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愛なる

タツヤはどこでも人気者になる。わかりにくく、じわじわと人気が出る。タツヤは一瞬でわかるような、目だったところは無い。だから一回くらいあっただけじゃ、その凄さが分からない。でも一回会うとまた会いたくなる。会おうと言われれば、たぶん、10人中10人がOKを出すだろう。タツヤはそういう奴だ。
タツヤは強情だった。でも、最初のうちは、ちっともそんな素振りを見せない。最初はいい奴なのだ。いや、別に、時間がたつと嫌なやつになるわけじゃない。いい奴なんだけど、境界線をきっちり引く。そこから先はだめ。そこまでならいい。拒否するわけじゃない、お互いの存在を認めた上で、彼はその線引きをする。――かっこいいと思う。俺は感情的になりやすいから、その線引き部分が下手なのだと思う。それがタイガなんだろ、とタツヤは笑い、でも制御しなきゃいけないよな、試合では、と付け足す。
感情的になるのは、決まって上手く行っていない時。感情は魔法じゃないけれど、自分を奮い立たせるトリガーになる。俺の場合、それがゾーンに入るきっかけになったりする。理性的でありながらゾーンに入るなんて芸当、できるのは青峰くらいじゃないだろうか。あと、赤司か。あいつら、ほんとバケモンだよな……。
タツヤといえば、ちょっと機嫌が良くなると、鼻歌を歌い出す。そして手近にあったものをポンポンと放り始める。ミドルの間に身につけたその技を、生まれた時から身につけていたように披露する。これもリズムだから、とタツヤは言う。ダンスを踊っているようなものだよ、こいつらで、と手にしているリンゴを不思議なリズムで放る。俺はバスケは出来ても、そういった、タイミングを計ったり、細かい動きをするのは苦手だった。楽器の演奏もまず無理だ。
大学に入って、タツヤの部屋によく行くようになって、タツヤの部屋は俺の一部のようになっていた。タツヤは誰が部屋にいてもマイペースで(さすがに女子がいる場合はとても気を遣うが)、それは俺がいても変わらなかった。本を読んだり、家具のレイアウトを変更したり、洗濯をしたり、昼寝をしたりする。約束があれば、ストリートバスケをしに行く。
俺はタツヤにそれ以上を求めていなかった。絶交された時には絶対に手に入らないと思っていた兄弟の地位をこうして取り戻せて、満足していた。満足していたのだ。
朝、目が覚めた時、時計はまだ5時前だった。タツヤはソファで眠っており、自分は床で眠っていた。送別会から帰ってきて、うとうとしていたら、そのまま寝ていたのだ。
出発の日だった。タツヤとまた、離れる。自然と彼の額に口付けていた。
タツヤ
声に出さず、彼の名を呼んだ。何度も、何度も呼んだ。

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