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「君の目は素晴らしい」
 言われたのは昔のことだ。クラウスと出会う前、大崩落の何年前だっただろうか。
「一体どこがです」
 聞き返すと、彼は顎に手を当てて少しばかり考えた。
「全て。……といったら大雑把すぎるか。その緋色は宝石のようだし、何より君の目は——物事を見通せる、良い目だ」
 大げさな例えまでして褒めちぎられようとも、今では過去の話だ。
 僕の目に素晴らしい所があったとしても、比べるのも失礼なほどの瞳の持ち主がここに居るのだから。

「何が見えてる?」
 執務室の窓辺に並んで立っていた。少年は僕の隣で目を開いて、街を見下ろしている。
「スティーブンさんと、同じものを見ているだけです」
「嘘をつくな。個人のオーラを追うことだってできる君が、僕と同じ風景を見ているわけがないだろう」
 レオナルドは僕が小さく笑い声を零したところで、機械的な青色を瞼の裏にしまった。
「本当に、同じものを見ているだけなんですよ」
 少年の糸目の端が垂れて、困ったような笑顔を見せられる。
「僕がスティーブンさんと違うものを見ているのだとしたら、スティーブンさんだって、僕が見ることの出来ないものまで見ているじゃないですか」
 僕に見えて彼に見えないものとは何だろう。神々の御技でも敵わないものなどあるのか?
「僕はミシェーラのことなら良く分かりますけど、会ってすぐに人の内面を見抜くことは出来ないです。でも、スティーブンさんは人の性格までもよく見えているのでは、と……」
 レオナルドは自身の目元を指差しながら、僕を見た。
「神様でも見えないものが見えるって、とっても良い目だと思います」
 純粋な気持ちを述べられたこの時、僕は心があたたかくなった。

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