なつのおくりもの
「こんな時期になんだよ、ちくしょー」
兄弟宛てに届いたポストカード。
差出人は菊だった。
「俺まだニホンゴよくわかんねーんだよな……おいフェリシアーノ、なんて書いてあんだよこれ」
「ヴェー、こんなときばっかり俺を便利に使うよねぇ、兄ちゃんは」
「うっせえ、いいから早くしろ」
送られてきたポストカードには
菊らしさの溢れる奥ゆかしい挨拶の言葉と、
澄み渡る青空を背景にスイカやかき氷といった夏を代表するもののイラストが描かれていた。
「今は真夏だぞ?なんでネンガジョーなんか送ってくんだよ」
「違うよ兄ちゃん、これ年賀状じゃないよ」
「へ?」
「なんかねー、俺も前に聞いたことあるんだけど。
夏とか冬とかに、ネンガジョーだけじゃなくて
なんかこう、お元気ですか、どんな風に過ごしていますかっていう内容のハガキをおくるんだって。たぶんコレがそうだと思うなあ」
菊が言うには、どんな時期に送るか、どんな言葉を使うかも細かく決まっているらしいのだが、それを覚えているほどフェリシアーノは賢くない。
「確かねー、ショチューオミマイって言うんだって」
「ふーん……」
ロヴィーノは興味深そうにポストカードを眺める。
「……なあ、俺達もこれやろうぜ」
「いいねそれ!賛成!」
どんな絵を描くか、どんな言葉を書くか。
そのようなことを話しながら兄弟の夏は過ぎて行く。