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【謙光】おにさんこちら

 たとえば汚い手とか、意地の悪い方法とか、そんなことをしてまで何かを手に入れる必要はないなんてきれいごとを言うやつがいたとする。きっとそいつの言い分としては、相応の努力を続けていればおのずとそれは手に入るとか、汚い手をつかって手に入れたところで喜びはないとか、いろいろあるのだろう。
 理解はできる。納得も、まぁできる。
 しかしながら、謙也は思う。
 そんなことを言うやつは、ただ単に出会っていないだけなのだと。

 どんな手をつかっても、どんなことをしてでも手に入れたいものと、まだ出会っていないだけなのだ。

「財前、大丈夫か?」
「……大丈夫です」
「嘘やって、顔真っ青やで」
「……」
 ちょっと遠くの中学へ練習試合へ行ったその帰り。帰宅ラッシュに巻き込まれて電車の中は身動きが取れないほど窮屈だった。車内特有のむっと押し込められた空気と温度、人混みが苦手なわけではない謙也でさえ苛立つような苦しい空間で、彼は特に苦し気に表情をゆがめていた。
 財前、と呼ぶと彼は青い顔をのろのろと上げて首を振った。大丈夫だといいたいのだろうが、その顔色では逆効果だ。
「……あと、ちょっとやないですか」
「そうやけど、それまでもつんか?」
「いけます」
「……はぁ」
 青いというよりはいっそ白い顔をしてなお強がる財前に謙也はわざとらしくため息をついた。
 ちょっと顔をあげて車内を見渡せば、いつのまにか押し流されたのか少しばかり先に親友の姿を見つけた。
「白石」と声をも出さずに唇を動かせば、彼もまた謙也たちの様子をうかがっていたのだろう。すぐに気が付いて視線を寄越した。謙也は声に出さないまま、視線を財前に寄せ、それから白石を見て肩をすくめた。謙也の動作をみていた白石もまた、頷く。

 部長の許しが出たことで、謙也は改めて財前の方へ顔を寄せた。
「……財前、次降りるで」
「え?」
 次の駅、と言ってもそれはもうすぐそこに迫っていた。財前の驚きに見開かれた瞳が謙也を捕らえるよりも先に、電車が止まり扉が開く。一度にホームに向かって流れだす人混みに身を任せながら、それでも財前と離れないように彼の体を強く抱いた。
「でも、部のみんなと……」
「ええから。白石には言ってある」
「え、いつのまに?」
「そんなん、今気にすることちゃうやろ」
 生意気なくせに妙なところで律儀で頭の堅いこの後輩に謙也は苦笑する。反射なのか、なぜかまた電車の方へ戻ろうとする財前を半ば担ぎ上げるようにしてホームの半ばまで連れていった。
「謙也さん」
 青い顔をしたままの財前が、縋るような視線で謙也をみつめる。謙也はなるべく安心させるように微笑みながら、彼の肩を優しくたたいた。
「まだ吐きそう? トイレ行くか?」
「……」
 車内のよどんだ空気から解放された財前は、顔色こそ戻らないものの今はもう、別の気持ちで手一杯らしかった。
 困惑、その感情で染め上げられた表情に謙也は声を出して笑いそうになるのをこらえた。
「……もう、平気です」
「そか。でももうちょい休んでいこな」
 ホームのベンチに無理矢理座らせて、その肩を抱き寄せる。自らの肩口に彼の顔を押し付けて、こどものように規則正しくぽんぽんと背をたたく。
「ちょお、先輩」
「ええからええから。医者の息子のいうことは聞いといたほうがええで」
 財前が不思議そうに息をのんだのがわかる。わけもわからず、どうしていいか、なぜこうされていうかもわからず瞬きを繰り返しているのがわかる。
「……まぁ、しゃーないすわ」
 そして、すべての疑問を押し殺して、“信頼する先輩”のいうことに委ねてしまったのもわかる。
 自分の思う疑問より、自分を思う先輩のいうことの方が信頼に足る。そう思ってくれているうちが仕掛け時だ。

「もうちょいしたら、家まで送ってくからな」
 優しい声で囁きながら、謙也は当たり前のように財前の髪を撫でた。

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