ジャンル:遊戯王ARC-V お題:俺の流刑地 制限時間:15分 読者:483 人 文字数:1306字 お気に入り:0人

君の特別をください。

「あんたが何を考えてるのかは分からないけど、異次元に行くんでしょ?」
「そうだ」
「あんたも一緒に行くの?」
「ああ」
「一緒に戦う?」
「そうなる」
「そっか」
 端末を操作している赤馬零児を、ソファーに腰掛けた沢渡は頬杖を付いて眺めている。やわらかなソファーの背もたれに膝立ちで寄りかかっているので、ソファーが変形してしまいそうだった。
「ランサーズって、俺だけじゃなかったんだ」
「君だけかと思ったのか?」
「いいや、敗者復活戦って言われた時点で大勢いるんだろうなーって」
「そうか」
「でも、社長の特別になれたみたいで嬉しいよ」
 それが例え、利用されているとしても。沢渡はそうは続けなかったが、赤馬には容易に読み取れた。ランサーズの実態を知り、そして負ければカードに封印されると分かっていてなお、彼は敗者復活戦と銘打たれた人数合わせの選抜を受けるという。
「本来なら、君は榊遊矢に負けた時点で選抜から外れている」
「まさか、今からやめてもいいとか言わないよね?」
「………」
「言っとくけど、俺ちゃんと自分の意志でランサーズに入るって決めたからね。あんたのための槍に、俺はなってやるって言ってんだ」
「……それは心強いな」
「ま、あんたくらい強ければ、本当はそんなにたくさん仲間なんていらないんだろうけどさ」
 そう言って、ソファーに座りなおした沢渡はお茶菓子として出されたクッキーを一枚口に放り込む。赤馬の視線はあくまで端末に向かったままだ。一度も目も合わせることのない赤馬のその態度に、沢渡は不思議と怒りを覚えなかった。無視されているとも思わなかったし、話半分に聞いているとも思わなかった。会話はきちんと成立していたし、何より、彼はレオコーポレーションの社長としての業務がある。忙しいのだ。それを沢渡はきちんと弁えていた。
「ね、他の奴らにはカードあげたの?」
「カード?」
「ペンデュラムカード。ほら、街にばらまいてたやつ」
「あれは汎用カードだ。今回の大会で実戦向きに使えることが立証された。今後はLDSの授業にペンデュラムコースを盛り込む際の試用カードとして配布しようと思う」
「じゃあ、特別じゃないんだ?」
「……特別?」
 そこで初めて、赤馬は顔を上げて沢渡を見た。嬉しそうな笑顔を浮かべた沢渡は、仕事中の赤馬のデスクに歩み寄ってデッキを示して見せた。そう、それは敗者復活を受けると言った沢渡に渡した新しいペンデュラムカードの入ったデッキだ。
「じゃあ、俺だけがこんなにたくさん、デッキを使わせてもらってるってことだよな?」
「………」
 榊遊矢とのデュエルで使用したレオコーポレーション製ペンデュラムカードお披露目のためのデッキ、そしてこのデッキ。二つとも、赤馬が沢渡へと手渡したデッキだ。そして、渡されたばかりのそのデッキを、沢渡は見事に使いこなしてみせた。
「俺だけが、あんたの特別なんだって思っていいよね?」
「……好きにするといい」
「好きにするよ」
 機嫌良く笑った沢渡に、赤馬はあくまで冷静な視線を返す。特別、そんな単語で君のモチベーションが上がるのなら、と言わんばかりに。

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