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つくのよまつり ※未完


架空のお祭りの話を黒大で。




 大学在学中にどこかに旅行しようと提案したのが黒尾。だったら避暑として都内を離れようと提案したのが俺。
 宮城に帰るのは旅行とは言わないし、東北も澤村にアドバンテージがあるからと却下したのが黒尾。だったら関東もナシなって対抗したのが俺。
 北海道は広すぎて目的を絞りこめないからナシに。避暑を目的とするなら南下に意味はないからこれも却下。元々お互いにあちこち出掛けに行くタイプではない旅行初心者だから、遠すぎるのは不安。結局折衷案として北関東に絞り込み、滝だか湖だか寺だかを見て回ろうと決めた。宿取りに予想以上に苦戦したが、きっと誰も彼もコンクリ地獄から遠ざかりたい一心なんだろう。
 青春18きっぷと贅沢するには少しばかり心もとない財布、あとは着替えや必要そうなものを鞄に詰め込んで、あとはスマホが何とかしてくれるだろう。充電器と充電パックだけは忘れないように何度も確認した。
 2泊3日のちょっとした旅行、黒尾は愛の逃避行だとか何とか言って物凄く楽しみにしてて、俺も結構楽しみではあった。
 朝早くから張り切って出掛けて、色々と観光名所を辿った。概ね予定通りだった。予定外なのは、俺達が予約したホテルの部屋で火災が起きて、急遽別の所に泊まることになったことくらいか。普通のホテルからちょっといい旅館へ、部屋代の過不足分はホテル側の不手際だから支払いの必要はないそうだ。ただでさえ火災で大変なのに申し訳ないような気もするが、まあ良い所に泊まれるならそれはそれでラッキーだ。

「『つくのよまつり』?」
「はい。この辺の地元の人間はそう呼んでいます」

 ちょっといい旅館で美味しい食事が用意されたその時、ベテランの風格を持つ仲居さんが「月夜祭り」のことを教えてくれた。
 その昔、仲睦まじい若い夫婦がこの土地に移り住んできた。二人は最初除け者にされたが、人柄と器量の良さで村人から認められ気に入られるようになった。何年かして嫁が重い病気に臥せ、寿命僅かと診断され村中が悲しみに包まれたが旦那だけは諦めていなかった。旦那は嫁を甲斐甲斐しく世話して、治るように治るようにと一晩中祈りながら嫁の手を握り続けた。するとひと月で嫁の病気がきっぱり消えて、み月経つ頃には嫁は以前のように生活できるようになっていたという。
 それから、満月の夜願い事を一晩祈り続けると叶うと言い伝えられ、いつしか若者が祈り続けたその頃に祭りを行うようになり、今に至るのだと。
 
「外から来られたお客様方が喜ばれるような催し事はやっとりません。地元の人間が、ちょっといいもの食べたり、いい酒を開けたり、一応神社でひっそりと行事はありますし、屋台も少しは出ますが、それもほんの些細なものです。この祭りはただ一晩、一晩月を眺めて、自分の望みについて考えるんです。その望みは決して口にしてはなりません。祈ることに意味があるのですから。言い伝えの若者のように、一心に祈る。口に出せば叶わなくなる、なんて言われたりするんですけれども」

 それは後付けですけれどもねえと仲居さんが上品に笑う。

「ここは月が綺麗に見える部屋なんですよ。私はここから見える月が、この旅館で一番好きなんです。他にももっと景色が綺麗な部屋はありますけれども……あんまり言うと女将に叱られてしまいますが、個人的にはここが一番です。お客さん、今日は災難でしたが、不幸中の幸いですねえ。だから言いたくなってしまいました。『月夜祭り』、是非に楽しんでくださいな」

 それではごゆっくり。
 微かにトンっと音を立てて閉められた襖。続いて外へと繋がる扉が静かに開閉された。
 降りてきた居心地の悪い沈黙を破ったのは黒尾だった。

「歓迎、されてる? これ」
「余所者は本来知らなくてもいい祭り、って感じだな」
「もしかして田舎あるある?」
「失礼な、って言いたいところだけど、まあ、なくはないかな」 
「ふぅん。そんなモンなんか」

 いわゆる「外」の人間に言わない祭事なんて、田舎じゃ結構よくあるもんだ。大体はわざわざ言うまでもないような、地元の人間しか知らない小さな祭事。裏を返せば、それを知らない、或いは教えられてないということは、まだ地元の人間として認められていないということ。悲しいかな閉鎖的な田舎ではよくあることであった。地元の寄合だとか、青年団だとか、そういう。

「……まあ、シティボーイには分かんないかもしれないけど」
「へーそういうコト言っちゃうんです? でも、わっかんないんだろうなあ。大学でも地元トーク全く分かんなかったりするし」
「田舎には田舎のルールってもんがあるんです。それにしても変わった仲居さんだったな。普通、そういうことは『外』の人間には教えないもんなんだけど」
「ちょっといい酒開けたりって言ってたから、あとで催促が来るんじゃね? 何かメニュー表がしれっと混ざってるし」
「うわ、ほんとだ。そんなに高いのは学生には無理だぞ?」
「ちょっと手を伸ばせそうな料金なのがズルいな」







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