっと前に言いたかったのに――。オレスキーがあの時いじわるしてきちんと言わせてくれなかったから随分遅れちゃった」
舌を出しおどけるめぐみであったが、テーブルに置かれた黒い拳がわなわな震え出した時点で舌を引込めた。
「もしかして、また迷惑掛けちゃったってやつ…?」
親に叱られた時のように肩を竦め上目使いで向い席を見遣る。
不安に揺れる大きな目。それを一瞥してからオレスキーは大きく長い溜息を吐き、どっかり背凭れに身を預けずり落ちた。
「オレ様が今日までしてきた苦労とは何だったのだ?杞憂にも程がある」
軍帽のつばがいい塩梅に目元を隠し顔色が窺えない。
そんな中、場違いにも程がある声が張り上げられる。
「腹が減ったぞ!」
「うえ?」
「腹が減ったと言っている!」
「え?あ、じゃあちょっとご飯作ってくるね」
急かされ席を立たされる形になっためぐみが駆け足で台所に向い駆けていった。
そして、着くなりめぐみも声を張り上げるのだった。
「ちょっとオレスキー!台所ちゃんと片付けてないでしょー!?あっちもこっちもごちゃごちゃー!!」
「うるさい!とっとと片付けて飯を作らんかあ!」
遠くから「後で覚えておいてよぉ!」なんて不満たっぷりの声を聞いているオレスキーは己自身の顔を両手で覆い俯いた。
隠しきれていない耳に至っては蒸気が上がっている。

「馬鹿かあいつは…馬鹿か…」

目が口が頬が緩むのを抑え切れない。
諦めていた想いが積み上げられた壁を超え溢れ返る。涙に似た込み上がる気持ちを如何表していいか分からない。
呼んで返って来なかった声が帰ってきた。それだけで適当に理由をこじつけた空腹が現実のものとなってオレスキーの腹の虫を鳴らす。
腹が鳴っては何とやら。馬鹿正直に訴える空腹を擦り天井を仰ぐ。
「久しぶりのまともな飯だ」
美味しいものを誰かと食べればより美味しく。それが傍にいても良いと思うものなら尚の事。
今度は無期限で居付くという根拠も確証も無い考えが頭の中を埋め尽くしてはオレスキーの顔に上機嫌で傍から見れば悪顔でしか無い笑みを作るのであった。

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