ジャンル:青の祓魔師 お題:初めてのロボット 制限時間:30分 読者:583 人 文字数:1813字 お気に入り:2人

愛読書は「ドラえもん」ですから


 奥村雪男は無駄が嫌いな男だった。
 無駄な言動はするべきではないと思っており、無駄な時間は過ごしたくない。無駄な出費ももちろん控えるべきだと思っている。
 十五歳にしてどうしてそこまで達観しているんだ、と周囲のものたちは思っているようだったが、実はそうでもないことを彼の双子の兄、奥村燐は知っていた。
 雪男くんちょっと、といつにない声音で弟を手招いて呼び寄せる。何、と怪訝そうな顔をしながらもひょこひょこと寄ってくるのだから、こいつ俺のこと好きすぎるよな、と燐はいつも思っていた。口に出して言えばもちろん全力で否定されることは分かっているのだが、それでもここまでお兄ちゃんっ子でありながら、それを認めないというのもどうだろう。ちなみに燐の方は自覚しているし認めてもいる、たとえ自分よりも身長が高くなってしまっていても、身体つきがしっかりしていたとしても、兄に罵声を浴びせて課題に取り組むよう強制してきても、食事の支度をまるで手伝わない亭主関白気味であっても、二丁拳銃をガンガンぶっ放すようになっていても、ホクロでも、メガネでも、弟は可愛い。これ基本。ブラコン上等。
 どうしたの兄さん、と首を傾げて見下ろしてくる弟はやっぱり可愛い。
 可愛いけれど、だからといってすべてを許容できるかと言われたらまた別問題なのである。
 ため息をつきたいのを堪えて「これ、なに?」と床を指さして問いかけた。
 こてん、と首を反対側に倒し、「知らないの?」と雪男は言う。そのあざとい仕草を燐以外の前でやっていたりもするのだろうか。それはとても腹立たしいことだ。雪男の可愛さは燐だけが知っていればいいことなのだ。両手を伸ばして弟の頭の角度を戻してやりながら、「一応知ってはいる」と答える。
 自分でもあまり頭の良いほうだとは思っていないが、さすがにこれが何であるかくらいは知っているのだ。ただ尋ねたいのはそこではない。それが何かという正体を知りたいのではなく、どうしてここにあるのか、ということが知りたいのだ。

「何でって、もちろん買ったからだよ」

 購入してもいないものが手元にあることはない。一般常識に照らし合わせればそれくらいは分かるだろう。もちろんわかる。そうだ、雪男の言う通り、買ったものでなければここにこれがあるはずもない。
 尋ね方をまた間違えた、どうしてここにあるのか、ではなく、どうしてこれを買ったのか、と聞かなければいけなかった。
 燐が知りたかったのはその点だ。
 けれど弟はきょとんとしたような顔のまま、「どうしてって」と折角燐が元に戻してやった首をまた傾ける。

「掃除、してもらおうと思って」
 だって、掃除ロボットだもん。

 兄弟の足元では、有名な某円形掃除ロボットが、でこぼことした木の床の上を、非常に不愉快そうにぐるぐると巡り回っていた。クロが敵だと認識しているようで、先ほどからずっと毛を逆立てて威嚇している。
 指摘したい点はいくつもある。
 ふたりと一匹だけしか住んでいない狭い空間に、わざわざ自動式の掃除機が必要なのかだとか。
 こんなにも隙間だらけの木の床の上で稼働させても大丈夫なものなのかとか。
 猫又のいる部屋だと危ないんじゃないだろうかとか。
 うっかり部屋のドアを開けてしまった場合、寮の中で迷子になるのではないだろうかとか。
 うぃんうぃんと音をたてて走る掃除ロボットを探して寮の中を走り回る、だなんてことがそう遠くない未来に訪れそうな気がして仕方がない。
 今度は我慢することなく、はぁああ、と大きくため息をついた燐を見おろし、「掃除、楽になるよ?」と雪男はまた首を逆方向に傾けた。(おそらくは)燐を想っての言葉に、「どう考えても無駄遣いでしかない」という感想は呑みこんで胃液で溶かしておくしかなさそうだ。

 周囲のひとたちには大人びていると思われているらしい燐の双子の弟。
 無駄が嫌いで、無駄遣いだなんてもってのほかだ、と常日頃口にしているにも関わらず、こんなにも高価なもの(だったはずだ、燐が知る限りでは)をぽんと買ってきたりする。彼にとってこの出費は決して無駄なものではない。
 「家事が楽になる」という言葉も嘘ではないのだろう。
 けれど燐は知っている。
 双子の弟が、十五歳という年齢の少年らしく、単純に「ロボット」という言葉の響きだけでこれを買ったことを。

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