ジャンル:ジョジョの奇妙な冒険 ストーン・オーシャン お題:商業的な星 制限時間:2時間 読者:479 人 文字数:3507字 お気に入り:0人

【プチ徐】あったかもしれない世界

無秩序に流れる人の波から一歩引いた建物の壁に背を預け、何となしに目の前を横切る人々を見送っては目当ての人物を探した。
待ち時間にシビアではない者同士、遅刻しただの遅刻するだの余り気にしない。しかし、後からやってきた待ち人が自分の横を通り過ぎ他の者達と合流するのを見るたび無意識に目で追った。

「(ん?…エルメェスか)」
突如着信を知らせるバイブ音。鞄から目当てのを取り出す。予想してた通りの名前がディスプレイに表示されている。
3コール以内に出ればのっけから情けないにしては音量の大きな謝罪が徐倫の耳を劈いた。
「ごっめぇえええん!じょりーん今日行けなくなっちまったあああ!」
咄嗟に耳元からスマートフォンを離すも、徐倫の顔を顰めやや離して電話口に耳を傾ける。
「一体如何したのよ。あと声もうちょっと小さくして、耳が痛くてしかたないわ」
「あっ悪ィ」
「で?今日のショッピングに来られない理由は何?」
「実は……、姉ちゃんにバレた…、何がバレたのかは聞かないでくれ……」
エルメェスの口から出た”姉ちゃん”という単語を聞いた途端、徐倫は掌で目元を覆い天を仰いだ。
「なにやってんのよ。つか何がバレたのよ?あんたがグロリアさんに隠してることって結構ヤバイのが多かった気が……」
偏に其の隠し事も元を辿ればエルメェスの姉であり母親代わりであるグロリアの為のこと。ただグロリア本人はエルメェスのやることを余り良しと思っていない。故にエルメェスが水面下で色々やっていたことが、いざグロリアにバレた際は凄まじい。徐倫も其の一部始終を見た事があるが、アレは本当にヤバかった。俗に云う怒らせてはならない部類の人間。
「結構も何もねぇよ。バレたら即アウト、…それだけだ」
「それで此れから耐久地獄のお説教タイムってわけね」
「嗚呼…。でも、その前に徐倫に今日行けなくなったってのを言わせてくれって頼みこんだ」
「成程。今回は許してあげる。けど、次行く時なんか奢りなさいよ?」
「勿論!次こそは絶対に!ほんとごめんっ!」
通話終了の画面越しに徐倫はエルメェスのこの後の事を想像しては静かに黙とうを捧げた。

「さてと」
今日の予定が無くなり一気にオフに。F.Fやアナスイ辺りに声を掛け暇か如何か聞くのもいい。だが、今日は何となく一人街中をぶらつきたい気分だったので徐倫は雑踏犇く人の波に溶け込んでいった。
一先ず流れに逆らわず今日行く予定だった店に向ってじりじり進みだす。反対方向から来る人を避け、スイスイ進んでいけば人混みの中――、異様に目に付くシルエットを捉えてしまった。咄嗟に関わってはならない、体が心が全力で拒否する人物から物理的に距離を取るべくわざと大回り且つ視線を合わせぬよう反対側に顔を背ける。
「(エルメェスとの約束がパーになったってのに、最ッ悪)」
たしか今日の朝見た占いは一位だったにも関わらず、いい事があるどころか悪い事が立て続けに来る現状に思わず舌打ちした。
あんな人混みの中を歩くのに慣れていないのがバレバレ、神のお告げを世間に広めるのを生業にしている色黒年上野郎など関わらないに限る。
たとえ、徐倫の存在に気付き人にぶつかりながらも距離を縮めてきていようとも。声を掛けてきても。肩を遠慮がちを通り越し掴み引き留めてこようともだ。
「人違いじゃないかしら」
「一度も此方を見ず人違いだと言うのは些か無理があるんじゃあないか」
「あたしが人違いって言ったら人違いなのよ」
肩を掴む腕を軽く振り解き歩く速度を上げ人の間を縫う様に抜けていってもよかった。
だが、此方の肩を掴み離さない相手に半ば不服であるも諦めた徐倫は顔だけ振り返る。
果たして其処にいたのは浮いているにも程がある聖職者が着る濃紺の祭服に身を包んだプッチ神父が若干焦慮していた。
横目で一瞥。徐倫にとっては会いたくもなければ関わりたくない人物との遭遇に気分は急降下の一途を辿る。しかし、関わってしまっては仕方ない。人混みから避けるため少し開けた場所へ先導をしつつ向う。
「で、あたしに何か用」
振り返り仁王立ちで後から来るプッチに向って言い放つ徐倫の言葉には不快感が隠さず溢れている。ワンテンポ遅れ人混みから出てきたプッチはそんな彼女の態度を気にせず、息を整えてから事の顛末を語った。





「(あー…。何であたしコイツの買い物に付き合ってんだろ…)」
何て事無い。プッチの妹であり、徐倫が通う学校の新米教師であるペルラのプレゼント選びに付き合ってくれとの事だった。プッチ曰く妹が好みそうな店に赴き良さそうなのを見繕うつもりだったらしいが、予想外の人の多さに戸惑い、しかもいざ来てみればどの店のがいいのか分からなくなったという。

「私に比べて君の方がまだペルラとの年も近い。女性目線でどれがいいのか一緒にプレゼントを選んで欲しい」

今月初め新しくやってきた教師ペルラは来た当初から生徒達のウケが良かった。美人で物腰柔らか、生徒との年も近いお陰で思春期の彼らが抱える苦悩にも真摯に接した。徐倫やエルメェス達の不真面目な態度も口うるさく言わず、どちらかといえば笑って注意する明るさと強かさがあった。とても良くしてくれている教師がよもや嫌悪感を抱く相手の妹と分かった時の徐倫達の衝撃は推して知るべし。
「(まあ、変なの贈られて先生が困るのもヤだし。それを阻止するんだと思えば多少マシか…)」
全ては慕う教師のため。自分を奮い立たせる徐倫が視界にプッチを入れた瞬間、頑張ろうとしていた思いが穴の開いた風船のように萎んでいった。頭を巡る意地悪な考え。変に高いブランドでも勧めて大金でも支払わせてやろうか――。
「(くっそ。そもそもコイツ金持ちじゃん)」
桁が大いに違うものだろうとも涼しげな顔でお買い上げするプッチの姿が脳裏を過る。もとい馬鹿みたいに値が張ったのを贈ればペルラの方が戸惑ってしまう。そんな本末転倒なことをしてはいけない。嫌な未来を消すように頭を振るい、自分自身も好きなブランド店の前で一息ついた。此処が駄目なら違う店に行くのを伝え、プッチから離れた場所で徐倫もペルラの事を思い描きながら贈るに相応しいのを別々に探す、筈だったが数分も経たぬ内にプッチが徐倫のやや後方に陣取った。
早々に探すのを諦めた神父に呆れを通り越し鉄拳を顔面に打ち込む衝動を抑え徐倫は端からペルラ先生のプレゼントを買いに来たのだと割り切ることにした。
アクセサリーなどの小物が品良く並ぶテーブルの上。頭に思い浮かぶペルラの姿に徐倫の目が横に泳ぎ、ある一点に止まった。長いなら髪止めという短絡で案パイな選択肢。実用的なら貰う相手も嬉しく使用頻度が高ければ贈った相手も嬉しくなる代物に思案気に俯いていた徐倫の顔が上がる。
「一応確認。ペルラ先生の好きな色って白?」
「嗚呼、白だが」
「じゃあ、これなんかどう?」
徐倫の手には一つのバレッタが乗せられていた。其れは乳発色の薔薇が幾つも掘られたものだった。豪勢な作りだが落ち着いた見た目をしており教師生活で身に付けても華美に感じられないので支障は無い。
自身の目でも見て見ろと云わんばかりに徐倫が半ば強引にプッチに持たせた。何も言わず白薔薇のバレッタを値踏みするプッチの面持ちは一切変わらない。可か不可かすらも分かり兼ねる。万が一否定された際の次の物を探すべく徐倫が視線を彼から再びアクセサリーが散りばめられたテーブルに落していれば聞き馴染みの無い幸福感漂う落ち着き払った声が鼓膜を震わせた。
盗み見たプッチは目を眇め手に持ったバレッタを大事そうに見下ろしている。
「付けなくとも分かる…、これはペルラに良く似合う…」
「あったりまえでしょ。このあたしが見繕ったんだから」
一人の世界に入り込むプッチの横で徐倫がシニカルに笑う。暫し、二人の視線が交錯するが徐倫の言葉に対してプッチは何も言わずバレッタを握り締め、
「会計を済ませてくる」
と、一言述べ踵を返すのだった。
思わず呆気に取られた徐倫の意識が戻ってくる頃にはいつもの調子に戻っており、会計を済ませたプッチに対し警戒心と嫌悪感を顕わに早口で用事は終わったのだから帰らせてもらうと吐き捨てその場にプッチをほったらかし何処かへ行ってしまった。
去り際に、
「なんだよ…、礼も何も言わねえとか……」
そこはかとなく寂しさを匂わす言葉を残して。



だが、徐倫は知らない。プッチの手に持つ袋は二つでないことを。
その徐倫の背を見詰める瞳が何か物言いたげだったのを。

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