ジャンル:テニスの王子様 お題:儚い自動車 制限時間:1時間 読者:376 人 文字数:1989字 お気に入り:0人

夢現。

財日:
夢だと思った。
俺は学ランを着ていて、バスに乗っている。しかも、何故だか隣には、財前がいた。
我ながら都合がいい。


俺は財前が好きだ。だからきっとこの夢はそのせいで見ているんだろう。
同じ部屋にいるのに思いを伝えられない息苦しさを少しでも軽減させようと、脳が勝手に作った仮想世界に違いない。
そんな事に思考を巡らせていると、隣にいた財前はおもむろにこちらを向いた。
「日吉、今の話聞いとった?」
「え?」
...話などしていただろうか。
答えることが出来ず俯いていると、財前は珍しくケタケタと笑い始める。何がそんなにおかしいのだ。不快感を顕にすると頭を撫でられた。
「ごめん、冗談や。そんな顔せんとって。なんや、えらい考えこんどるから何考えてんのかなーって思って、ちょーっとからかっただけやんか。」
「別に。」
そう言うと財前は「拗ねんとって。」と言って俺を抱き寄せた。やはり都合のいい夢だ。財前はこんなふうに俺に話しかけないし、抱き寄せるなど絶対にしない。
「日吉がこうやって、四天宝寺に来て、俺と一緒におってくれて嬉しいんやで?」
そこでようやく、そういえば財前が合流した時に学ランを着ていたことを思い出した。なるほど、これは四天宝寺のものなのか。
財前は満面の笑みを浮かべ、俺を見つめてくる。
「やって、俺。ずーっと日吉の事好きやってん。なあ、日吉は?」
思わず笑ってしまう。本当に都合がいい。
どうせ夢なのだ。目が覚めればこの記憶も儚く散ってしまうのだろう。
ならば。
「ああ、財前。俺も好きだ。」
財前は少し驚いて、俺を見て満足そうに笑った。そして、少しずつ顔が近づいて、キスをした。
触れるだけの優しい口付けなのに、心臓が煩くてたまらない。
ゆっくり離れる唇が恋しい。
「なあ、もっと。」
「ん。」
今度は更に深く口付けられる。
その感触がやけにリアルで、生々しくて、現実なのではないかと錯覚すらさせる。
うっとりと目を瞑った瞬間----




バンッ

大きな音と共に目を開けると何故か視界いっぱいに財前がいる。こころなしか、顔は赤く染まっている気がする。
「あれ、財前なにしてんの?」
「ブログに使おう思て、日吉の寝顔撮っとってん。」
「ふーん、」
「ちゅーかお前のせいで日吉起きてもうたやん。」
「え?まじ!?」
微睡む思考の中で財前と切原の会話が聞こえてくる。どうやら俺は眠っていたらしい。
「財前、今何時だ。」
「えっ?」
「わー!?ホントだ、日吉くんごめん!」
「切原、叫ぶな。うるさい。」
「あっうん。」
どうやら真面目に反省したらしい切原が自分のベットに戻っていった。しかし、財前は一向に動かない。視線で、なんだと問いかけると財前はようやく口を開いた。
「袖、離してくれへん?」
「え?」
財前の腕に視線を落とすと確かに俺は腕をつかんでいる。
「わ、悪い。」
慌てて離すと財前はボソリと「別に謝らんでええのに。」と言った気がした。
「まあええわ。まだ9時前や。自分、寝るん早すぎやろ。」
「だな。今日は疲れてたみたいだ。」
「そうか。...あのさ、今からちょっとええか?」
「ああ。」
ベッドから降りて、連れられるがままに行くと、人気のない外へ出た。秋の山は肌寒く長袖を持ってくるべきだった。
「あのさ、日吉なんか夢みとった?」
「分からない。見ていた気はするが、」
「そうか。」
「何なんだよ。」
「いや、その寝言言っとった気ぃして。」
「どんな?」
そう聞くと財前はバツの悪そうな顔をする。それから、しばらくして覚悟を決めたのか一度頷いてからこちらを向いた。
「あれが気のせい、ちゃうと思って言うわ。聞いてくれるか?」
「ああ、何だ?」
「俺、日吉の事好きやねんけど、付き合ってくれへん?」
瞬間、時間が止まった気がした。
何を言われているのかが分からなかった。
「日吉?」
珍しく不安そうな顔をする財前を見て、ようやく理解した。
財前に告白されたのか?
「...ああ、俺も好きだ。」
財前はあからさまにホッとした様子で。
顔が熱くてまともに顔が見られない。
すると、恐る恐る抱きしめられる。
驚いて顔をあげると財前も顔が赤い。
「ざい、」
「よかった。アレは間違いやなかったんやな。」
「え?」
「寝言で、『財前好きだ』って言っとったから。」
そう言われた瞬間夢を思い出した。そういえばをそんなことも言った。まずい、多分今の俺はすごく顔が赤いだろう。
「なあ夢、ほんまに覚えてへんの?」
「えっ、」
「あっ。思い出したん?」
「ちが、」
「めっちゃ顔赤いやん。日吉かわええな。」
「うるさい。」
あまりの恥ずかしさに俺は走って逃げ出した。




Fin.

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