明日天気にしておくれ
日本には四季があり、梅雨がある。
フランスには四季はあれど梅雨はない。
フランスからやってきたポルナレフには雨の季節が憂鬱であった。雨には良い思い出がない。
しとしとと降り続ける雨を窓際で見やって、承太郎に声をかけた。
「なぁ、承太郎。この雨何とかなんねーかな」
「……天気ばかりはどうにも出来んな」
「あ~!雲をチャリオッツで切り裂きたいぜ」
はぁ、と大きなため息をこぼしたポルナレフを見かねて、承太郎はティッシュ箱を引き寄せティッシュを丸め始めた。
「何してんの?」
「天気が良くなるように、照る照る坊主を作ってるんだぜ」
「てるてるぼーず?」
「晴れるようにお願いする、おまじないみたいなもんだ」
ほれ、と承太郎はポルナレフにへのへのもへじ顔の照る照る坊主を手渡した。
「何だか変な顔だな。ひらがな?」
「そうだ、よく分かったな。お前も作るか?」
「おう!俺もやるやる~!」
「ならまずはティッシュを丸めるんだ……」
承太郎の指導の元、ポルナレフは照る照る坊主を作り始めた。
「これは、承太郎だな」
「これは、アヴドゥル!」
「ついでに花京院も作ってやるかぁ」
「イギーに、ジョセフさんも!」
沈んでいたポルナレフの表情は、自然と明るくなっていった。
「……それで、こんなに軒下がにぎやかなんだな」
出された茶を啜りながら花京院がにこやかに笑う。
翌日、照る照る坊主の健闘むなしく天気は雨模様で。
それでも機嫌のよい承太郎とポルナレフがいた。