ジャンル:刀剣乱舞 刀さに お題:暗い自動車 必須要素:バツ印 制限時間:1時間 読者:315 人 文字数:1558字 お気に入り:0人

選外・瑕隠しのお面

日頃狐の面をつけている大将だが、お面の下の顔には傷があると知ったのは、そんなに前の事じゃなかった。

一番隊に6口の刀を揃えてのち、時間素行軍との戦はどんどん激しくなる。
その中でも主は、女だてらに気丈に戦陣を張り、自分を慕う刀たちを率いて戦を繰り返す。

戊辰戦争をなぞって、函館、会津、宇都宮、鳥羽。
天下泰平の世を裏から護る様に、鳥羽、江戸、再びの江戸、大坂。
力ある者たちが覇を競い知恵を比べあう世の関ヶ原、本能寺、越前、安土。
乱世の梟雄たちが闊歩する中を、長篠、三方が原、桶狭間、椿寺。

そうして進むべき道をいつも示している大将は、顕現された時からずっと、平常では狐の面をしたまま。
俺っちよりも古株の打刀も、いつでも顔を布で隠そうと苦心している。
己の外見について含む処があるという点でもよく似た主従は、ああ見えて世話好きな番頭と、己を卑下する事に余念のない点でも似通っていた。

「ふう……練度上げも中々進んだよねぇ……」
「そうだなァ、大将。物吉貞宗も特がついた。長曾祢と明石が来ても、そう時をおかずに練度上昇に取り掛かれると思うぜ?」
「結構時間もかかったからねえ、物吉くんも苦労した分だけ、可愛がって愛でて伸ばしたい」
「ああ、そうだな大将。新参を鍛えるのは俺っちたちの楽しみでもある」
口元が覗く半身の狐面は、最近気に入って取り寄せたというものだったが、日頃隠されている口元というだけでついつい視線が吸い寄せられる。
赤く艶を載せた唇は、上弦の月のように吊りあがって、笑みを浮かべていた。


態々面をつけねば刀剣男士の前に顔出しも出来ないというのは腑に落ちない。
そう凄んだあとにもたらされたのは、長く沈み込むような嘆息だった。
大将が口を開いて曰く、『揃って美丈夫、揃って美貌の刀剣男士の中で、万緑叢中紅一点だと言っても私の顔なんか出せない』とかなんだとか言うので、練度と刀装で上乗せした機動でもって、その場でお面を剥いだのだ。
俺っちにとっては運良く(大将にとっては運悪く?)、その時大将のそばに居たのは、年中近侍をやっている最古参、続く古参の短刀である俺っち、近侍以外の太刀・打刀としては最古参の和泉守兼定、機動の早さから主戦力に組み入れられて久しい骨喰藤四郎とへし切長谷部、鎧通しの実力を買われて鍛練をへた厚藤四郎の6口だけだった。
俺っちを含む全員が呆気にとられている中で、大将は下を向きながらぼそぼそと
「主がこんな顔に傷を作るような女でごめんなさい」などというものだから、
「すまねえが大将、俺っちにはあんたの顔のどこに傷があるのかわからねえぜ?」と聞き返すほかなかった。
「あ、あの……ここに。眉毛を寸断してるのが傷なのですよ」と、おずおずといった具合に俺っちの指先を掴んで、もう塞がった傷口に触れさせたものだった。

女として顔に傷を作ってしまったことよりも、それを運の悪い事だとしか言わない大将には、時折苛立ちを覚えるようになった。
幸運を運ぶという刀が実装されると聞いたから、大将を唆して、ほかの刀剣にも手伝わせて幸運の刀を手に入れるように仕向けた。
鉄をも貫く切れ味自慢の短刀と言っても、幸いを運んでこられるものではない。それでも、もう少しだけ、と思った。
己にとって大事な大将に、もうほんの少しだけでも幸せを得てほしいと思ったのだ。
付喪神としての生に「顕現」という、己の手を差し出す手段をくれた大将に、もう少しだけ。

そんな纏まり無い邪念を抱いていたせいか、手元に広げておいた戦績の記録用紙に大きく「×」印を書いてしまった。
質のよい半紙を一枚反故にしてしまったが、「薬研が反故を出すのは珍しい」なんて言いながら、半紙は大将に取り上げられてしまったのだった。

同じジャンルの似た条件の即興二次小説


ユーザーアイコン
作者:タラバガニになった光月 ジャンル:刀剣乱舞 刀さに お題:12月の少数派 制限時間:1時間 読者:50 人 文字数:904字 お気に入り:0人
朝早く起きてしまった。布団を畳み、広間へと行こうと扉を開ければ目の前に広がるのは一面の真っ白な雪。いつもより冷え込むと思えばやはり雪のせいだったか。「主、起こし 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:九珠/kz ジャンル:刀剣乱舞 刀さに お題:君と内側 制限時間:1時間 読者:117 人 文字数:1676字 お気に入り:0人
俺にとって、彼女は唯一無二だった。だけど、彼女にとってはそうではないことを俺は知っていた。「鶴丸」 柔らかい声で彼の名前を呼ぶ彼女は、彼に対する親愛の情を明ら 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:塵@のんびり ジャンル:刀剣乱舞 刀さに お題:軽い教室 制限時間:1時間 読者:270 人 文字数:2984字 お気に入り:1人
目をとじてひらくと、教室だった。 均等に並べられた50数個の椅子とつくえ、前にも後ろにもある黒板。 その教卓の前に、見下ろすように立っていた。 誰もいない。 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:西園寺燐@萌爆弾魔 ジャンル:刀剣乱舞 刀さに お題:希望の尿 制限時間:1時間 読者:267 人 文字数:1479字 お気に入り:0人
本日も本丸は快晴。しかし、相変わらず…本丸の資材庫は枯渇していた。「……くそっ、時の政府め」翡翠の本丸は特殊な事情を抱えている為、政府からの資材配給がこない。小 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ふわふわスフレケーキ ジャンル:刀剣乱舞 刀さに お題:ダイナミックな衝撃 制限時間:1時間 読者:265 人 文字数:1007字 お気に入り:0人
ああ、困った。実に困る。先日の"アレ"から頭はそれでいっぱいで、昨日なんか手合わせで相手の攻撃をほとんどくらってしまうし、昼餉のみぃとそぉすぱすたで着物を汚して 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:藍河@とうらぶ ジャンル:刀剣乱舞 刀さに お題:死にぞこないの運命 制限時間:1時間 読者:364 人 文字数:1418字 お気に入り:0人
なんだか今日はすれ違ってばかりいる気がする。 山姥切国広、この本丸の主である審神者の少女の初期刀。 先ほどから少女は彼のことを探して本丸周辺を歩き回っていた。 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:藍河@とうらぶ ジャンル:刀剣乱舞 刀さに お題:鳥のパソコン 必須要素:胸キュン 制限時間:1時間 読者:487 人 文字数:1439字 お気に入り:0人
「主は胸がきゅんってなることはある?」 そう言ったのは乱藤四郎だった。 乱は見た目は女の子のような格好をしているが、れっきとした男の子である。刀剣に性別という概 〈続きを読む〉

ななし/闇ミツハ/全方位褒められたいの即興 二次小説


ユーザーアイコン
作者:ななし/闇ミツハ/全方位褒められたい ジャンル:刀剣乱舞 刀さに お題:私が愛した喜び 制限時間:15分 読者:67 人 文字数:564字 お気に入り:0人
庭の梅が薫り始めたからと、目を細めた歌仙兼定は一輪挿しを持ってきた。水仙が咲いたからと、蜂須賀虎徹は庭へ連れ出さんと手を掴んだ。鬼やらいじゃなと、柊の枝を手に陸 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
鵺もふもふ ※未完
作者:ななし/闇ミツハ/全方位褒められたい ジャンル:刀剣乱舞 刀さに お題:正しいもこもこ 必須要素:プチ整形 制限時間:30分 読者:80 人 文字数:611字 お気に入り:0人
もこもことした、鵺なる妖の毛皮を触っている。「別に、主が触りたいなら触ってもいいぜ?」なる、とある太刀の弁あっての行為は、審神者として彼を呼び起こした狐面をして 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ななし/闇ミツハ/全方位褒められたい ジャンル:刀剣乱舞 刀さに お題:不屈の惑星 必須要素:ラジオ 制限時間:30分 読者:185 人 文字数:750字 お気に入り:0人
『それではお聞きください、刀剣男士Team三条With加州清光で、【刀剣乱舞】!』「おい」「はぁ……いい……」たん、と音を立てて閉じる障子の方を、狐面は知らん顔 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ななし/闇ミツハ/全方位褒められたい ジャンル:刀剣乱舞 刀さに お題:未来の帝王 必須要素:北海道 制限時間:30分 読者:264 人 文字数:960字 お気に入り:0人
「もうすぐ秋が来るねえ、くりからくん」「だったらどうした」「秋のごはんは、何を選んでもおいしいんだよ、くりからくん」「……慣れ合いは陸奥守や前田とやってくれ」「 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ななし/闇ミツハ/全方位褒められたい ジャンル:刀剣乱舞 刀さに お題:ダイナミックな牢屋 制限時間:30分 読者:266 人 文字数:1053字 お気に入り:0人
夏はあっという間に過ぎてしまう。それはきっと、四季の夏も、人生の夏も。「うん、夏はあっという間だ」「何を言ってるんだ、あんたは。向こう二月ばかりもずっと、暑いま 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ななし/闇ミツハ/全方位褒められたい ジャンル:刀剣乱舞 刀さに お題:やば、屍 制限時間:1時間 読者:341 人 文字数:1979字 お気に入り:0人
#刀さに版深夜の審神者60分一本勝負 #さにわんらい 参加作品テーマ:キャンディ「バレンタインは結局私はろくに何もしなかったよ? どして、金平糖をくれるの??」 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ななし/闇ミツハ/全方位褒められたい ジャンル:刀剣乱舞 刀さに お題:見知らぬ血 制限時間:30分 読者:336 人 文字数:1572字 お気に入り:0人
姥さに現代パロ・「コメダのご飯は美味しいぜー♪」「あんたは、朝からよく食べるな……」何が起きたかよくわからないが、未来に転身して審神者などやっていた記憶はそのま 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ななし/闇ミツハ/全方位褒められたい ジャンル:刀剣乱舞 刀さに お題:シンプルな地獄 必須要素:手帳 制限時間:1時間 読者:381 人 文字数:1557字 お気に入り:0人
#姥さに版深夜の60分一本勝負 参加作品『親愛なる主へ』ほろ、とこぼれる花びらを、綺麗だと思った。ほうと花枝を眺めていると、見事な枝持つ梅の屋敷から、萎びた風采 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ななし/闇ミツハ/全方位褒められたい ジャンル:刀剣乱舞 刀さに お題:生きている外側 制限時間:30分 読者:395 人 文字数:1062字 お気に入り:0人
「バレンタインデー? ないヨ?」ぐり、と首を傾げた狐面の審神者に、乱藤四郎と愛染国俊に今剣は、目に見えてしょげたそぶりを見せた。付き従ってきた山姥切国広に前田藤 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:ななし/闇ミツハ/全方位褒められたい ジャンル:刀剣乱舞 刀さに お題:とんでもない裏切り 必須要素:蛾の標本 制限時間:30分 読者:373 人 文字数:766字 お気に入り:1人
さにわんらい参加作品神様を見つけた日捧げ持った黒鞘の打刀は、ずっしりと重かった。静かに祈り、付喪神の顕現を望んで、望み通りかの刀剣男士が現れてから、もうじき一年 〈続きを読む〉