ジャンル:銀魂 お題:軽い町 制限時間:15分 読者:226 人 文字数:1797字 お気に入り:0人

雪溶けを待っている

雪の降る夜だった。
陽が完全に沈み切った頃降り出した雪は、夜が深まるのに比例してしんしんと降り積もっていき、夜が完全に一寸の灯りもない闇に包まれる頃には、江戸の町は道も家もすべてが真っ白な世界に塗り替えられていた。
はしごにはしごを重ねた5軒目の店を出て、その一面真っ白な銀の世界を歩きながら、土方はふらふらと足元のおぼつかない様子で隣を歩く銀時にため息を吐いた。
「なんでテメーは毎度毎度そうなるんだ」
「おめーが強すぎんのが悪りィんだろーがよォ。俺ァてめーに合わせて飲んでんだから、介抱すんのが嫌ならてめぇが控えろ」
何を理不尽なことをと呆れながら、その肩に手を貸す。へらっと笑いながら甘んじてそれを受け入れて、銀時は半分くらい体重を預けると、はあっと白い息を吐いた。
「さみーなー土方ぁ」
「…雪降ってっからな」
「そうか雪かー。あ、マフラー貸してやろーか土方」
「いらねェよ、つかもう巻いてんだろ。大丈夫かお前」
「だいじょーぶだいじょうぶ。これ舞ってんの雪?」
「以外に何があんだよ。ほんとに大丈夫か」
「雪かー…なぁー土方ーー」
「なんだよ、もう黙ってろよ頭痛くなってきた」
指に煙草をはさんだ手でこめかみを押す。その顔を覗き込みながら、銀時はにへらんと笑った。
「賭けしよーぜ、賭け」
はぁ?と困惑した声が白い息の向こうで響く。銀時は笑ったまま真っ暗な夜から降る雪を見上げた。
「この雪が朝焼けまでに止むかどうか。賭けよーぜ」
「…それ、勝ち負けになんか付くのか」
「んー、そうだな…俺は別になんもいらね。お前が勝ったら…そーだな、キスすんの許すよ」
「は?」
思わず離しそうになった腕に慌てて力を込める。酔っ払いの迷いごとなんて勘弁だと思いながら見下ろすと、その目は昼間見る鈍い光を少しも失うことなくきらめいて力を秘めていた。
「やんの?やらねーの?」
「………やる」
静かに答えた土方に銀時が笑う。お前から決めていーぜと言う彼に、土方はその前に、と言葉を置いた。
「俺だけ得するんじゃ意味ねーからな。お前が勝った時のとこも考えといたほうがいいだろ」
「なんだよ、自信ねーの?」
「んなこと言ってねェ。けどフェアじゃねーのは嫌なんだ」
「ふーん」
相変わらずカッチカチの頭だねェと薄笑いを浮かべる顔を横目に流す。土方は冷たい空気で肺を満たすように息を吸い込んだ。
「お前が勝ったら、もうこんな曖昧な関係はやめる。すっぱり。諦める、お前のことは」
言い切った土方になんの言葉も返さずに、銀時は、で、どっちにするの、と抑揚のない声で問いかけた。
「止む」
「じゃー俺は止まない方な。よーし、じゃ、土方くん、夜明けまであと数十分、ちゃんと付き合えよ?」
「……わーってるよ」
背に回した腕にぐっと力を込めて、土方は夜明けに向かう空を見上げた。町には淡雪がふわふわと舞っている。どこか店に入ることも、せめて、と軒下に立つこともせず、雪の舞う町をだらだらと歩いた。他愛ない話で沈黙を繋いで、今までで一番おだやかに、ゆるやかに歩を進めた。
雲が少しずつ溶けて空が開けてくるのを景色の中に見ながら、土方はふかふかの雪をぎゅっと踏みしめた。
その足が、路上でぴたりと止まる。
「…勝ったじゃん。よかったな、土方くん」
綺麗な朝焼けの空を見上げながら、土方の手を離れて歩き出した銀時がゆるゆるとした笑顔で振り返る。
ほとんど反射のように、その手を引いて、唇を寄せる。
雪夜のせいできんきんに冷えたそれが、お互いの体温で徐々にあたたまっていくのを全身で感じ取りながら唇を離した。
「泣いてんの?」
まぶたを開けた数センチ先の瞳がやわらかく弧を描く。その向こうで淡い朝焼けが町を染めている。
「…泣いてねーよ」
「泣いてるじゃん」
「そりゃてめーのことだろうがよ」
うん、と小さく声をこぼして、銀時がくしゃりと顔を歪める。その頬に指先を添えて、土方は瞳を覗き込むように顔を近づけた。
「土方」
「ん?」
「雪、止んでよかった」
くぐもった声に、ああ、と頷いてほほえむ。朝陽が雪を照らして白く輝く。まつ毛に雫を乗せた銀時が、鼻水をすすった後で問う。
「……もっかいしとく?」
涙の跡などどこにもないような顔で笑う挑戦的な瞳を同じように見つめ返して、土方は冷たさの残るそれに噛み付くように唇を這わせた。

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