ジャンル:ハイキュー!! 黒大 お題:くだらない裏切り 制限時間:1時間 読者:498 人 文字数:2561字 お気に入り:0人

R-18,砂糖菓子 ※未完

 だって、それが当たり前だと思っていたのだ。
「……は、あ……、っん……」
 容赦なく抉ってくるソレに身を捩って逃げようとするが、ぐいと腕を引っ張られてまた元の位置へと戻される。そのせいでまた深く抉られてしまって嬌声を上げた。戻されると分かっていて何故逃げようとしたんだろう。普段なら気持ち良すぎるからとか今日は気分がノらないからとか、理由らしい理由は述べられるのだけれど、今日ばかりは違った。
 容赦なくと言ったが、容赦ない攻め方ではない。嬌声と言ったが気持ち良い訳じゃない。
 無論普段はとても気持ち良い。ヨすぎて意識が吹っ飛ぶくらい。そういうことを言うのは恥ずかしくて敵わないけど、好きな奴とヤって気持ち良いのは普通のようでいて実は難しいことだ。だから、黒尾とシて気持ち良いのは本来幸福なことなのだ。
 幸福なこと、なのに。
 この行為が気持ち良いのだと俺に教え込んだのは紛れもなく黒尾だ。本来気持ち良い筈がないと思い込んでいる俺の体と心に、黒尾は時間をかけてじっくりと教え込んだ。こうすればこんな風に気持ち良い、ああすればあんな風に気持ち良い、それはおかしいことじゃない、そうさせた俺が悪いんだ。まるで教えた自分が罪人かのように悪いカオで笑って見せたが、俺だって気持ち良いと教えてもらって気持ち良いのだと理解して、それで良いからもっとくれと、それが良いからもっと欲しいと追い詰めたのだから、俺だって悪い。同じコトして二人とも悪いのなら、それは共犯と言う。
 共犯関係、なのになあ。
「んひ……っ?! あっ、あ、ぁが……!」
 グリグリと良いトコロを攻められて、押し出されるようにして声が漏れる。気持ち良いけど、気持ち良くなりきれない。心に大きなウロが出来たようだ。満たされない筈ないのに、いつもだったら幸せなのに、気持ち良いのに、今日はそれが出来なかった。
 座り込んで、後ろから突かれる体制。今日はずっと後ろ向きだ。顔が見えないままで良かったと思った。
 涙で視界が滲む。生理的な涙だけなら良かったのに、鼻がツーンとしてどそれだけじゃないことが嫌でも分かってしまう。俺はこんななのに、この行為に意味はあるのだろうか。
 黒尾がラストスパートをかけて、段々ヨくなってくるけれどもイききらないまま、互いに欲だけを吐き出して気持ち良かっただろうと体に言い聞かせる。これ以上はもう無理だった。
 ずるりと黒尾がナカから出ていく。今まで大きな質量を銜え込んでいたソコは何か物足りないと思った。大きなものを入れていたからだと分かっているけど、空っぽの心と相俟って、おかしな気分にさせられた。
 とても、満たされない。何が満たされないのか、俺には分からない。
 でも、これ以上黒尾と居るのは違うと理解していた。
 黒尾と正面から向き合った。俺は酷い顔をしていると自覚しているから、俯いたまま。黒尾の顔は見れなかった。
「……黒尾」
「別れたい?」
「え……」
「そんなカオ、してた」
 今まさに俺が言おうとした言葉が黒尾の口から出て驚いた。言おうとした言葉なのに、黒尾から与えられるとそうじゃないと何かが叫ぶ。その言葉は違うと思った。俺はそうしたいんじゃないのに、でも俺はそれを言おうとして、それで、
「好きだ、澤村。それじゃあダメかな」
 ダメじゃない。俺だってお前が好きなんだ。でもそれじゃあダメなんだ。それだけじゃ、ダメなんだ。
「黒尾」
 どうすればいいのか分からないとばかりに縋るような声が出る。自分から別れを切り出そうとした癖に、やっていいことじゃない。別れるべきだと思ったのに主導権を相手に握らせて、それじゃあ別れたくないって言ってるのと同じじゃないか。それを黒尾に言わせようとして、俺はつくづく卑怯な野郎だ。
 俯いていると、黒尾の手が視界に入ってきた。黒尾の右手の指が俺の右手の指に下から引っ掛けるようにして、指だけを黒尾は握り込んだ。上から包み込むように左手が添えられて、俺の左手は置き去りのまま。
「澤村」
 名前を呼ばれた。何かを言おうとしてる時の声音だ。ただ名前を呼んだだけじゃないのは分かった。手を取られて、黒尾の熱が伝わって俺の熱も奪われて、手が同化したような感覚がした。黒尾はゆっくりと呼吸して、手から何かを伝えようとしているのだろうか、恐らくはほんの十数秒程度だったろうけど、俺は長いことそうしているような錯覚に陥った。
 黒尾が手を放して、俺の肩にそっと手を掛けた。少し汗ばんでいて、温かかった。少し腕が曲がるくらいの距離、顔を上げると黒尾は俯いていた。俯いたまま、そしてこう言ったのだ。
「俺達の命に意味なんてないよ」
 だって、それが当たり前だと思っていたのだ。
 当然のように優しい両親に育てられ、当然のように祖父母が俺を可愛がり、親戚一同に好かれて健やかに育った。素行も良く、礼儀正しく、お前は良い子だねえと言われ続け、そして当然のように未来を期待された。
 一流になれだなんて言わない。ただ元気でいればいい。病気ひとつ寄せ付けないように健康で、そして好きな人と一緒になって幸せになって、子供を見せてちょうだいと。
 親戚の集まりの度に冷やかしを受けるのは当然だった。まだイイ人はいないのかいとからかわれ、バレーと結婚しないように可愛い子を捕まえるんだよだなんて言われて。それが重荷になる日が来るだなんて思っても見なかった。
 当たり前だった。そう教えられて生きてきた。
 そうじゃないとダメだと強迫されているように感じ始めたのはいつの日だろうか。
 黒尾は俺の肩に頭を乗せて、ぎゅっと俺を抱きしめた。黒尾の頭の重さが肩に掛かって、黒尾が近くにいるのだという実感。こんな安心感、俺は知らない。実家にいる時のそれでも、友達と遊んでる時のそれでもない感覚。
 俺たちの命に意味なんてない。
 意味なんてないのなら、もう何をしたって良いじゃないか。生まれたことに意味もなく、死ぬことにも意味がないのなら。
 すっと肩の荷が下りたような気がした。
 命に意味がないのなら、生きることに意味を見出せばいいのだ。
「黒尾、ありがとう」
 一緒に生きよう。意味は無いのだから。
 







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