ジャンル:刀剣乱舞 刀さに お題:経験のない天才 制限時間:30分 読者:310 人 文字数:1393字 お気に入り:0人

小夜左文字とお話しするだけ


 ごろごろする。ここ最近の胸の辺りだ。
 目を閉じて、息を吸って、はいた。
 何度もこうしているはずなのに、いつものように落ち着かず、胸の奥底で絡まった糸が、ひたすらにうずまいているだけだった。

 「入るよ」
 「ああ……小夜」
 「歌仙が、いつもの茶菓子だって」

 小夜左文字が、卒のない所作で私のそばに菓子をおく。
 なまぬるい返事をして、私はまた布団にこもった。
 昼寝だ。
 朝早く起きて、昼餉の後、たっぷり一時間は眠っている。
 いまはどうしても起きられなくて、二時間にのびたりして、しばしば近侍に怒られるようになった。
 もぐりこんだ布団の奥から、襖の音が聞こえない。
 億劫にちらりと盗み見ると、はだしが二本、私を向いている。

 「……小夜、どうしたの」
 「なにか復讐したいことがあるなら、おしえてほしい」
 「どうして?」
 「あなたがいま、淀んでいるから」
 「小夜は、目に見えるの」
 「少しだけれど、あなたの陰りは見える」
 「そう」

 小夜左文字の、平坦な言い様が好きだった。
 へたに心配されたり、勘ぐられたりするよりも、小夜を”小夜左文字”たらしめる、復讐の二文字から離れないのが、きちんと私から線を引いているようで安心できる。
 布団から顔を出した。
 部屋と言えど、冬は空気が冷える。あたたまった布団はちいさく貧弱な王国だ。外気と、外の世界から、私をまもる。

 「僕はあなたの刀だ。僕には復讐しかない」
 「殺したいくらいの人はいるけど、復讐ではないかもしれないな」
 「そうなの?」

 私は、ちいさな王国から小夜を手招いた。
 小夜は行儀よく、敷かれた布団のそばにひざを並べて座った。
 枕元においてあった、包まれた飴玉をあさる。
 それを見立てて、ふたつ、ころがした。
 空色のハッカ飴と、熟れたいちごのキャンディだ。

 「赤はね、青を殺したいの」
 「どうして?」
 「青が天才だからよ。赤は凡才だったから」
 「もっと詳しく話してくれないと、よくわからない」
 「小夜は頭がいいから、想像つくでしょ。つまらない嫉妬と、見栄と、プライドの問題よ」

 つまらないね、と言った私がいちばん下らないことをしている気がした。
 ただ、そうでもしないと自分が慰められなかった。

 「赤は面白くなかったのよ。青が年下なのに、女なのに、全部さらっていくからね」

 ハッカ飴をつまみ、いちごキャンディをつつく。

 「それまで勉強も、なにもかにもできがよかったのは赤のほうだったから」
 「青いほうは、酷い事をされたの?」

 息をのみこんだ。
 しばらくためたあと、ゆっくりと吐き出し、手にもっていた飴をほうりなげた。

 「された、のかもしれない」

 青はだいすきだったのよ、赤のことが。
 でも。 
 
 ――お前の顔は、二度と見たくない。わかるだろう、出て行ってくれ。

 ただ褒めてもらいたかったのに。
 私の敬愛する兄ならば、喜んでくれると思ったのに。

 「才能がほしいと人並みに願ったことはあったよ。でも、こんなことになるなら、いらなかった」
 「あなたが殺したいのは、どちら」

 赤い方か。青い方か。

 「きっと、どっちもね」

 ――殺してくれる?
 問うと、小夜は、復讐じゃないから、と困ったようにつぶやいた。

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