ジャンル:テニスの王子様 お題:どうあがいても部屋 必須要素:コーヒー牛乳 制限時間:30分 読者:267 人 文字数:1328字 お気に入り:0人

ねしょうがつ

「なぁ、どっか出かけようや」
「えー……」
 1月3日、正午をすこし過ぎたころ。こたつにくるまりコーヒー牛乳を飲む財前に、謙也は何度目かの台詞を投げる。

「どこ行っても混んでるだけですわ」
 財前はおっくうそうにつぶやき、手を伸ばしてみかんを摘まむ。だいたいコーヒー牛乳とみかんという組み合わせもどうなんだ、と思わないでもないが、この際そんな些細なことはどうでもいい。食料を買い込むだけ買い込んで、家に引きこもりっぱなしの財前の頬はなんだかこの年末年始だけで少し丸くなった気がする。ためしにと人差し指で優しく押してみれば、ずぶりと少しだけ沈んだ。
「あっアカン! お前絶対太ってるで!」
「はぁ? こんなたかだか何日かで太るわけないでしょ」
「いやいやいや! 前はこんなんならんかったって。お前ほっぺた削げてるんちゃう?ってくらいシュってしてた!」
「それはそれでキモいやろ」
 得意のはずの文句でさえ、普段よりキレがない気がする。
「ほんまにどっか行こうや。車出すし、な? ドライブするだけでも」
「道なんかどっこも混んでますって」
「ほんなら散歩しよ」
「屋台でなんか買ってくれるんすか?」
「それじゃ意味ないやろ!!」
「ほんなら行きません」
「財前!!」
 謙也はこたつを這い出ると、机の上に頬をべったりとつけてうとうとと微睡んでいる財前の体に後ろから抱き着いた。
「財前! 出かけんで!」
「うわっ、なにすんすか!」
 そのままずるりとこたつから引き出そうとすれば、さっきまでどろどろにこたつの熱で溶けていたはずの財前が俊敏に両手を伸ばして机にしがみついた。どこにそんな力があったのか。謙也が本気で引っ張ってもなかなか出てこない。
「おっまえ、なんでこんな時ばっかり力あんねん!」
「絶対、いやです……!」
 ぎゅっと財前の体を抱きなおし、渾身の力を込めてこたつから引き抜こうとしたときだった。
「あっ」
 謙也は気づいてしまった。
「……お前、腹回り……」
「は?」
 抱き着いていた手を放し、今度はぺたぺたと確かめるように財前の腹のあたりを手で探る。ごく、と息を飲んで謙也は財前をみつめた。
「……太った……?」
「はぁ!? でたらめ言わんといてくださいよ!」
 顔を真っ赤にして怒鳴った財前の、その腹にそっと手を添える。やっぱり、その感触は以前より柔らかい。謙也の顔が引きつったのがわかったのだろう、財前の顔がますます赤くなった。
「着ぶくれしとるだけですわ! アンタ、ほんま……信じられへん!」
「いやっ、やって」
「そんならちゃんと見てみればええやろ!」
 太ったと言われたのがよほど悔しかったのか、財前は謙也の手を引いて自らの腹に押し当てる。確かめろと言わんばかりにあちこちに触れさせて、それでも納得がいかないのか服の下にまで謙也の手を引いていく。

 こたつの熱で汗ばんだ肌、真っ赤な顔の恋人。涙ぐんだ目で睨みつけられて、謙也は先ほどとは違う意味でごくりと息を飲んだ。

「あー……、やっぱ、出かけんでええわ」
「は? っ、あ! ちょお、どこ触ってんすか!」
「いや、これ俺悪ないってぇ」
「はぁ!? 今そんな場合じゃ、あ、」
 

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