ジャンル:スラムダンク お題:1000の妄想 制限時間:1時間 読者:993 人 文字数:2295字 お気に入り:0人

【洋三】甘やかされて溶かされる①



「じゃあ、泊まってく?」


その水戸の誘い文句は、どんな言葉よりも魅力的だった。
映画とかドラマとかで俳優が言う甘い台詞よりも甘くて、トキメイて、胸がいっぱいいっぱいになった。
実際、上手く返事が出来なかったと思う。
息が詰まって無理矢理吐きだしたような、間抜けな声だった気がする。
それくらい、オレにとってその誘いは衝撃的だったんだ。

何度も何度も頷いたオレの手を引いて、水戸はじゃあ決定だねと言った。
その笑顔も物凄く格好良くて、繋いだ手はひんやりしていた。
でも逆にオレの手は燃えるように熱かったハズだ。
手なんて初めて繋いだから、そのことで頭がいっぱいであんまり覚えてないけど。





*******




「どーぞ」

「お、お邪魔しま、す…」


こじんまりとしたアパートの一階。
奥から三番目の、108号室と書かれた扉が、水戸の住んでいる部屋だった。
年数を感じさせる見た目とは裏腹に、中は意外と綺麗で新しめだ。
もしかしたら内装をリフォームしているのかもしれない。
一人暮らしをしている水戸の部屋は、男にしては綺麗に片付いている。
というか、物がほとんど無い。
生活感が感じられない部屋は、水戸の性格を表していた。

辺りをグルリと見渡し、鼻から息を吸い込む。
水戸の匂いが肺いっぱいに入ってきた。
何回かその動作を繰り返すと、恥ずかしいから止めてくれる?と水戸に苦笑いされた。


「何もねーな、お前ん家」

「よく言われる」

「ゲームとかしねーの?」

「するように見える?」


確かに見えない。
水戸がゲームをしている姿なんて、想像出来ないな。
喧嘩とバイトと原チャリ運転してる姿と…、水戸をイメージさせるものなんてそれくらいしか上げられない。
あぁ、あと桜木を冷やかしてるのもよく見るな。

そう考えてみると、水戸が生活している姿はあんまり想像出来ない。
一人暮らしってことは、洗濯も掃除も料理も全部自分でするんだよな?
何だか物凄くミスマッチな気がする…
今日はもしかしたら、滅多に見られない水戸の貴重な姿が見れるのかもしれない。


「先風呂入ってきなよ。オレ、テキトーに飯作ってるから」

「飯作れるのか?」

「そりゃ、自分でやんなきゃ誰も作ってくれないからね」

「ふーん」

「何ニマニマしてるの?」


そう指摘され、慌てて口元を引き締める。
でもすぐに崩れてしまった。
しょうがないじゃないか。
水戸の手料理を初めて食えるんだ。
好きなヤツの手料理が食えるなんて、誰だって嬉しいだろうが。


「ほら、入っといで。着替えも用意しとくから」

「お前の?」

「まさか。花道用なら、ちょっとデカイかもしれねーけど入るだろ?」

「………」


何だよ、桜木のかよ。
そもそも何で桜木用の着替えを常備しているんだ。
よく泊まりに来るからか、そうなのか!
仲が良いのは結構だが、オレのことも桜木くらい大切にして欲しい。
オレは水戸の部屋に入るのも、手料理を食うのも、水戸の生活感を味わえるのも、全部初めてなのに。
恐らく桜木は、それらを当たり前のように見てきてるのだろう。
オレみたいにいちいち感動しないし、貴重なシーンだとこの目に焼き付けることもしない。

桜木とオレでは、水戸と共有してきた時間の長さが圧倒的に違うのだ。


「なーに考えてるの?」

「……別に、」

「何でさっきまで上機嫌だったのに、急に不機嫌になるかなぁ?」


水戸がわざとらしくお茶らけながら、オレの顔を覗きこんでくる。
オレは顔を逸らし、視界から水戸を追い払った。
機嫌が急降下した理由を、水戸が知らないハズがない。
この男は妙に勘が働くし、頭の回転も速い。
なのに、何もわからない振りをすることがよくある。
全てお見通しの上で、何も知らない振りをするのが、水戸なのだ。
オレは水戸のことが好きだけど、好きで好きで堪らないけど、この点は水戸の惟一嫌いなところだった。


「腹減ったでしょ?風呂入って、一緒に飯食おう?」

「………」

「アイスも、一緒に食うんじゃねーの?」

「……うん、」

「ん、ね?風呂入ってさっぱりしといで?」


頭をグシャグシャに撫でられた。
水戸は時々オレを子ども扱いする。
普通だったら年下にガキ扱いされたら腹が立つものだが、何故か水戸の場合は別だった。
ガキに話しかけるみたいに優しく諭されたり、頭を撫でられるのが、実は心地よくて満更でもなくて、それどころか好きだったりする。

優しい笑顔で髪を撫でられ、オレの機嫌は少し上昇した。
案外オレも単純である。

桜木用の着替えを着るのは気に入らないが、水戸が甘やかしてくれることで譲歩することにした。




*********




「上がったぞ、」

「んー、って、三井さん、髪ちゃんと拭いた?」

「こんなんすぐ乾くだろ」

「ダーメ。こっちおいで?」


食卓のテーブルには美味そうなチャーハンとコンソメスープ、それにサラダまでもが並べられてる。
見ただけで、水戸が料理上手なのが分かった。
チャーハンの香ばしい匂いが、部屋中に充満している。
空腹を訴える腹を擦りながら、水戸の隣に腰を下ろした。


「風邪引いたらどうすんの」

「こんなんで引くほどヤワじゃねーよ」

「確かに、何とかは風邪引かないって言うけど」

「オイ、どういう意味だコラ」


タオルで優しく髪を拭かれる。
それが妙に心地良い。
水戸がしてくれることは大概何でも心地良いけれど。


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