ジャンル:黒子のバスケ 子ども世代 お題:昨日食べた村 制限時間:15分 読者:310 人 文字数:929字 お気に入り:0人

少女たちの思い出

見上げてきた表情は、確かに緑間に似ていた。やはり共に暮らしていると表情は似るのか、と紫原は思った。
これ、食べちゃうの?
千明は悲しそうな顔をした。
食べられるように作ったよ。食べ物から作ったもん
お菓子の家、というのは、いつの時代の子どもたちも惹きつける。誕生日に何が欲しい、と尋ねると、千明はよく知られた動物人形のセットを上げた。それは無理かな、と答えると、うん、と千明は頷いた。無茶は言わない、素直な良い子だ。ただ、良い子過ぎるのは考えもの。少しは娘の尚子を見習って、わがままを言うのも覚えたほうがいい、と思う。その人形セットをプレゼントすれば、緑間から何を言われるか想像が付いた。緑間からだけでなく、赤司からも説教を食らうことになる。まあ、あの二人が少女たちが欲しがるものを理解できるかどうか、怪しいけれど、保護者という立場ではない自分が、あまり分をわきまえないことをするのは、現在の立場上、あまりよろしくなかった。
そもそも、素直に言われたものをプレゼントする、などという芸のないことをするつもりはなかった。腐ってもパティシエ、曲がりなりにも自分の店を五店舗を抱えた者として、プレゼントするなら洋菓子。ならば、と腕によりをかけて、その動物人形のセットを洋菓子で表現しようと試みた。かわいい物好きは店にも居て、紫原の意図を説明すると、我も我もと作品制作に参加してくれた。ちょうど閑散期ということもあり、参加してくれた従業員たち――主にその動物人形を一度はかわいがったことのある女子たちがほとんどだった――は多かった。人形の形一つとっても、彼女たちは事細かにコメントを残した。自分には見えていない微妙な動物の表情、手の動きなどを、彼女たちは楽しげに語った。緑間や赤司に言わせたら、そんなところに拘ってどうするのだ、と言い出しそうなことばかりを、彼女たちは本当に楽しげに話し合っていた。
そして出来上がった作品を、どうぞ、と千明に差し出した。う、わぁ、と感動を隠しもせず、千明は目を見開き、その瞳をきらきらとさせた。凄い、これも、服も、顔もかわいい、と彼女はいろいろな角度から、その家を眺め、動物を眺めた。作った甲斐があったなぁ、とその様を見て思った。

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