ジャンル:ジョジョの奇妙な冒険 お題:左の絶望 制限時間:30分 読者:473 人 文字数:1589字 お気に入り:0人

ひだりがわの憂鬱【ジョルブ】

 身体がへんだと気付いた時、どんな気持ちでしたか。おれの隣で寝そべりながら、藍色の瞳がこちらを伺いながら聞いてきた。へんだと気付いた時。身体が死んだまま動いているのだと気付いた時。あれがもういつのころだったのか、今はよく思い出せない。

 またふらりとこの世に迷い込んでしまったおれは、結局またジョルノの家に着いてしまった。勝手に足がそこに向かうのだ。家のドアを叩いて開いた時、少年はいつも戸惑っている。嬉しいでも怒っているでも悲しんでいるのでもなく、複雑そうな顔で「また来たんですか」と呟く。「目覚めたらネアポリスにいたんだ、仕方ないだろ」とおきまりのように呟くと、ため息をつく姿すら見せないままおれを中に引き入れる。食事も取る必要もないし、外に出てもジョルノ以外には見えないのだし、こいつとやることなんてセックスくらいしかなかった。どちらが言い出したのかも忘れてしまった。ジョルノがいつもおれを優しくリードして、そうしてはいってくる。愛撫もなにもかも優しくて気持ち良くなるのに、その瞳は欲情以外の感情をころしているようにも見えた。無理やり隠しているのだろうとか、性欲でごまかして何かを忘れようとしているとか、深く追求することはなかったけど、そっとおれに口付けるキスがへたくそで、きっと恋人はまだ作っていないんだな、と毎回思った。
 自分の死んだはずの身体にセックスのための勃起する機能だとか、そのためだけに熱くなる身体は不思議だった。それにしても、自分があのあと幽霊になったのか、どうなのかについては分からない。そもそもあのあと、おれの意識はどこかに埋葬されて、なにもなくなっていて、ふと意識をもつとこの街のどこかに突っ立っているのだから。ジョルノにしか見えないことは、おれがなんども歩いた道を歩いても誰もこえをかけてくれやしないからだ。それは寂しいものだけど、一週間しか顔を合わせていないはずの少年と顔を合わせることができれば、ホットケーキの生の生地がふつふつと穴を開けて膨らむ時のような気持ちになった。

「ねえ、聞いてますか」
「んっ、……聞いてるよ」

 思い返していたら耳をがぶ、と齧られた。甘噛みされて、そのまま耳の裏を舐められると背筋がぞくぞくした。そろそろもう一回したい、と下半身が訴えてくる。喋らないそこにうるさい、と心の中で声をかけながら、あのときのことをちゃんと考えた。たぶん、もう半年以上前のことだとおもう。生きているとき以上に無理をしてよくなった身体のこと。痛みも、だんだん音や視界やそういうものまでよくわからなくなってしまったことについて、俺は結局のところ運命だと受け入れて、ジョルノだけに伝えたはずだ。

「なにも思わなかったよ」
「…………」
「運命と受け取ったことに対して、それ以上の感情をもつ必要はなかったんだ」

 そう言うと、「やっぱりそうですよね、あんたはそう言うに決まってるんだ」とおれの背中を抱きしめる。おれより筋肉量のすくないほそい腕なのに、いやに締め付けられている感覚があった。感覚はなくなっていったのに、感情だけは最後まで熱く心の中に残っていたなあと思う。ジョルノと交わるたびにひとの感覚と視界と、人間らしいものを思い出した。このあともう一度眠ったら、またおれはしばらく長く眠り続けて、気が付いたらまたジョルノの元に足を向けるのだと思うと、一種の呪いのような気がしてきた。でも、ジョルノの元以外に俺は出向ける気がしなかった。もしかしたら、この呪いをジョルノだけに向けたいと思っているのかもしれないが。
 きっと、ジョルノだけがあれを見ているのだから。おれがディアボロによって一度殺された後、スタンド能力がくたばったせいでぼろぼろになった、トリッシュの左腕のジッパーを。おれの絶望を、ジョルノだけが知っているから。




同じジャンルの似た条件の即興二次小説


ユーザーアイコン
作者:種 一@はじめ_TRPG ジャンル:ジョジョの奇妙な冒険 お題:優秀な人 制限時間:30分 読者:95 人 文字数:928字 お気に入り:0人
スマホから腐向けになった。DIOテレあの男は優秀という言葉が似合う。スタンド能力として人の心が読めるせいか行動の先読みが得意だ。こと、日常の積み重ねであればなん 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:深海文音@二日目東X11a ジャンル:ジョジョの奇妙な冒険 お題:憧れのにわか雨 制限時間:30分 読者:391 人 文字数:835字 お気に入り:0人
僕には憧れのシチュエーションがある。突然の雨に、慌てて鞄で頭を押さえて店屋の軒先に逃げこむと、そこには同じように雨に濡れた制服姿の女の子がいる。彼女は不安げに空 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:深海文音@二日目東X11a ジャンル:ジョジョの奇妙な冒険 お題:ラストは戦争 制限時間:30分 読者:498 人 文字数:954字 お気に入り:0人
「頼む、匿ってくれ!」ドアスコープから覗いた彼は、焦っているようでピンポンピンポンピンポン……と何度もチャイムを鳴らす。さすがに鬱陶しくなって玄関の扉を開けると 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:シロ ジャンル:ジョジョの奇妙な冒険 お題:たった一つの海風 制限時間:30分 読者:354 人 文字数:888字 お気に入り:1人
懐かしさを追うには、少々失ったものが多すぎた。それでも繰り返しこの場に来てしまう所以は何だろうか。きっと、忘れたくないのだ。逃げるように去ったくせに、あんなこと 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:チャナ ジャンル:ジョジョの奇妙な冒険 お題:名前も知らない孤独 制限時間:30分 読者:595 人 文字数:1818字 お気に入り:0人
【仗露】街中ですれ違うひとたちは、ぼくのことを知っているひともいれば、知らないひともいる。目をきらきらさせて、ぼくにサインを求めてくる子どもやぼくの世間的に変わ 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:リラ ジャンル:ジョジョの奇妙な冒険 お題:大好きな吐息 制限時間:30分 読者:472 人 文字数:977字 お気に入り:0人
ずっとずっと待っていた。眠っているきみのそばに座り込んで、一ヶ月。今まで生きてきた年月に比べたら、一ヶ月なんて短い時間かもしれない。けれど、きみの何事にも動じな 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:リラ ジャンル:ジョジョの奇妙な冒険 お題:あいつの小説 制限時間:30分 読者:465 人 文字数:991字 お気に入り:1人
夏の日差しは攻撃的。珍しく海に行こうなんて言い出したジョルノが、熱い砂浜で裸足になることもできずに、傘の下で本を開いている。まるで吸血鬼。なんて、本人には言わな 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:ジョジョの奇妙な冒険 お題:せつない海風 制限時間:30分 読者:664 人 文字数:1063字 お気に入り:0人
海からの風が、髪をかき混ぜる。ぼくは、岬の、とある場所に来ていた。ぼくの他には誰もいない。ここは、彼が安らぐ場所だ。冷たい石の下で。ぼくはチームの中で一番彼と長 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:ジョジョの奇妙な冒険 お題:愛、それは階段 制限時間:30分 読者:409 人 文字数:843字 お気に入り:0人
夢の淵に手を掛けたあの日。めくるめくアクション映画のような一週間。それから共にあった10年間。ぼくたちは、ゆっくりと二人分の愛を作り続けたね。今も覚えている。初 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:匿名さん ジャンル:ジョジョの奇妙な冒険 お題:当たり前の暴走 制限時間:30分 読者:460 人 文字数:769字 お気に入り:0人
どうしようもないほどの夏だった。どうしようもないほどキラキラと輝いて。シニョリーナは露出も激しく街を歩き回り、男共はひと夏の恋をと、耳触りの良い言葉を所構わず吐 〈続きを読む〉

七色ちさとの即興 二次小説


ユーザーアイコン
作者:七色ちさと ジャンル:イナズマイレブンGO お題:幸福な雑草 制限時間:1時間 読者:44 人 文字数:2629字 お気に入り:0人
おれ、おまえに見つけてもらってよかったなあって。蹴ったボールにあわせて言った言葉に、剣城は首を傾げていた。 風がからだをなぞって入り込んで、血液をめぐるように 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:七色ちさと ジャンル:イナズマイレブンGO お題:僕が愛したぐりぐり 制限時間:30分 読者:110 人 文字数:1545字 お気に入り:0人
剣城は真面目だ。俺が宿題やるの忘れてきたから見せて!って言っても見せないし、自分の責任だろって怒るし、ねーお願い!ってしつこく言ったら折れてくれるかな、って思 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:七色ちさと ジャンル:イナズマイレブンGO お題:危ない血液 制限時間:30分 読者:114 人 文字数:1540字 お気に入り:0人
この世は地獄の形をしている。それはどうやったってきっと変えられないことで、こんな自分が考えていることだから、変化することがないという話なのだけど。 寝不足で虚 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:七色ちさと ジャンル:イナズマイレブンGO お題:とびだせ嫉妬 制限時間:30分 読者:162 人 文字数:1597字 お気に入り:0人
「剣城!」 名前を呼んで、そうしたら彼が力強く頷いて、力を纏ったボールがそらを舞う。せかいでいちばんかっこいいシュートを決めてくれる。それが雷門中サッカー部エー 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:七色ちさと ジャンル:ジョジョの奇妙な冒険 お題:夜とぐりぐり 制限時間:15分 読者:327 人 文字数:832字 お気に入り:0人
ブチャラティはあまりカーテンを閉めない。寝るときもそうだし、そういうことをする時も、雨の日も。窓は閉めていてもそれだけはいつも一緒だった。ぼくはひとりで寝っ転 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:七色ちさと ジャンル:ジョジョの奇妙な冒険 お題:君の奈落 制限時間:30分 読者:380 人 文字数:1968字 お気に入り:0人
空は夏の水色で、雲なんてしらないという顔で広がっている。ぼくはカフェの目立たない席に座って、机の上にあるパラソルの影に涼んでいる。オレンジジュースとピザなん 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:七色ちさと ジャンル:ジョジョの奇妙な冒険 お題:理想的な男 制限時間:30分 読者:379 人 文字数:1729字 お気に入り:0人
綺麗な言葉で彼のことを例えるのは、ありきたりだと思うし、さらに言えばずるいと思う。ぼくの前でパンと野菜の入った紙袋を危うい動作で持ち運ぶ彼を「きっちりとした人 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:七色ちさと ジャンル:ジョジョの奇妙な冒険 お題:部屋とYシャツと信仰 制限時間:30分 読者:421 人 文字数:1858字 お気に入り:0人
「セ○クスの後にこういうの着せるの、変態みたいじゃないですか?」「変態でもなんでもいいさ。それしかなかったんだから」 ぼくがからかうように言うと、ブチャラティは 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:七色ちさと ジャンル:ジョジョの奇妙な冒険 お題:左の絶望 制限時間:30分 読者:473 人 文字数:1589字 お気に入り:0人
身体がへんだと気付いた時、どんな気持ちでしたか。おれの隣で寝そべりながら、藍色の瞳がこちらを伺いながら聞いてきた。へんだと気付いた時。身体が死んだまま動いてい 〈続きを読む〉

ユーザーアイコン
作者:七色ちさと ジャンル:ジョジョの奇妙な冒険 お題:10の脱毛 制限時間:30分 読者:537 人 文字数:1646字 お気に入り:0人
「最近、なんだかよく髪の毛が抜けるんだ……」「……年ですか?」「馬鹿言え、オレはまだ20だぜ」 昼食後のコーヒーを飲みながらブチャラティがそんなことを言った。昼 〈続きを読む〉