ジャンル:悪魔のリドル お題:昨日食べたゲーム 必須要素:ロードローラー 制限時間:1時間 読者:713 人 文字数:2371字 お気に入り:0人

プランセス・ドゥ・マヌカン


【 #悪魔のリドル版深夜の真剣SS書き60分一本勝負 】

【お題:人形】



幼い頃、ディスプレイ越しに見た“女王”の姿は、決まって傲慢なものだった。
白雪姫を始めとする少女が夢見るストーリーでは、いつも正義はプリンセスにあり、女王は倒されるべき悪だった。
それでも英純恋子は、常に女王に憧れ続けた。

大きくなり、フィクション世界における『お約束』として女王がそういう扱いを受けるものだと知った。
世間一般に言う『嫌なヤツ』として描かれているということも。
それでもなお、英純恋子は嬢王蜂に憧れる。

「素敵な夜」

窓の桟へと手を添えて、窓ガラス越しに月を見上げる。
まあるく黄色いお月様が、高々と上っていた。

「そうは思いません?」

妖艶に微笑みながら、純恋子が振り返る。
視線の先には、女王には不釣り合いな王子様が傅いている。
本来プリンセスを守るべく女王に剣を向ける役割だというのに。

「……何も言ってはくださらないのね」

ふふっと思わず笑みが漏れる。
それは自嘲からくるものだったが、純恋子の高いプライドは、心底楽しげに見えるよう取り繕う。
それからゆっくりと歩み寄り、王子様の髪をそっと撫で上げた。

「明日、予告票を出そうと思っていますの」

小さい頃から、女王の姿に憧れた。
どれだけ子供に憎まれようと、どれだけ世界が敵に回ろうと、自分の正しさを疑わず真っ直ぐに道を往く姿。
最期の最期まで信念を貫く悪であったその背中に、ずっと憧れていた。

「女王は、一人で十分」

自分もそうなりたかった。
たくさんの不幸が降り注いでくる人生において、物語の世界に君臨する女王のように、強い信念を支えにひたすら前へと突き進みたかった。
恐怖に挫け、自分を殺してしまわぬように。
ただただ、誰よりも強い女王になりたいと願っていた。

「女王は、強くなくてはならない」

憧れていた女王は、物語の最後に敗れ去ってしまう。
そこにだけは、憧れるつもりなどなかった。
物語では、往々にして、女王を倒したプリンセスが新たな女王となるのだ。
自分は、他のプリンセスや女王を滅ぼし、女王の座を守りぬく。
勝ち続けていくことだけが、女王でいられる条件なのだ。

「ですから――お遊びは、もうこれまで」

名残惜しむように、そっと王子の頬へと触れる。
冷たい、無機質の肌触り。
番場真夜を模した人形は、本物のような外見で、それでも触れただけで分かる程に別物だった。
体は勿論、心だって此処にはない。

「王子様とは、結ばれない」

ここにいるのは、王子様なんかではない。
ただただ糸で繰ることが出来る、都合のいい木偶人形だけ。

「そんなこと、女王になると決めた時点で覚悟していたことですのに」

女王とは、そういうものだ。
傍には命令に従うだけの木偶達しか存在しない。
あとは全部、敵なのだ。
踏み潰し、後には何も残さぬほど叩きのめさねばならない相手。
腹心だって一人いれば多い方で、そのほとんどは利害関係の一致で傍にいるに過ぎない。

それが、女王というものなのだ。
その孤独は、女王の宿命なのだ。
強くあるため、最強であるためには、避けられない道なのだ。

「わたくしには、女王の座しかないのだから」

流水のように、一見穏やかでありながらも、近づく者は押し流して。
炎のように、自分に触れようとする者を傷つけて。
ロードローラーのように、通った道には何も残さない。

そうでなくては、ダメなのだ。
今まで女王として生きてきた意味がなくなってしまう。
もう、女王であり続けることくらいしか、純恋子の生きる意味はないのだ。

「だから――さようなら、素敵な素敵な王子様」

そうやって、全てを噛み砕いてきた。
敵対していた人間は勿論、自分を慕ってきた稀有な人々も。

そうやって、全てを飲み込んできた。
感情も、痛みも、全て。

そうやって、何もかもを食べ尽くして。
決して楽じゃなかったのに、ペロリと平らげているかのように振る舞って。
また今日も、他者の想いも自身の気持ちも全て飲み込んでいく。

「夢の時間は、もうおしまい」

カチリ。
長針と短針とが重なって、日付が変更される。
そして魔法は解ける。
純恋子が見ていた都合のいい夢幻も。
他者の力に助けられているプリンセスを守る魔法も。
全部、もう、解けたのだ。

「わたくしは、往きますわ」

最後に、王子様を抱きしめたかった。
それでもグッと堪えたのは、王子様が守るべき人は他にいると知っていたから。
この王子が守るプリンセスのことは、純恋子も好いていたから。
だから、きっと納得のいくエンディングを迎えているだろう王子様に、触れていいとは思わなかった。

「楽しいゲームはもうおしまい」

指をパチンと鳴らす。
部下達が部屋の中へとあがりこみ、王子を模した人形を運び出す。
そして、同じくクラスメートを模した人形達も、運びだされていった。

「ここからは、女王の座を賭けた蜂同士の殺し合い」

呑気に学生ごっこを楽しみ、クラスメートと戯れる。
そんな、寄り道のようなお遊びは、もうおしまい。

「さようなら、ミョウジョウ学園10年黒組」

クラスメートの人形を作った。
もう一匹の女王蜂への嫌がらせという大義名分で。

必要などなかっただろうに。
無駄に手間暇をかけて。

女王は、人形を作り、囲まれた。
ただの木偶だと分かっていたのに。
無意味な行為だと分かっていたのに。

「もう、思い出すこともありませんわ」

だけど――その感情も、飲み干していく。
昨日王子と戯れた遊びと一緒に。
全てを噛み砕き、飲み込んで、振り返らずに進んでいく。

愛していたという、かんじょう

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