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ここにいるよね?

 手入れをしても傷が消えない。
 抜け落ちた表情をそのままに、鶴丸は重傷の短刀を抱えて言い放った。
 白い衣装も白い肌も血と泥で汚した鶴丸だったが、金色の目だけはとても綺麗だった。綺麗に綺麗に審神者を映す目は、なんらかの返答を求めていた。ただ素直に、何故こうなっているのか、と問うていた。
 審神者は無言で抱えられている短刀に駆け寄ると、その状態をじっくりと観察した。
 戦いのさなかで傷ついたのであろう怪我、破れた服、なくなっている装飾品、あるはずなのに、ない、刀。
 刀がなかった。手入れすべき刀身が見当たらない。
 一体どこへ、とすぐさま鶴丸に視線を動かし、審神者は目を見張った。
 茫然としている鶴丸の向こうに、廊下が見えたのだ。いつもよく磨かれて綺麗な廊下に、鶴丸が歩いた跡が、落とした土と血の跡があった。
 あれ、と鶴丸が呟いた。
 短刀を持っていた手は確かにそこにあるのに、その次の瞬間その小さな体がすっ、と落ちた。鶴丸が声をあげるよりも前に審神者が動いたが、それは無意味だった。小さな体は床にぶつかるよりも前に消失してしまったからだった。
 煙が消えたように消えた。もう最初からそこには何もなかったかのように。どうして、などと口にするにはその最悪の答えしか浮かばなくて、だから声は出なかった。息を吐くことすら忘れてしまった。
「鶴丸、あなたの刀は」
 さっきまでそこにあったはずの小さな体を確かめるように、しかしないことに困惑して口をぱくぱくさせている鶴丸に聞いた。彼の体のどこにも、その白い拵えはなかった。彼の本体はなかった。彼がいなかった。
 戦場に置いてきてしまったのだ。そう確信して審神者が声をあげようとしたとき、自身の手を見つめていた鶴丸は、はは、と笑った。
 そういえば俺は刀であったと。そういえば俺は道具であったと。静物であったと。生物たりえない体で、ここにいるのはおかしかったのだと。すまない。俺は人ではなかった。君と生きることは無理だった。
 そう言って、審神者の顔に顔を近づけ、唇が触れるその直前で彼の姿が消え――







「君、おい!」
 はっと目を開けると、そこには焦った顔で私を見る鶴丸がいた。あらあらどうしてそんな顔をしているのかしらと少し考えてから、私は私のこめかみやひたいに流れる自分の汗に気がついた。
 相当うなされていたらしい。鶴丸が揺さぶって起こしてくれた。
「鶴丸……鶴丸?」
 何かとても悪い夢を見ていた気がする。無性に、無性にこの目の前にいる愛しい人の存在を確かめたかった。その体が、その顔が、その声が確かにあると。そこに確かに鶴丸国永という刀がいると。
 刀? そう、刀。彼は刀剣男士。刀剣の付喪神。今は、人の体をもって、私に使えてくれている、忠臣であり、私の、恋人。
 鶴丸は少しほっとした表情でそっと私を抱き寄せ、背中をゆっくりと撫でてくれた。
「俺はここにいるぜ。どうしたんだい、ずいぶんうなされていたぜ。悪い夢でも見たか」
 悪い夢。そう、きっと悪い夢を見た。だからこうしてなぐさめられて、とっても安心する。
 なのにどうしてだろう。
 このぬくもりが、とても、とても、悲しくて。でもだからこそよりいっそう愛おしく思えてしまうのはどうしてだろう。
 何故だか笑ってしまって、涙が一粒こぼれた。
 なんだかとってもおかしいね。

 
 
 

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