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取り戻せない世界

「待って、待って……!」
 ごう、と耳元を風が過ぎていく。目も開けていられないような強風が顔を打つ。そんな中、翠色のを持つ少女がひとり、先を行く少年の背を追いかけていた。
「待ってってばぁ……!」
 少年は歩みを止めない。まるで初めから少女の言葉など聴こえていないかのように、すたりすたりと灰色の砂を踏んでいく。
 少女の瞳から、淡い涙粒が落ちる。

「待ってよ、ユーリぃ……!」

 ――少女の言葉に、少年――ユーリは、死んだ表情で背後を振り返る。果たしてその視界には何が映っているのか、と問いたくなるような暗い顔だった。
「何」
「なんで私を置いていくの? 一緒に歩こうって言ってくれたのに!」
「……」
「何か言ってよ!」
「……うるさいなぁ」
「なっ……」
 瞬間、少女の背に冷水を浴びせられたような悪寒が走る。冷徹。微々の労わりさえ感じさせないその視線は、到底その年頃の少年が投げつけられるものではないほどに、冷たく悲しい色だった。
「あのねぇ、僕の背中を追いかけてばかりじゃあいけないよ? 君は立派なデュエリストになるんだろ。僕を追いかけてるようじゃあいつまでたっても――」
「それでも、ユーリと一緒がいい!」
「っ」
 ぐ、と少年が呻くように言葉を発した。それはわずかな亀裂。決して表に出さないようにと封じ込めていた「何か」を抑えようと、少年は白くなった唇をキツく噛む。
 その表情は何より苦しそうで、その唇は何よりも本音を吐いてしまいそうで、その両手は何よりも少女を閉じ込めたくて、その両足は何よりも少女の元へ行きたがっている。
 ――だけどね。
「ごめんね、僕は一足先にプロフェッサーの元で学ぶんだ。彼の傍で、優秀なデュエル戦士としてね」
「私は……私じゃだめだって言うの!」
「僕だけが選ばれたという事は、そういう事だろうね。残念だったね。悔しかったらさっさとここまできなよ。――君にできたらの話だけど」
 少年は前を向く。少女が慟哭するのも構わず、前だけを向く。振り返らない。――振り返っては、いけない。許されない。

「ごめんね、セレナ」

 まだ感情を表に出して笑う年頃の少年に課せられた、枷。
 それはセレナという少女を、守るためだけに。
 彼は己を殺して、上へと昇り詰めなければならなくて。

「絶対、また会おうね」

 少年の言葉は届かない。強風に流され消えていく。
 その数年後、14歳となった少年少女は再開する。

 ――だが、少女は何も憶えていなかった。

(空前絶後の失望)

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