ジャンル:ガールズ&パンツァー お題:愛の月 制限時間:30分 読者:255 人 文字数:1555字 お気に入り:1人

西住手記

 月の綺麗さを思い出したんです。

私が手紙を書こうと思ったのは些細なことでした。沙織さんが練習後に「可愛い字よりも綺麗な字のほうがモテるんだって!」と字の練習を始めたのがきっかけだった。それなら皆で手紙でも回さない?と言ってそのうち皆で手紙を送り合うようになりました。別に離れているわけでもなく毎日学校や放課後に顔を合わせるような仲なのに。意外と書いてみると難しく、何を書こうかと悩みつつ毎日あったことや他愛もない話や家の事や戦車のこと、特に何も決めずに書きました。沙織さんは今取ろうとしている資格の話やモテる秘訣、華さんは華道の話、麻子さんは使ってる枕を買い換えようか悩んでる話、優花里さんは戦車だけじゃなく国ごとのジョークなんかを書いていました。私は大洗に来てからのことを主だって書きました。まだ一年も経っていなかったけどそれでも書いてみると意外に濃密で、廃校の危機が去って落ち着いた今振り返ってみると多くの事が過ぎていったのだと凄く実感しました。そんな日々を過ごして我ながら「少しは上手くなったかな?」と字の上達に感心しました。
 放課後皆の手紙を受け取って家に帰る途中、気づけば時間は夕方から夜になっていて――確か秋のつるべ落とし、だったかな――日が落ちるのが早くなったなあと感じた日でした。家に帰ってただいまとボコに声をかけて靴を脱いでいた時、珍しく郵便受けに何かあるなと思い近寄って手紙に気づきました。誰だろう、お姉ちゃんからかな?と思って差出人を見て驚きました。貴方から届くとは思ってもいませんでした。気になって部屋のベッドに座って、丁寧に封を切って中を見てみるとシンプルな便箋に貴方の綺麗な文字が並んでいたのを見た時はなんとも不思議な気分でした。ごめんなさい、から始まる書き出しに思わず苦笑してしまいそのまま読み初め、気づけば外が真っ暗になっていました。読み終わった気の緩みにつられてかお腹がぐぅと鳴っていました。そういえば晩ごはんもまだだった、と思い便箋を丁寧に戻してテーブルに置き台所へ向かいました。丁度材料も揃っているしせっかくだから今日はハンバーグにしようと思い急いで肉をこねてハンバーグを作りながら、転校する前の、黒森峰にいた頃を思い出していました。
 逃げるように転校した私でしたが、黒森峰のみなさんは今でも嫌いになったわけではありません。それだけはただ伝えたかったのに、結局すれ違ったまま出て行ったことは私も後悔しています。貴方も同じようで少しホッとしました。
 返事はどうしようか、そんなことを悩みながらケチャップのかかったハンバーグを小さく切りながら食べていると、気づいた時にはもう食べ終わっていました。洗い物をし、ちょっと夜風に当たろうかな、と部屋着の上に簡単に羽織って外に出て少し歩きました。
 上を見上げてみれば少し欠けた月がいつもより輝いて見えました。黒森峰時代、私にとって姉は太陽のような存在でした。そして貴方は月のような存在でした。姉を慕いながら私にも気にかけてくれたのは非常に嬉しかったです。少し、長くなってしまいましたがこんな私をこれからも気にかけてほしいな、と思います。
 夜風が少し冷たく、気づけば体の奥が少し冷えたようで部屋に戻ろうと踵を返した時に気になってもう一度空を見上げて見れば、月は相変わらず暗い夜空にそのまま輝いて、それが無性に綺麗で思わず「月が綺麗ですね」と言っていました。
 黒森峰を出て、私達の関係は少し変わったかもしれません。それでも前みたいに、前以上に貴方ともっといい仲になれればいいなと思い、こうして筆を取りました。嫌だったら破り捨てて、返事もよこさなくて構いません。
 ただ、また郵便受けに手紙が届いていることを祈っています。

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