ジャンル:刀剣乱舞 刀さに お題:死にかけのもこもこ 必須要素:旧約聖書 制限時間:15分 読者:294 人 文字数:963字 お気に入り:0人

毛玉つきしおり

ここは火輪の審神者の本丸。
よく来客のあるここは、今日も数人の女審神者が訪れている。
そのうちの一人、依代の審神者が急用で先に本丸に戻ることとなり、火輪に見送られて帰っていった。
その後、残った面々は別の部屋に移ったため、使わなくなった部屋の片付けに訪れた山姥切は、
ふとあるものを目に留めて意外そうな顔をした。
「珍しいな。あいつの忘れ物か。」
依代が今日の供に連れていた2名の刀剣の片割れ・長谷部の持っていた旧約聖書。
珍しい事もあるものだ。
おまけに、それを興味深げに眺めているのは、山姥切の恋人である鴇環(ときわ)の審神者。
「はい、そうみたいです。しかも、何だか変わったしおりが挟んであるみたいで。」
「……何だこの毛玉は。あいつらしくもない。」
長谷部という刀は、生真面目を絵に描いたような性格だ。
そんな彼が、くたびれきって毛がへたった毛玉が付いたしおりを、
しかも聖書に挟んでいるとは奇妙である。
主からのもらいものなのだろうか。そもそも毛玉が付いているこれは、本当にしおりなのだろうか。
「良く分からないですけど、大事に使ってるみたいですね。」
「それはそうだな。」
よく見れば薄汚れている。いつも手袋をつけている彼なのだから、手垢ではないだろう。
それだけ使い込んで、生活空間の汚れを拾ってしまったに違いない。
そんな薄汚れた代物でも律儀に使い続けるあたり、やはり生真面目としか言いようがない。
「返しに行かないと、困っちゃいますよねえ……。」
「これは俺から主に渡しておく。それより、あんたは主達と同じ部屋に移らないのか?」
「ええっと、ちょっと片付けてから行こうと思ってたんで……。」
道理で、人が使った後の割に座布団が整っているわけである。
鴇環の説明を聞いて、彼は納得がいった。
「そうか。これ以上直す所もなさそうだし、あんたはもうあっちに移るといい。」
「あ、はい。じゃあ、また後で……。」
そう言って、そそくさと鴇環は去っていった。待たせていたのだろう。
後に残った山姥切は、何となく聖書に挟まった毛玉つきのしおりをつついた。
「あんたはなかなか幸せ者だな。」
器物にとって、くたびれるほど使い込まれるのは、名誉である。
付喪神に使い込まれることが、このしおりにとって嬉しいかは分からないが。

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