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遅れまして姫はじめ【ブチャジョル】

「最近、なんだかよく髪の毛が抜けるんだ……」
「……年ですか?」
「馬鹿言え、オレはまだ20だぜ」

 昼食後のコーヒーを飲みながらブチャラティがそんなことを言った。昼になってもこの季節じゃああまり気温は上がらなくて、私服にはセーターなり暖かくなる肌着なりが欠かせない。外に出れば冬色のコートが街を闊歩しているし、ぼくも顔の前で紅色の手袋をこすり合わせる。ブチャラティは、クリスマスプレゼントにあげた茶色のニット帽をつけて、手袋をしない代わりにコートのポケットに手を突っ込んでいる。そういうスタイルで出勤してもう2ヶ月位経つ。そろそろ寒さがやんでほしいところだけど、実際のところ寒さはこれからが本番かもしれない。
 そんな中でブチャラティはなにやら毛が抜けるらしい。ぼくも忘れてしまうけど、この人は確かにまだ二十歳だ。正直二十歳以上の貫禄というか、覚悟とかを感じる人だとは思うのだけど。

「あんた、髪が抜けるってどのタイミングですか」
「そうだな、朝起きた時の枕とかによくついてるんだ、10本くらい」
「なるほど。……ううん、よくわからないけど、他にあるならストレスかなあ」

 最近彼を悩ませるような街の不安ごとはあったろうか。こないだ揉めていた小さなチームとの交渉はどうにか成功したし、麻薬の密売現場の摘発も順調だし、ここ一ヶ月の業務は滞りなく済んでいるように思う。実はぼくに届かないような些細なトラブルでもあったのだろうか。たとえば下っ端のパッショーネの組員の仲が悪くて困ってるとか、新しくつけた新人が頑固だとか。そんなことも一応きいてみたけれど、特にないらしい。この人は我慢しやすいタイプだから少ししつこく聞いてみたが、どれも直接的なストレスとは結び付きにくいものだった。
 自分のコップの底に溜まった砂糖をスプーンで溶かしながら考えていたけれど、ふと目に止まった部屋の隅のゴミ箱を見て、とてもくだらないことを思いついた。

「もしかして……最近、セックスしてないからですか?」
「……っな、何言ってるんだ!?」
「だってそうでしょう?もう二週間くらいあんたのことを感じていないもの」

 「よくまあそんなセリフをさらさらと……」と少し狼狽えているブチャラティの様子に笑いながら、コーヒーを飲み干した。そうして隣のブチャラティにキスを落とす。座っていたのがソファだったから丁度いい。砂糖で甘くなったぼくの舌と、ストレートの苦いコーヒーのブチャラティの舌が絡んでひとつになる。優位に経とうと不意打ちしたのに、彼はぼくの頬にぼくより一回り大きい手を寄せて、そうして掴んで離してくれない。段々息が苦しくなって、恥ずかしくなってしまって思わず目を瞑る。酸素が限界になってきたところでやっと解放されて、はっ、はっ、と息をしていると「まだキスはオレの方が上手いな」と満足げなブチャラティがこちらを見ている。この人はじわじわとぼくに悔しさを与えるのが趣味なのかもしれない。
 「昼間っからこんなに盛り上がってていいんですか」といったって「おまえが誘ったんだろ、それにシエスタはそういうコトをする時間でもあるだろう?」と返される。確かにそうだけど、半分面白がってしたのだし、あんなに情熱的なやつをくれるなんて思ってなかったのだ。ブチャラティのこういうところはまだかなわない。駆け引きのようなもの、ずるい部分の隙間を早くどうにかして埋めてやりたいのに。
 ながれるままに日の入る寝室に行って、申し訳程度に窓とカーテンを閉じた。日の当たっていた部分のシーツが暖かくて眠ってしまいそうになるけれど、押し倒してきた彼の指先は的確にぼくの首筋の性感帯を擦りあげる。

「あっ……」
「……髪が抜けるより、オレは乱れて散らかるのを見る方が好きだな」
「うるさいですよ……っん」

 ずるりと鎖骨のあたりまで上げられた桃色のセーターの下に隠れていた乳首をつねる指を、ただただ見ているしかなかったぼくだった。


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