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不都合



【ジェイカラ】




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 恩義が忠誠になる繋がるかというと必ずしもそうというわけではない。そもそも、恩義は世間的な認識でない限り、それが本当に恩であるかどうか判断できない。一松は死にかけているところをカラ松に拾われたけれども、それを恩義とは思わなかった。むしろ、自分はあの場で死んでいた方がマシだったと思うし、そういう運命だったはずなのだと。一度、そう呟いたことがあった。燦燦たる生活の末に潰れたしゃがれ声を、カラ松は驚きもしなかったから、一松は気にせず話していたのだ。今となっては、無言を貫くばかりである。
 そのとき、カラ松はしばし考えた様子ではあったが、すぐに放棄して、なんでもない風に笑っていた。生きてる方がいいに決まってる、と両手を広げた彼が何を示しているのか一松にはわからず、俯くほかなかった。なんにせよ命は大事だとカラ松は言う。一松も、そのときはそんな気がしていたのだが、カラ松と暮らすうちに気持ちが鬱々としてきた。自分の運命が別にあることを知った。度々自分に向かって両腕を広げるこの男を、同じ世界に置いておきたくない、と強く思うようになった。厳密にいえば、同じ世界に一緒に存在したくなかった。ここはなんだか違う気がした。カラ松と共に居るのには、ふさわしくない気がするし、それがどういうわけだか一松にもわからなかった。とにかく、ふとした瞬間にカラ松をどうにかしたくなるのだ。

     ◇

 しばらくすると、無意識に手が出るようになった。カラ松は苦笑したり、口先を尖らせたり、弱々しく眉を下げたりした。暴力と呼ぶほど強い力ではなかったが、無言の一松が反応を返すのは不躾な平手や拳だった。それでもカラ松は、時折泣き言をこぼすくらいで、決して一松を追い出したりはしなかった。一層、一松は逆撫でされた。言いようのない気持ちが大きくなり、カラ松から理不尽に叱られたいような気になった。一松からカラ松への嫌がらせが増えた。ちょっかいを掛けるくらいだったものが、そのうち、カラ松が困窮することも起こるようになった。
 冷える夜、浴室から裸のままで歩いてきたカラ松は、自らの体を抱くようにして震え、廊下に立っていた一松に言った。
「なあ、俺のバスローブ、どこやった? どこにもないんだ、替えも。」
「さあ、知らない。洗濯に出したなら、今日は洗ってないよ。」
「なんでだ? 毎日洗濯してるじゃないか、なんで今日はしなかった?」
「今日は、庭仕事をしてただろ。暇がなかったんだ。」
「そうか……」
 バスローブは、洗濯に出されたものも、替えのものも含めて全て一松の自室に引き上げられていた。カラ松はクローゼットから新しいバスタオルを取ると、体に巻きつけ、寝室に足を向けた。
「部屋は寒いから、服を着て寝ろよ。」
「えっ、いつも温めてくれてるじゃないか。」
「燃料切れだ。ヒーターがつかなかった。」
「ふ、服を着て寝るのは、クールじゃないな。」
「何がクールなんだか。いや、ちょうどクールになってると思うよ、ヒヒ。」
 言葉もなく困惑しているカラ松を見て、一松は満足するようになった。反論してくるのを待っている心地でもある。激昂して欲しいとも思うし、困り果てて泣いてしまってもいい。とにかく、強い感情で縛り付けて欲しいと思った。それが何から来るのかは未だ分からなかった。

     ◇

 カラ松はなかなか一松に刃向かうことも、躾けようとすることもなかった。家政夫じみたことをする一松からすれば、屋敷の持ち主であるカラ松は主人たる人間であったが、カラ松はちっとも権威を振りかざさなかった。結局、しびれを切らしたのは一松だ。何度嫌がらせをしようと、胸ぐらを掴もうと、満足ゆかないかすかな引っ掛かりが積もり積もって、唸り声になった。深夜に頭を抱えたことが何度か、それから、所在なく屋敷中をうろついたことも。足が向くのは決まってカラ松の部屋だった。一度、夜中にうろついてるところ、トイレに出たカラ松とばったり出くわしたとき、「眠れないなら部屋に来るか。温かい飲み物でも飲もう。」と誘われたことがあった。当然、断って部屋に戻った一松だったが、自分はいつでも部屋に招かれる立場にあるのだという自負が芽生えていた。
 何度か繰り返されたことは、次第に習慣化して、次のステップへ進むのをいつしか心待ちにし始める。いつしか、一松は夜中に、カラ松の部屋の扉の前に佇むようになっていた。ノックをするか、ドアノブを回すか、そういう選択肢を考えるようになった。もう、何日目なのかわからなかった。数えてもいなかった。けれども、一松はこのまますごすご帰るわけにも行かぬというところまで来ていた。次のステップへ進まなければならなかった。納得がいかないのだ、この世界に二人で一緒に存在していることに刃向かうように、いつまでも扉の前で佇んでから部屋に戻る夜を、今日許すかというと許せなかった。
 ノックはしなかった。ドアノブを静かに回し、音を立てぬようドアを開けた。カラ松の寝息がかすかに聞こえた。窓際のベッドで、塊がゆっくりとわずかに上下している。一松は、自分の心臓の音で撃ち抜かれてしまうのではないかと思った。血流が激しく巡り、瞬きも忘れた。別に、起きてももう構わなかった。足音を気にせず、ベッド脇まで進むと、しばし逡巡してから、カラ松の上に馬乗りになった。
「う、おっ……?!」
 苦しげな声をあげ、カラ松が目をさます。当然だ、自分と同じくらいの男が、体重を腹の辺りに落としてきたのだ。暗闇の中でカラ松は何度か瞬きをして、一松を捉えた。
「い、一松……?」
 一松は思うまま体を動かした。考えるよりも早く、手や足が動いた。カラ松のバスタオルを剥いで、裸の皮膚を手のひらで強くこする。カラ松は顔を歪めた。途端に、一松の中にこれ以上ないほどの満足感が湧いた。カラ松はさっと顔を赤らめた。丸裸にされたからだ。
「ヒ、ヒヒッ……」
「な、何して、おいっ!」
「ダメだよ、抵抗しないで……あんたのせいで僕は、こんなところに、」
「は? 何……」
 一松は昔の記憶をゆっくりと思い出した。あるべき姿を身体中で実感していた。一松とカラ松は兄弟だった、六つ子の同じ顔で同じ血の、弟と兄だった。それを壊して、二人きりの世界に来たのは、一松のせいであったが、元を辿ればカラ松のせいだった。カラ松兄さん。声は震えていた。

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