ジャンル:銀魂 お題:セクシーな闇 制限時間:15分 読者:242 人 文字数:3021字 お気に入り:0人

いつか思い出せ彼方 僕らを

「またこんなところでサボってる」
寝転がって広げていた週刊誌の影が急に濃くなったと思ったら、そこからひょっこりと覗いた顔がくすくすと笑みをこぼしながら揺れる。
「お前だって来てんじゃん」
銀時はだるそうに垂れた目をこすりながら、特に気にもしないで週刊誌のページをめくる。私はお昼ご飯食べに来ただけですから、と澄まして言って、ミツバは銀時の横で弁当を広げた。
「おま、ちょっ向こうで食えよ!なんなのそれ、毒物?何?なんかもう匂いが辛いんだけど。何入ってんだその弁当」
「何って、普通のお弁当ですよ。玉子焼きとか、から揚げとか。あ、もしかして食べたかったんですか?」
それならそうと、素直に言ってくださいよ、と笑って差し出された真っ赤な玉子焼きを、銀時は全力で避けた。
「いいって!いらねぇよそんなグロテスクな玉子焼き!何混ぜたらそんな色になんだよ!料理に対する冒涜だろそれ!」
むんむんに匂う香辛料の香りに涙目になりながら後ずさる銀時に、ミツバは残念そうに眉を下げた。
「おいしいのに…」
いやそれだけはぜってぇあり得ねぇ。
これ以上弁当の中身に意識を向けたままなのも嫌なので心の中だけでツッコミを入れて、銀時は、ミツバ、もとい過激臭のする弁当から少し離れて、冷たいコンクリートの上に寝転がった。
「お前、昼飯食うのにこんなとこまで来んなよ。教室で食やぁいーだろ」
「だって、銀時さん今日一度も授業に顔出さなかったから。心配してたんです」
「いーよしなくて。つーかもう来んなお前。俺がどやされんだよ」
「私だけじゃないですよ」
これまた何を混ぜ込んだのか真っ赤なから揚げをおいしそうに頬張って、ミツバが銀時を見下ろす。は?と聞き返す、間延びした顔に笑いかける。
「十四郎さんに言われたんです。銀時さんのこと見ててくれって」
特に深い意味もなく伝えられた言葉に、意図せずして鼻笑いがもれる。
「あいつがぁ?ジョーダンよせよ、気持ち悪りぃ」
わざとらしく身を震わせながら、風に煽られてページのはためく本誌を手に取る。それを横目に写しながら、白ご飯に箸を伸ばす。心の中で、そんなこと言って、と諦めたような、呆れたような気持ちで呟いた。
そんなこと言って、どうせ分かり合いきってるくせに。
私を間に挟まなくたって、もっと穏やかに笑いあえるくせに。
男の子なんて、最後にはどうせみんなひとりで歩いていけてしまうものなのだ。
私はそれがうらやましくて、誇らしくて、さみしくてたまらない。
「私、ここのこと話したんです」
「は?」
ぱちん、と箸を置いて、ミツバが静かに告白する。その声の静かさに顔を上げて、銀時はミツバを見上げた。
「今までは、あなたのいる場所は言わずにいたんです。ちょっと意地悪しちゃおうかなって。だってあなたたち、いつでもすぐ隣にいるのに本当にお互いのこと認めようとしないんだもの。幼馴染だっていうのに、顔合わせるたびに口喧嘩に挟まれる私の身にもなってほしいわ」
「最後のは完璧にお前の立ち位置が悪いだけだろうが。お前がいつも間にいるからだろうが」
ぷりぷりと怒ったふりをしてそっぽを向くミツバに、銀時は冷静に言い返す。背けた顔をそのままにして、彼女は風にさらわれていきそうな声で告げた。
「だってそうしないと、私のことなんて忘れてしまうでしょ」
半分背を向けたセーラー服の背中が風ではためく。ほっそい線だなぁと思いながら、銀時はその背を見つめた。遠くで、屋上までの階段を上がってくる足音が響く。見つかったことにため息を吐いて、読みかけの週刊誌を胸の上に置いた。
「でもそうしねーと、お前はそこにいられねーって思っちまうだろ」
めったに聞かない真面目な声が空気を揺らして、ミツバは振り向いてその顔を見下ろした。
「お前の言うとおり、俺たちは昔っから好き勝手とっちらかして走ってきたし、多分死ぬまでこのままだ。女のお前じゃついて来れないようなところに、ひとり置き去りにして行っちまうかもしれねぇ」
でもな、と言葉を繋いで、わたがしみたいな雲の浮かぶ空を見上げる。
どんなに近くに生きていたって、それがどれだけ大事だって、置いて去ってしまうことがあるのは、それはもう男としての性分だ。そうあるように生まれてきた以上、簡単に覆せるようなものではない。
だけど、ひとりで立って行くのと、そのうしろ、それがどんなに遠くても、どんなに小さくても、ぽっと灯ったあかりが待っているのとでは、足元の先の明るさが違う。
「お前がそこにいるから、俺たちはどこにだって行ける。そーいうこともある。覚えとけ」
その言葉の変わらない芯の強さに、ミツバは、ふ、と息をもらして笑った。
その顔を横目に捉えて、バレないようにほっと息をついた銀時は、思い出したように唇をとがらせて続ける。
「あとお前、もう突っ込むのも諦めてたけど、俺別にお前らと幼馴染じゃねーからな。俺はお前ら幼馴染の中にいきなり押し込まれたただの他人だから。あいつとも別に兄弟のつもりさらさらねーし」
「ほぉ……?じゃあ何か、テメーはこれから三食飯抜き寝床なしでも全然構わねーってことだな?」
いつのまにそばに寄っていたのか、銀時の頭上に仁王立ちした土方が、くっきりと青筋を立てた顔で二人を見下ろす。
「げ。もう来たのかよ。せめて昼休み終わるまで隠れてろっつーn」
「もうとっっっくに五時間目始まってんだよ、いねーのお前らだけなんだよ、なんでか俺が疑いの目かけられて探しに行かされてんだよ!ほんっとテメ、今日という今日はぜってぇ許さねーからな、ぜってぇ飯抜きにすっからなほんといい加減にしろよこの愚弟が!」
「十四郎さん、さすがに言いす…」
「おっまえもお前だわ、悪りぃけど、今回はさすがに庇いきれねーよ。確かに見ててくれとは言ったが時間の把握くらい自分でしてくれ!どこまでだよ、どこまで世話焼きゃいーんだ俺は!」
「…ご、ごめんなさい。つい…」
俯いて小さく言葉をこぼすミツバに土方の動きが止まる。ひゅうっと口笛を吹いた銀時はにやにやとその肩を抱いた。
「あーあー傷つけちゃって。ばかだねー土方クンは。ったく、どっちが愚兄なんだか」
「な…っ、つかテメッ、どっちが愚兄って、テメー弟だろうがよ!」
「わかんねーぜ?俺の歳おばさんが決めたって言うし。ほんとはお前より年上かもよ」
「ぜっっってーーーあり得ねぇ!つーか認めねぇ。つーか離せ」
肩を抱く手を振りほどこうと腕を伸ばし、それをひらりとかわして笑う。馬鹿みたいな押収が続いた後で、蹴り出したお互いの足に躓いてバランスを崩す。
「きゃ…っ」
「ミツバ!」
もつれた二人が伸ばした腕が、細い身体を宙へ飛ばす。
やわらかい感触にぎゅっと瞑った目を開けたミツバは、自分の下に重なって倒れる二人を見て、ぷ、と吹きだすと肩を揺らして笑った。
空を高く突き抜けて響くその笑い声に、下敷きになった二人もつられて表情を崩す。
その向こうで、授業の終了を告げるチャイムが鳴り始める。
目尻にあふれる涙をこみあげる笑いのせいにして、こぼれた雫をそっとぬぐった。
銀時の言葉が胸に光る。

(まぶしい。まぶしいけれど、目は背けないでいたい。隣にいたいなら)
(私はここで光っていよう。どんなに淡い頼りない灯りでも)

このひとたちの、足元を照らすことができるなら。



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