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しあわせに愛欲を添えて【臨正】

「俺、あんたとやってから死ねたら幸せかもしれない」
「どうしたの、疲れてるの?」

 時々使うラブホテルでシーツに転がりながらつぶやいた言葉は、ぼんやりと空中に舞って、退屈な動作で臨也さんの耳元に入る。鼠色の言葉がまだ空気にまとわりついて、そんな言葉がまだそこにある。いつもみたいに抱かれたあとのぼんやりした頭は、彼への憎悪とか悲しみとか愛しさとかそういうぐちゃりとした感情を遠慮なく吐き出すものだから、この人もこの人で俺に対して困惑したり、気が狂ったの?なんて聞いてくることが多くて、その点について俺はまるで勝ち誇ったような気持になる。だからといって普段この人に全部負けているのかといえばそうでもないし、でもそういうときが多くて、おれは腹を立てながら投げ出した体をこの人に何度だって任せてしまうだけ。
 この人とセックスするのはもう生活の一部みたいで、違和感とか気持悪さもなかった。これは愛の一種かもしれないし、戯れだし、息をするようにセックスをしてこの人の一部を犯して自分をぐちゃぐちゃにする行為だ。美しい水音はシャワーだけだし、たまにシャワーでだってすることはある。質のいい部屋ならベッドは物音も立てず男二人分の体重を受け止めて、いい加減な会話を無視してるみたいだった。気持いいことも好きで、臨也さんのことも好きなんだから(そう、俺は今ちゃんと臨也さんが好きだということを認めているし、臨也さんだって満足しているのだから)、これはこれでいいのだ。好きだからといってこの人へのもやもやした感情が消えたわけではなく、でもそれは過去のことだとかじゃなくて、ふつうの人間が折原臨也に感じるようなものだ。

「だって、あんたはすぐ忘れるし、俺も死後の意識なんてわかんねーけど、あんたに最後にだかれて死ねたって記録はどこかに残るでしょう」
「それくらい俺のこと好きなの?」
「すきですよ、こうやってあんたのすきなときと、俺のすきなときにセックスしてもらえるんだもん」
「愛と性の奴隷みたい」
「俺、数年前からあんたの鳥かごに入る奴隷みたいなものでしょ」

 好きですよ、好きなんです。そういって素肌のままで、下着とズボンだけ履いている臨也さんに抱きついた。うすっぺらい胸とか腹の筋肉とか、女みてえな腰を堪能できるのは今俺だけなんだ。そう思うだけでおれは幸せだった。セックスをするたびにばかになっている気がする。でも今俺は臨也さんと一緒にいる唯一の人間で、そう思っていればこの世界は自分と折原臨也だけ、みたいになる。たとえこの人がしぬほど恨んでいる化け物がいようと、俺の知らないところで執着しているような人間が仮にいたとしても。快感でばかになった頭だから好きなこと思えて、後々泣くことになっても許せてしまう気がする。
 例えばこの人が今もナイフをズボンに入れていて、思いつきで俺の胸にそれを刺してしまうことがあっても、俺はそれを勇敢に受け止めて「俺の存在をちゃんと消してくださいね、そうしたらあんたは罪とかそういうのなくなるんでしょう」って笑えるくらいの。この人を嫌になったのが突然なのと同じくらいに、この人を赦してしまうのも突然だった。

「そういう暗いことじゃなくてさ、もっと明るいこと考えない?」
「あかるいこと?」
「このまま退屈にしろ、俺と正臣くんが仕事して、セックスして、また翌朝も君が朝ごはんを作ってくれる暮らしのこと」
「俺がご飯作るのは前提なんですね」
「そうだよ、俺いつ早起きで遅起きかわかんないもん」

 この人はいつまでおれが成長期だと思って、ご飯早くたくさん食べたいでしょ、なんて思ってるんだ?俺はもう19歳で、今日だってあんたの好きなレストランで夕ご飯をいっしょに食べたんだぜ。あんたの持ったワイングラスをちょっと舐めて「あともう少しですね」って笑ったんだ。うまくナイフとフォークを使って、皿をカチャカチャ音を鳴らさないようにラム肉を食べれるようにあんたから教わったんだ。俺はあんたの子供じゃなくて、あんたの恋人なんだ。
 俺が作る朝ごはんを一番喜んでくれるのはあんただってこと、俺の作るコーヒーを褒めてくれるのもあんたなこと、俺だけしか知らないんだ。どうでもいい優越感を背中に背負って、俺はいつも早起きしてご飯を炊いたり食パンを焼いたり卵焼きを作ったりするんだ。折原イザヤの生活感を俺だけが独り占めしていた。これだけは誰にも譲れなくて、コーヒーの淹れ方だって誰にも教えてやらない。だって教えてしまったら、誰かが毒入りコーヒーの美味しいのをつくって、この人を殺してしまう。もしそんなことがあったら、俺が代わりに飲んで死んでやらなきゃならない。自分が死ぬことより、臨也さんが死ぬことの方が、いやだ。臨也さんは俺の飾りじゃないし俺を生かす人でもないけれど(だって俺はこの人が大好きだけれど、俺は彼のそばにいなければ死ぬほど弱くはない、ただ今の一番が折原臨也なだけかもしれないんだ)、もし今この人が死んだら困るんだ。自分の中の幾つもの矛盾や理不尽なずるい考えは真っ黒なコーヒーで蒸らしてしまった。茶色の土の中に全部押し込んだ。

 もう数時間で朝日がのぼる。適当にシャワーを浴びて、またあの家へ帰って俺だけがしってる生活感のために朝ごはんを作るんだ。今日はあそこにのこっている食材とかパンを使って。最近のご飯目新しくないから、なんか調べなきゃな。臨也さんの首筋の匂いを嗅いで、やわらかいほかほかとした匂いに満足して目をぎゅっと瞑った。臨也さんはもう飽きたのかすでに眠っていて、寝息が聞こえる。どんどん俺だけが知っている折原臨也が増えて行く、そうやって思いこんで、ひとり幸せになっていくのだ。





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