ジャンル:血界戦線 お題:小説家たちのサッカー 制限時間:30分 読者:417 人 文字数:2386字 お気に入り:0人

小説家たちのサッカーって何 ※未完

僕が文筆家を目指したのはなんてことはない、僕にとって多くのものをことばにするという行為が息をするのと同じだったからだ。
こういうと難しいけれど、つまり僕は日記を書くのが好きで、気持ちをしたためるのが好きで、だいたいそんな感じ。僕にとって世界と言葉っていうのが隣接していて、そして言葉によってだれかに何かを伝えられるってことにそれこそどうしようもないくらいの魅力を感じていたのだ。だから、写真にハマった。写真を撮ることは言葉にすることと似ていた。何をどう切り取るか、そしてそれをどう見せるか。ここにあるこの世界を、どう切り取れば今僕が思っていることを一番分かってもらえるか。
僕のことを分かってほしいのだ、ということに気が付いたのは、それらから離れてだった。
すすけた日記を手にとる。いつから開いていないのか見当もつかなかった。表紙のほこりを払ってから頁を捲ってみるけれど、どこも白紙で、ここに越してくるときに買ったはいいものの一度も使われなかったのだろうなということがありありと分かった。僕はそれを抽斗に戻して、それからそっとしまった。物理的にも、記憶の上でも。
「レオ、おい、レオ!」
「なんすか」
僕を呼ぶザップさんの声がする。
そういえば、ここに越すことになったのはこの人と一緒に住むようになったのがきっかけだった。僕の隣にザップさんがいるのが普通になっていて、そして当時僕の部屋は敷地面積で20平方メートルを割っていた。おかしいと思うし、実際可笑しかった。あの部屋で生活したのはたった三週間で、丁度三週間目に爆発してしまったけれど、20平方メートルのお城はあまりにも狭すぎて、あまりにも間違いを起こしやすかった。だから僕らは間違わないように引っ越した。広い部屋、少なくとも壁で三つ以上に仕切られていなくてはいけなかった。ザップさんは勿論僕が絶対に間違ってしまわないように。
一番最初に間違ったのは、小説家たちがサッカーをしていたからだ。
青いバラなんてものが存在したせいで僕は人生のレールを大いに脱線することになった。まあもともとレールの上だったかどうかという疑問は尽きないけれど、それはともかくとして、僕の人生は狂いだした。こんな不良債権の代名詞みたいな男を、愛する人として人生に抱え込むことになったので。
僕らはあの日、サッカーを見に行った。サッカーというか、人数と敷地の問題で、多分フットサルとかフットボールとか、そういう感じか、或いはもっと別の競技だったのかもしれない。あいにく僕は球技に詳しくなくて、ザップさんには健全なスポーツというものの知識がなかった。なのであれはたぶんサッカーだった。少なくとも僕らはサッカーとしてそれを観ていた。
小さなグラウンドだった。いつもは多分、普通に親子連れやカップルなんかがのほほんとレジャーシートをひいて寝転んでいそうなそういう。そこによれた白線で境界が描かれて、その中には10人の小説家がいた。ヒューマーが6人、ビヨンドが3.5人。0.5の分は繰り下げることになった。彼には体がなかったので。もしも彼がジェンキンスのもうひとつの首ではなく、彼の双子の弟だったらこんなことにはならなかったのだろうけど、悲しいかなサッカーは足を使ってやるスポーツなので、そもそも自立する足がなくては参加できないのだった。
彼らがなんでサッカーをやっていたのかは分からない。白黒のボールを追いかける遊びをしながら、訳の分からない単語を叫んでいたのにどういう意味があるのか、僕には全く知れなかったけれど、ザップさんはそれを観ながら煙草をふかし、それから時折ケラケラ笑っていた。ビヨンドの一人が足を落として、それをオウンゴールさせたところなんて、本当に腹を抱えて笑っていた。
僕はそれをただ見ていた。正直自分がなんでこの人の横にいるのかも知らなかったし、なんでこんなに笑えるのかもさっぱり見当はつかなかったのだけれど、とにかく僕はそこにいることを要求されていて、長いものに巻かれるように唯々諾々と膝を抱えていた。まるで宝ものをそうするように、僕の両の腕はびっくりするくらい両足をふんわりと包んでいた。
ザップさんが八本目の煙草に火をつける。
特に用事がある訳でもないのにこんなに長い時間を一緒に過ごすのが初めてだということに僕はここに来て初めて気が付いた。この破天荒な先輩は、どこかしらに生き急いでいるところがあって、だから一分一秒も無駄にできないとばかりに享楽にふけっていて、なんならちょっとした任務はサボったり書類を提出しなかったりしている。でも今は違った。どれだけこの人が笑っていたとしても、どう考えたって目の前で繰り広げられている素人以下のサッカーはどんなエンターテイメントにだってならなかった。
「何考えてるんですか」
僕は昨日人を殺した。
ザップさんはそれを知っていた。
優しい人だった。そばかすが浮いていて、金髪で、ひょろりと長身で、ぼくの三つ上で、姉と弟がいるんだとはにかんでいた。世界一のギタリストになりたいと言って家を飛び出して、よくわからないうちにHLにきてしまったと笑っていた。笑顔になると、翠色の光彩が赤みを帯びて見える、美しいところのある青年だった。
なぜ殺したか。
彼がザップさんに懸想していることに気が付いたからだった。
ザップさんは僕のバイト先によく顔を出した。バイト先のピザ屋さんは店主が非常にいい人極まりないのでアクロバット土下座のいかんによっては給料の前借ができるという優れたシステムを運用していた。勤続3か月目がから使うことのできるそれをどこからか聞きつけたザップさんはにやにやして僕の給料の半分を使いこむというあまりにも非人道的な行為の味をしめたらしかった。本当に意味が分からない。







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